神の下僕は世界を救いたい11
明くる日、黒姫のお願いを受けて翔はカフェテリアに向かう。
黒姫が来るまでまだ時間があると何時もの不味い紅茶に砂糖を多めに入れて飲んでいるとアルバートが対面に座り話しかけてくる。
「優雅にティータイムか?」
「いや、待ち合わせです」
翔はやっぱり不味い茶に渋い顔をする。
「用事が終わったら僕の所に一度来てくれ、話がある」
「え?あぁ、はい、わかりました」
「ここの紅茶は美味しくないぞ、珈琲にしたまえ」
アルバートは笑いながら去っていく。
(珈琲は好きじゃないんだよなぁ、不味いのよりはマシか?)
下らない事を考えていると黒姫が翔を見つけて足取り軽く駆けてくる。
「またそれですか?」
「砂糖入れれば行けるかなって思ったんだがな…ダメだった」
しょんぼりする翔に黒姫が小箱を手渡してくる。
「外で買い物とか出来ないから…先生に頼んでみました」
「プレゼントか…精霊いるのかな?」
箱を開けるとネックレスが入っていた。
「ありがとな、…普通のアクセサリーだな」
「残念、精霊は居ませんでしたか…私不安です、翔君はループに巻き込まれず消えてしまうんじゃないかと…」
黒姫の心の内を聞いて翔もその問題を意識する。
「どうなるんだろうな、一生ループは嫌だし帰りたい」
「ですねぇ」
黒姫が翔の紅茶に手をつけて不味いと呟く。
「なんで飲んでんだよ!」
「どうせ残すのですよね?」
「…恥ずかしげもなく!?」
黒姫はニコッと笑いカップを返却する。
「身内いないから大胆になっているのか…」
「翔君、それ大切にしてくださいね」
「ああ、先生にも伝えといてくれ、この後アルバートに呼ばれててな」
翔は席を立ち黒姫に別れを告げる。
「素っ気ないですね…」
翔はアルバートの研究室に行くと神姫の話をされその事を聞かれる。
「後輩に先に越されて悔しくないかい?」
「自分は出世するつもりはないんで…」
「そうか…だから気に入らない」
アルバートに拳銃を向けられる。
「な!冗談は勘弁してください!」
「博士達は皆君に嫉妬している、どこで得たか知らない知識、暴走を一人で止める実力…まぁもう不要だがね」
引き金が引かれ銃声が鳴り響く。
「まぁ利用価値はまだあるからな…ふはははは!」
黒姫はカスパーから翔の配属転換を聞かされる。
「そんな…嘘ですよね?」
「仲良かったみたいだからなショックなのも分かる…アルバートは新しい神を作ると忙しそうだったからな」
「なん…て?そんなはずは…」
新しい神なんて存在し得ない記録に黒姫は驚き戸惑う。
「彼にはまだ聞きたい事もあったんだがな…大丈夫かい?」
嫌な予感に黒姫は青ざめ震える。
「奴はどこ…」
「奴って…研究室だろう?」
黒姫は飛び出しアルバートの研究室に飛び込み詰め寄る。
「翔君に何をしたの…」
「急に来て何事かと思ったら…配属転換だと…ぐ!」
黒姫は振り向こうとするアルバートの首元にナイフを突き付け威圧的に話す。
「彼は黙って居なくなる人ではないわ…どうなるか覚悟出来てますか…?」
「僕を切ってもプロジェクトは止まらないぞ…!そうさ!君も終わりだ!皆邪魔なんだよ!」
衝動的にアルバートの首を切り突き飛ばし黒姫は床に泣き崩れる。
「ああ、ごめんなさい…」
警報が鳴り響き示し合わせたように神達が暴走を始めたと放送が入る。
(もう…全部どうでもいいや…疲れちゃった…)