リターンマッチ1
翔と黒姫は街を歩きながらこれからどうするか話していた。
「敵が出るかどうか…運頼みか」
「翔君?戦いは置いておいて外出を楽しみましょう」
「乗り気じゃないんだな?」
黒姫は寂しそうに地面を蹴って作り笑いで答える。
「勝てないですからね、最後の一週間くらい楽しみたいです…」
「最後なんて言うなって」
無言になりながら二人が駅前広場に到着する。
「まだお昼前だしどこから行こうか?」
「翔君は普段どういう所に行ってます?」
「うーん、ゲーセンとかウィンドウショッピング?深く考えたことなかったな」
「ゲーセン…皆が神鳴の喧嘩に巻き込まれた時に居た…懐かしいです」
「黒姫達は占いの結果に導かれてだっけか、はは」
思出話をしながら広場のベンチに取り敢えず座る二人の所に八坂がやってくる。
「よぉ浜松、学校休校だからってデートか?獲物が来ても悪いが先にいた俺に譲ってもらうぜ?」
八坂を睨むように黒姫が顔を向ける。
「…殺気漏れてるぞ、だが順番は譲らないからな」
八坂がそそくさと去っていく。
「今日は無理そうですね、ご飯食べて帰りましょうか?」
「そうだなー、なに食べたい?」
諦めて食事しようと立ち上がると同時に悲鳴があがる。
「なんというか神様の意思かなにかか?」
「…行きますか?」
「八坂の手に負えないかもしれないし取り敢えず行こう」
少し嫌そうな顔をする黒姫を説得して悲鳴のあがった方向へ向かう。
敵は試験の時に戦った飛竜と同種の魔物だった。
「拳じゃ無理だな、手伝うか」
翔は氷雨を呼び出して氷の足場を作り飛び出す。
八坂が何やら騒いでいたが翔が手早く仕留めてしまった。
「要らねぇ手助けだ!」
「相性悪いんだから仕方ないだろ」
「お前の武器が万能過ぎるんだよ!っち、ついてねぇ」
翔は不機嫌な八坂に謝りながら魔石を渡す。
「それはお前の賞金だろうが」
仕方ないと翔は人に見られないように現金を渡す。
「ほんと申し訳ない、次はサポートにするよ」
「まったくお節介なヤツだな…帰るわ」
八坂が服の汚れを払い鞄に渡された現金を無造作に突っ込んで帰っていく。
「翔君、ちょっと早すぎです」
「ああ…すまん、つい飛び出しちまった」
「あっさりでしたね」
「一度見たことあるし思ってたより楽だったからな」
換金しに向かう二人を遠巻きに見つめる人影が二つあった。
「強そうな奴であるな…」
「なんや勝てそうか?」
「日射しは苦手であるからして…日が落ちたら仕事してやるであーる」
「しゃあないな、ほな夜にでもリターンマッチといこか」