問診
リビングで黒姫を問診しながらシュメイラは感心したようにメモを取る。
「ふむふむ、やはりアキト君が想定していた精神寄生に近いようだね」
「精神寄生…ですか?」
「君の覚醒というのかい?カグラ先生のとこで学んだ精霊を使役したりする能力を通じて精神汚染を狙っている可能性が高いね、ひひ」
「その力を使えない今は攻撃できない…?」
「一時的な遮断だからね…以前作った魔力遮断薬の強化版」
神螺を一時的な無力化するために作った薬、それが役に立っているらしい。
「しかしアキト君、よく気づいたねー」
面倒くさそうにアキトが答える。
「神鳴居なくなっても依然として敵が湧いてるの見てかまかけただけ」
「私のせいで翔君や姉さんを?」
アキトはなにも答えずにリビングを出ていく。代わりに神楽が答える。
「あなたは悪くないわ、悪いのは名前も名乗らない敵よ」
「そう、ですよね…」
神楽が不安そうにする黒姫に尋ねる。
「いつ頃から声が?」
「記憶を取り戻してすぐです…」
「どういう風に?」
「母が死んですぐに…」
聞いちゃ不味かったかなと気まずそうにする神楽は謝ろうとするが黒姫は話を続ける。
「元々母は体が弱かったので…事情は分かりませんが父とは離縁してまして…」
「おかしいわね…記憶が戻るのは魔物との接触やそれらに付随する何かと思ったんだけど」
神鳴が考えながら呟いているとシュメイラが何か思い付いたように話す。
「ひひ、いいこと思い付いたよ、薬調合してくるね」
いそいそと物置の扉を潜って帰っていく。
「いいこと…ねぇ、まぁいいわアキト連れて今日は帰ってまた明日来るわ」
「えー帰っちゃうの?」
神鳴ががっかりしたように肩を落とす。
神楽がやれやれという態度を見せた後アキトを探しにリビングを出る。
「私、どうなるんでしょう…」
「皆居るんだから自信もって!」
神鳴に励まされて力弱く頷く。
その頃、翔の部屋でパソコンを使い調べものをしていたアキトを神楽が見つけ帰るよう伝える。
「帰るわよ、なに調べてたの?」
「ちょっとな、まぁ気にするな小さいことだから」
年表が書かれたページを開いていたアキトを怪訝な目で見ながら神楽はため息混じりに無理やり連れていく。
「どうせ録な調べものじゃないんでしょ」
「絶対勘違いされてるヤツだろ?違うからね!そういうのじゃないから!」
翔が後ろ手にパソコンの電源を切って苦笑いしながら見送る。
「翔!お前も弁明をだな…あー」
(南無三…アキトさんログは後で消しとくから)
本を読んでいて事情を知らない翔にも勘違いされたまま二人は帰っていった。