神の下僕は世界を救いたい12
警備隊が連絡のつかないアルバートに直接指示を受けるために突入してくると彼らの目に絶望し全てを諦めた黒姫と死亡し倒れるアルバートが目に入る。
「貴様!」
黒姫は自刃しなくても済むと発砲を待ちわびるも何時まで経っても動きがなく残念そうに振り返ると神楽と神鳴が駆け寄ってくる。
「黒姫!さぁ早く逃げましょう!巻き込まれたら大変よ!」
「もういいんです…死なせてください…彼の居ない世界なんて…」
黒姫の翔の死を意味する言葉に神鳴がショックを受け神楽は二人に説明する。
「この暴走、翔君が施設から居なくなったら時から計画されていたのよ…彼がいなければもう止まらないから…」
力なく項垂れる黒姫の頬を叩く。
「異動と聞いてたけど違うのね…彼はいつどこで…?神鳴なら助けられるかもしれないわ!」
助かると聞き必死に考え思い出す。
「ネックレスを渡した日のお昼過ぎかな、そう…あの後彼はこいつに会うって…」
死体を睨みながら呟くと神楽は時計を見て神鳴に時間を指定して力を使い部屋の時間をその時に移す。
アルバートが丁度拳銃を翔に向けている時だった。
「冗談…え!?」
翔がアルバートの背後に現れた三人に驚き声を出すとアルバートも背後の気配に気付き照準を翔から外し振り返る。
「なんだ!?なぜここに!?」
黒姫は殺意の籠ったナイフの一撃をアルバートの腹に見舞い銃を取り上げる。
「神の力を甘く見すぎよ?」
神楽は倒れるアルバートに語りかけ三人して翔の無事を確認する。
「何が起きて…」
「説明は後です」
困惑する翔を連れて今一度時間を進め警報鳴り響く環境に戻ってくる。
「なんでまだ警報鳴ってるの?未来変わったんでしょ?」
神鳴がポカンとしていると神楽が呆れたように答える。
「どのみち翔君不在になるんだから暴走は予定通り起きるのよ?」
「…なぁ俺死んだのか?」
どのみちと聞いて翔は裏切られた事実を受け入れるのに必死だった。
「はい、死んでました…こいつに…あれ?」
死体が無いことに一瞬首を傾げるが結果的に先に殺した事実を思い出し納得する。
「兎に角逃げましょう、流石に全員相手に出来ないでしょ?」
「そりゃ無理だろうけど…一体どこに!?」
翔は部屋を見渡し叫ぶ。
「私の世界に避難して貰うわ…彼らの狙いは研究員達よ、神の自由の為に…さぁ、行って」
神楽は自身の世界への道を開き神鳴を含めた翔達三人を押し込む。
「今はお姉ちゃんに任せなさい」
その頃、神華の研究室でカスパーは他の研究員達と連絡を試みていた。
「っくツムギもマークも応答無し…真っ先にやられたか?室長め、急に居なくなるなんて!」
「博士…アタシ達どうなるの?」
資料を必死にかき集め金庫に大雑把に詰め込み怯える神華に声をかける。
「大丈夫だ、心配ない!すぐに警備隊が来てシェルターかどこかに…」
バタバタと扉の外で足音がして数人の武装した警備隊が入ってくる。
「カスパー博士ご無事ですか!」
「ああ、早く避難を…」
「っは!神だ!撃て!」
統率の取れなくなっているのか神華に銃を向ける警備隊を止めようとする。
「やめろ!彼女は暴走していない!」
神華を銃弾から庇うようにカスパーが盾になり倒れ神華の中で何かが壊れる。
「あ…嗚呼、うわあぁ!」
絶叫と共に電撃が警備隊を襲い操られた警備隊達は互いに殺し合いを始める。
動かなくなったカスパーを抱き締めて神華は心を閉ざす。
神威がコンピュータをハッキングしてその様子をモニタ室で見ていた。
神姫の研究室では扉を固く閉ざし時間稼ぎをしていた。
「…ワタシは…」
戦う決心が出来ず逃げるべきか迷っていると扉の外で戦闘が開始され扉を抉じ開けて神斎が高笑いしながら入ってくる。
「戦う気もないなんて弱っちいな!雑魚のクセに五月蝿い連中に復讐とかしたくないの?」
黙る神姫を見てつまらなそうに神斎は去っていく。
扉の外は死屍累々で錆びた鉄の臭いが漂ってくる。