神の下僕は世界を救いたい4
それから数日間、翔は焦燥感に苛まれながら神鳴に色々な事を教えながら時に許可を貰い外を出歩いたりして精神的に成長させていく。
アルバートから呼ばれ三柱の神が完成したと伝えられ見に行く。
「Kに習って名前を付けたぞ神威、神螺、神楽だ」
「ああ…やっぱり」
「何がやっぱり?安直?」
翔は首を横に全力で振って誤魔化す。
「神楽の承認は大変だったぞー、誰も魔法なんてまやかしを信じないんだからな!」
こうして新たな神の運用を始める。
最初はアーキタイプをモデルに世界を作成させてあとは成り行きを見守るだけだった。
神楽は神鳴の功労を讃える為という翔の意思を汲み取り神鳴と交流を重ね朗らかな性格になり下馬評と異なり一番安定した世界を構築していくこととなる。
残り二つの世界は神楽と異なり大きな問題を抱えることとなる。
神威は新素材の作成に沸き立つ人々だったが神威自身の世界に圧政を強いてその世界では酷い労働環境で機械生産を行わせている。
神螺は無理な進化を行うことにより世界は荒廃し強き生物のみが生存できる醜い世界に変貌を遂げ今や人などどこにもいない。
「K…君はこうなることを見越していたのか?」
三柱のレポートを見て嫉妬に燃えるアルバートだったが神螺の世界に更なる異変が起きそれどころでは無くなる。
「アルバート博士!け、研究室に化け物が!」
「なんだと!?」
神螺の研究室に世界の壁を超えて怪物が侵入してきたのだった。
警備隊がすぐに召集され制圧に取り掛かるも歯が立たず被害が増えていく。
神鳴の部屋で翔は神楽と神鳴の様子を確認しながらその報を聞き立ち上がる。
(これも役目か…?)
翔の様子を見た神楽があの旅行鞄を取り出す。
「…使って、あなたには死んで欲しくない」
「死ぬもんか、俺にはまだやらなきゃいけない事がある」
鞄を開き相棒の名前を呼ぶ。
「行くぞ焰鬼!仕事の時間だ!」
吐き出される刀をキャッチして事件現場に向かう。
道中で精霊と契約しながら研究室に辿り着く。
「先輩、まだ生きてます?」
物陰に隠れるアルバートに声をかけながら刀を抜く。
目の前には歪な姿の合成獣が死んだ警備隊を引き裂きながら唸り声をあげていた。
「以前の俺だったらビビって逃げてただろうなぁ…擦れちまったな」
刀を構える翔に飛び掛かる獣だったが焰鬼が顔面に拳を打ち込み地面に落とす。
燃える刀身の一撃で息の根を止める。そのままひどく荒らされた研究室に入り周囲を見渡す。
「なんだ強い人も居るではないか」
「神螺、消されたくなかったら大人しくするんだ」
「たかが人間ごときに…」
ひゅんと片腕を切り落とし納刀する。警備隊の追加が現れ神螺を拘束する。
「どうせ治るだろ?次暴れるならバラす」
神螺は怒りを露にするもゆっくりと腕を生やし治し捨て台詞を吐く。
「貴様!今は我慢してやるが何時か復讐してやる…」
「叶うだろうよ、まぁ最終的に勝つのは俺だけどな!」
戦った日を思い出して嫌みたっぷりに吐き捨てて警備隊に任せて研究室を出る。
部屋を出た後どっと疲れが出たのか大きく息を吐いて自己嫌悪する。
「カッコつけすぎた…何やってんだ俺…」
アルバートが返り血にまみれた翔を心配する。
「強いね…化け物仕留めちゃうなんてさ」
「…はぁー今日はもう寝たい…あ、刀返さないと」
とぼとぼ歩く翔を見送るアルバート、そこに研究員が報告に来る。
「室長、新人が来てます」
「あー、そうか通しておいてくれ…事後処理とかめんどくせぇなー」
血溜まりを見てアルバートは深いため息をする。