神の下僕は世界を救いたい7
予定通りに事は進みアルバートから新たな二人の神の完成の報を受けて翔と黒姫は様子を見に行く。
まずは不調と聞いている神華から見に行くと管理担当の眼鏡の若い博士がモニターとにらめっこしていた。
「あのカスパー博士…?」
黒姫はループの知識を使って初対面の博士の名前を呼び様子を見ながら翔に小声で耳打ちする。
「神華は世界を上手く作れないんです…理由は不明ですが」
カスパーと呼ばれた博士は机を叩きマイクに向かって叫ぼうとするが翔達がいるのに気付き平静を装いながら挨拶する。
「君達は…あぁプロトタイプと素っ頓狂な魔法の世界の世話係か」
悪気は無いのだろうが二人は大切な友人を馬鹿にされカチンと来るが我慢しながら頭を下げる。
「アルバートから評判は聞いてるよ、是非ともうちの無能にアドバイスが欲しいよ」
「無能…ですか」
黒姫の怒りメーターが上がっているのを感じた翔が目配せして落ち着かせる。
「取り敢えず直接会ってもいいですか?」
「いいとも!まぁ噛み付かれないように気を付けてね」
エアロックを解除して翔達を実験室に入れる。
「誰…博士…?」
地球で見た時と大分雰囲気が違い弱々しく椅子に座る神華に二人は同情してしまう。
「大丈夫、あなたは努力すれば凄いのですから」
黒姫が神華の手を取り笑顔を向ける。
スピーカーからカスパーが黒姫に注意する。
「あまり近付かない方がいい、精神支配されるぞ?研究員が何人もやられて困っているんだ」
注意を受けて黒姫に代わり翔が声をかけ反応を見る。
「やぁ神華、元気か?」
「元気って…なに?」
「健全な精神は健全な肉体に宿る、だったっけ?取り敢えず満足行く食事と運動はさせなきゃダメだと思うぞ」
カスパーに聞こえるように声を張る。
「そんな事は…分かっているさ、だが危険なんだよ…」
「ビビってどうすんだよ…ずっと小言をそこでボヤいても仕方ないだろ」
カスパーは翔の挑発に仕方なく乗り怒りと恐怖の入り雑じった様子で研究室に入ってくる。
「何かあってからでは遅いんだぞ…」
「人を力で支配するのは信頼の無い証拠、信頼関係から構築しないとな!」
カスパーから眼鏡を取り上げる。
「成る程ね、俺は史実で何があったか知らないけど…」
神華に眼鏡を掛けさせて笑う。
「博士見た時からそうじゃないかと思ったんだよなぁ」
「っぐ、貴様ふざけが過ぎる!役員会議にかけるぞ!」
「いや、でもほら、敏腕秘書っぽくない?」
翔が黒姫にも自分が言いたいことが分かるように説明する。
黒姫もカスパーが神華の鍵になると気付くもやり方が雑だと困惑する。
「眼鏡無くては何も見えん!兎に角返せ!」
カスパーは神華に近寄り眼鏡を受け取る。
「全く失礼なヤツだ!」
「俺も形振り構ってられない事情が…」
翔が言い訳に近い説明をしようとすると警報が鳴り響く。
「この警報は…皆動くんじゃない!警備に任せるんだ」
「翔君、多分神斎かと…」
黒姫がカスパーを無視して翔に目標を話すと翔はカスパーに自分の意思を伝える。
「行ってきます、博士は神華と隠れててください…あなたが馬鹿にした神の力でちょちょいとお灸据えてきます」
黒姫も翔に続いてカスパーに一礼して研究室を出ていく。
「博士…?」
神華は震えるカスパーの袖を掴み心配そうにする。
「神螺の暴走を知らないのか…!たくさん人が死んだんだぞ!?神の力…オレはまだ何も理解していないだけなのか…?」