神の下僕は世界を救いたい10
神姫の完成までそう時間はかからなかった、研究室に翔が行くと既に黒姫が神姫と何か話をしていた。
二人は翔が来たのを見て小さく手を振る。
「翔君、担当を兼任することにしました」
開口一番に黒姫は無茶な話をする。
「よく出来る…いや出来たな」
「神楽の武器の件でアルバートさんに条件飲ませました」
「したたかだな」
翔は神姫の姿を見て黒姫そっくりで驚く。
「なんで神姫の姿が…何かしたのか?」
「実は研究データとして私の髪の毛を提供しました」
「髪の毛って…つまり遺伝子データ?今までの神も同じように作ってたのか」
黒姫は頷くが一言訂正を入れる。
「本来はもう少し詳細のデータが必要なんですが神姫は大分省略化していて髪の毛程度で済むので、これもループ知識です、えっへん」
神姫は話が終わったのを見て翔にも挨拶する。
「翔さん、よろしくお願いします」
「ああ、よろしく…うーむ声もそっくりだ、黒鴉含めて同じ顔は実質三人目だな」
黒姫は苦笑いして神姫の能力と世界作成についてのデータを取る用意をする。
「そういえばこの後この世界はどうなるんだ?神は全員揃ったみたいだが…」
「えっと…この実験が芳しくなく上層部がプロジェクトの廃止を決めて…神が生き残るために連鎖暴走して人が滅びます」
翔が首を傾げる。
「あれ?詰んでないか?」
神姫は元々スケールダウンされているから実験結果は当然悪くなり上層部が廃止するのは既定路線になる。
「…人を救うのも神を救うのも、両方やって見せてください」
「無茶言うなよ!世界を救うのも楽じゃないな…」
翔はふと、この実験を成功させれば問題ないのではないかと感じて竜司から貰った指輪を見る。
「能力が何か分からなかったがもしやコレが役立つか?」
指輪を外して神姫に指輪を渡す。
「翔君…何ですかその指輪…なんで神姫に渡すんですか?」
「親父さんから渡されたんだよ、こっちに来るのに使ったんだ、実験成功させる為に使ってみるだけさ…すまん、睨むなって」
黒姫のどす黒いオーラを感じて翔が謝る。
「父さんの力ですか…って神姫!左薬指に着けようとしない!」
神姫は注意されクスクス笑う。
「私の遺伝子データが入って翔君を狙ってる?…うぅー」
威嚇するように唸る黒姫、翔はどうどうと落ち着かせる。
「地球の時以上に拗らせてるな…自分の分身に噛みつくなって」
「ごめんなさい、取り敢えず結果出たら報告しますので今日は神鳴と神楽を頼みます」
「わかった、無茶するなよ」
翔が研究室を出ていくのを見て黒姫は気合いを入れる。
「頑張らないと、私と違って彼は死んだら次無いかもしれません」
神姫は指輪を眺めて嬉しそうにしているのを見て黒姫はまた嫉妬する。
(むぅ、私も何か貰いたいなぁ…終わったら頼んでみようかな…)
実験を始めた二人だったが箱庭程度しか作れないはずの神姫が指輪の力なのかそれなりの規模の世界を作り出して二人とも声を出して驚く。
「ど、どうしよう本当に成功しちゃった…」
「ワタシにこんな力が…?」
「多分父さん…アーキタイプの指輪の力だと思います、どう報告しよう…」
黒姫は作られた世界を覗き地球そっくりの青い星にどんな未来が待っているのか思いを馳せる。
(未来が変わった…?プロジェクトは続く?)
神姫の実験成功の報にアルバートは喜び報告書を食い入るように読み込む。
「そうか、アーキタイプの力にそんなものが…発見者はまたKか…彼は凄いな」