精神世界1
翌日、予定通り作成された薬を神楽が一人で持ってきて黒姫と翔が呼び出される。
「どうして俺まで?」
「二人は信頼しあっていて絆もある…そうよね?」
二人は質問の意図を考えた後ゆっくり頷く。
「じゃあ説明するわ、この薬を二人とも飲んでもらって黒姫の中に居るであろう敵を撃退する、シンプルよね?」
「いや…どうやって?」
「そのまんまよ精神世界で敵を倒す、お分かり?」
説明を省き結論だけ語る神楽に対して二人とも怪訝な顔をする。
「うーん、兎に角やり方と注意点を説明するわね」
スケッチブックを取り出して説明を始める。
「まず、薬を飲む、二人の精神がなんやかんやあって繋げられるようになるから翔は精霊に語りかけたときの要領で黒姫の精神に入って敵を見つけて二人で倒す、いい?」
シンプルなイラストで手順を説明する神楽になんとなくやり方が伝わった翔が質問する。
「どうやって戦うんですか?武器は持ち込めませんよね…」
「そうね、想像力と心の強さが必要になるわ」
「そ、想像力?」
「体の動きや気を形にするの…どーん!ばーん!的な」
二人はジェスチャーで色々と説明する神楽を見て唖然とする。
「こほん、兎に角そういう戦いなのよ、精神的な所だから頭じゃなくて心、イメージで理解して」
勢いで納得させられて次に注意点を説明される。
「黒姫の精神に触れるっていうことは記憶や心に触れることになるわ、つまり過去のあんなことやこんなこと…赤裸々になるわ」
黒姫が真っ赤になりながら首を横に振る。翔も呆れる。
「大丈夫よ、だから信頼できる翔君に行ってもらうんじゃない!」
「いやいや、流石にダメでしょ?なぁ黒姫?」
「まったく、好きな子の全てを知るチャンスでもあるのよ?」
「それとこれは話別ですよ!知られたくない事もあるでしょうが!」
困り顔の翔に顔を真っ赤にして俯く黒姫を見て神楽が冗談とはぐらかす。
「冗談よ、実際はちゃんと嫌なものにはプロテクトが働くわ、これは黒姫の防衛本能みたいな物だから無理に壊したら精神も壊れる可能性あるから翔は紳士的な対応して頂戴」
黒姫は安堵して「よかった」と呟いていた。
「翔は黒姫の精神の中で素早く黒姫と合流して敵を発見して病巣を叩く!いいわね?」
「あのー先生?敵の姿形はどんな?」
「分からないわ、だから慎重に行動して、精神世界での戦闘は私も完璧に想像できないから」
「今までのレクチャーの半分はなんだったんですか…」
黒姫も翔も覚悟を決めて渡された薬飲む。
「相変わらず不味い…」
「今回ばかりは…便利な援軍は見込めないから頑張ってね」
二人は椅子に座り手を繋ぎ目を瞑る。最後に神楽の警告が聞こえる。
「記憶は曖昧だから真に受けちゃダメだからねー」