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神の下僕は世界を守りたい  作者: D沖信
新たな神の物語
30/153

精神世界3

黒姫を連れて逃げた影を追って再び精神世界を歩く。

「あの…そんなに急がなくても…」

「すまん、だけど暴れられたら危険だし」

取り逃がして下手に精神世界を攻撃されれば黒姫へのダメージがあることを考えて翔は早足になっていた。

「そっか…そうですね急ぎましょう」

見慣れた通学路、魔法都市の街並み、見覚えのないアパートの廊下、異世界の森の中、ぐちゃぐちゃに入り雑じった精神の中を歩き続け数えきれない程の黒姫の不安や不満の声を耳にする。

「見当たらないな…」

「そうですね、あの…恥ずかしい声ばかりですみません」

「気にするなって、防衛の影が出ないなら聞いてもいい愚痴ってことだ」

黒姫が苦笑いしながら次への扉を指差す。

扉の先は公園だった。子供の影が二つ何を話しているかは聞こえないが仲良くブランコを漕いでいた。

「…これは」

翔が何かを言いかけ黒姫がまたすぐに扉を指差す。

「急ぎましょう?」

「あぁ、姉との思い出か?」

「そうですね…」

見られて困ったような顔をする。

「さて、そろそろな予感がするんだ」

「予感…ですか?」

翔は重い引戸に手をかけ音が鳴る程強く開く。

中には黒姫と翔との思い出が映像のように幾つも映し出された今の黒姫の自室である客間になっていた。

恥ずかしそうに俯く黒姫を無視して隠れるように奥に座る影に翔が近寄る。

「危ないですよ!」

「いや大丈夫だ」

影に手を伸ばし頭をゆっくり撫でる。

「黒姫、さぁ戦うぞ」

影にそう語り掛けると風景が一変し最初に戦いを繰り広げた草原に変わる。

影は黒姫の形になり先程まで一緒にいたもう一人の黒姫はわなわなと震え不満を述べる。

「なんで!どうして!」

「敵だったらあんなとこに普通逃げ込まないって」

翔は苦笑いしながら先程の部屋を思い出して言う。

座り込んでいた黒姫は立ち上がり翔を見つめる。

「私…もうダメかと…」

「あー、うん、なんだ…形に囚われるなって言われてるし記憶も曖昧って聞いてたからな」

もう一人の黒姫は髪を白銀に頭に神鳴のような角を生やし名乗る。

「まさか見破られるなんて…思いませんでした…ワタシは神姫(しんき)あなた方の敵よ」

その容姿と名前から神鳴の兄弟と判断した翔は冷や汗を流しながら言う。

「…大変だ黒姫、大物が釣れたぞ」

「そうですね…勝てますでしょうか?」

二人の不安を他所に神姫は自分語りを始める。

「ワタシは兄弟からも疎まれ蔑まれ世界も小さい箱庭程度しか持てなかった…ワタシは孤独だった」

長くなりそうだと翔は思ったが黒姫が我慢しようと小声で言うと仕方なく聞いてあげることにする。

「威張り散らす神螺の訃報と父に愛された神鳴の新世界想像…ワタシはチャンスだと思ったわ」

周囲が揺れだし記憶にない瓦礫の山に包まれた駅前広場になる。

「ワタシに近い波長の合う黒姫、あなたを依り代に新しい人生と世界を手に入れるのよ」

「勝手な事言うなよ!他人の命をなんだと思って…」

「勝手…そうね、ワタシはただ孤独と神なんて肩書き捨てたいだけに一人の命を潰そうとしている、だからなに?あなたは命の尊さを訴えるだけの資質と権利があるの?」

黒姫が毅然とした態度で答える。

「それが運命と言うなら否定はしません、でも違う、あなたにも人の命を奪う権利は無いわ」

気づけば瓦礫の上に大小様々な影が立って色々な言葉を投げ掛けている。

「確かに私の中にはあなたのように他人を妬み、恨み、自分を蔑むどす黒い心もあるけれど自分自身まで捨てたいと思ったことは無いわ」

「黙れ、黙れ!ワタシにはもう時間がないんだ!」

大きな光の球を作り黒姫目掛けて投げてくる。

「おいおい、ウソだろ!」

翔はすかさず黒姫をはね除けて球を受け吹き飛び瓦礫に埋もれる。

「翔君!?」

瓦礫からなんとか這い上がって出てくる。

「なるほどイメージね…思い浮かべるのは最強の自分か、気恥ずかしいな」

多少の擦り傷だけで済んだ翔は服についた土埃を払い神姫との戦いが幕を開ける

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