神の下僕は世界を救いたい6
地下施設のカフェテラス、そこで黒姫と待ち合わせをして色々と聞こうと翔は優雅に紅茶を頼んでいた。
「ちょっと背伸びし過ぎたか…うん、あんまり美味しくないな…」
「遅くなりました、すみません」
翔が紅茶を不味そうに飲んでいるのを見て申し訳なさそうに黒姫がやってくる。
「色々聞きたい話があるんだが…まずは状況の説明を頼む」
「はい、私達がいるのは父さんの産まれた上位世界…間違いありません」
模した世界ではなく正真正銘の上位世界と聞いて翔は紅茶を吹き出す。
「再現じゃないのか!?」
「翔君、声大きいです…」
周囲の目線が集まり翔は頭を下げて騒がしくしたことを謝罪する。
「間違いないです、既に私は三回ループしてます」
「ループ?」
「私達の願いを叶える為にはこの空間で答えを見出ださないといけないようです」
黒姫は加えて自身の考えを述べる。
「再編する為の鍵が不完全だったんじゃないかと…」
「中途半端で神鳴達がいない世界になったのはその為…?」
「多分…」
自信無さそうになる黒姫を翔は励ます。
「まぁ答えが見えているならチャンスだろ?頑張ろう」
「そうですね…あの、どうやってここに?」
「お前の親父さんに頭下げたんだよ、皆居ないし記憶もすっ飛ぶし時間巻き戻ってるし…はぁ」
捲し立てるように文句を言うと一息入れて虚無の顔になる。
「時間が巻き戻る?」
「ほら、あの神鳴と最初に出会ったあの日」
黒姫がうんうんと頷き母の事を尋ねる。
「私が居ない間、母はどうなりましたか?」
「親父さんと仲良くしてたよ」
「よかった…」
ホッとしたように胸に手を当てる。
これからの話に戻そうと翔は今後のヒントになりそうな事を探る。
「さっきループしてるって言ってたな…何がどう変わっているんだ?」
「そうですね、まず室長が違いますね…あ、そもそも研究速度が違います…本来私が来た頃にようやく父さんの世界が完成します」
「完成ってのは人の誕生か?」
黒姫が少し考えて首を横に振る。
「すみませんそこまでは…ただ完成と聞いただけで」
「そうか、じゃあ取り敢えず…ループはどう終わるんだ?」
「終わる…それはこの世界の終わりですね、父に滅ぼされます」
半信半疑だが終わり方は一貫しているようだった。
「ありがとう、今は公に言えないから暗号で言うが神田とマザコンを作っているそうだ」
「あ…成る程…じゃあもうすぐ…」
「神姫が作られる?何か起きる?」
黒姫は頷き指を二本立てる。
「両方です男神は面倒事ばかり起こしますから」
「わかった、警戒しておくか、っとそろそろ神鳴の相手だな先に行く」
翔が立ち上がり黒姫に頭を軽く下げて神鳴の部屋に向かう。
黒姫は小さく手を振って返して残った紅茶を見つめ手を伸ばす。
(その…残すのは良くないよね…)
周囲をチラッと見てからぐいっと一気に飲み干し渋い顔をする。
「確かにあんまり美味しくない…あぅ」
自分のした下品な事に赤面しながら容器を返却して自身も神楽の世界のモニタリングをしに行く。