神の下僕は世界を救いたい2
神鳴とのファーストコンタクトを無事に終えて何にでも興味津々な神鳴に翔は体験してきた話を懐かしむように色々とする。
「K!終業だ」
スピーカーから初めて聞く声がして翔を呼ぶ。
神鳴は名残惜しそうに素直に別れを告げて翔を見送る。
エアロックを抜けるとモニタリングをしていた男が翔の肩をバンバン叩き大笑いする。
「新人なかなかやるじゃないか!名付けをした時はどうなることかと思ったがな」
「やっぱりダメでしたか?」
歴史を変えるような悪行をしたと反省しながら尋ねると男は親指を立てる。
「今まで同じ事して失敗した奴らばかりだからな!神プロジェクトの神の文字を使ったのか?咄嗟に思い付くにしては上出来だな、見習わせて貰うぞ」
(…あ、ヤバいコレは歴史改変してる)
「それよりもお前もアーキタイプの完成披露に行くだろ?パーティーだから美味い飯にありつけるぞ」
男はウキウキと小躍りしながら監視室を出ていく。
モニターをチラッと見て監禁状態の神鳴に同情しながら翔も披露宴に向かう。
会場となった大広間にて偉い人のよく分からない演説を聞きながら飲み物を飲みながら周りの会話に耳を傾ける。
「講釈なんて聞きたかねーんだよなぁ」
「我々の研究の成果とか言って殆ど追放した博士の論文ありきってマジ?」
「お偉方も今回の成果出さないと首飛ぶらしいし世知辛いよねー」
あまり良くない噂話が聞こえてきて苦笑いする。
演説も佳境を迎え司会をしていた研究員が昂る声で盛大に翔のよく知る世界のお披露目をする。
「さぁご覧下さい!コレが新たな世界です!」
(…地球、俺の…俺達の世界)
「我々の世界をモデルに高い再現度とユニークな歴史を持つ新たな資源と環境です」
会場が研究の成果に沸き立ち歓声を上げる。
翔は映像に映る恐竜を見て冷めた目でその様子を眺める。
「恐竜だと?あとどれぐらい人間が生まれるまで時間掛かるのか分かっているのか…?」
翔の呟きが聞こえたのか舞台袖にいたアルバートに目を付けられ近寄ってくる。
「新人君…君だけ何か知っているような素振りだね」
「いえ、研究の凄さが学がなくて今一理解できなくて…」
「嘘だね、君はあれを見て恐竜などと悪態をついたね?見ていたよ」
余計な事を言ったと後悔するがアルバートは嬉しそうに映像を指差す。
「その通りだ、あんなデカい生き物は屑だ!我々の欲しいものはもっと高度で知的な生命体さ!」
アルバートは続けて翔の肩を抱き質問をする。
「君の意見を聞こうK、後何年掛かると思う?」
「少なくとも数十億年」
途方もない数字にアルバートが大笑いする。
「いいね、気に入った!プロトタイプから生きて返ってきてその堂々とした意見、学が無いと言うのは嘘じゃないか?他の楽観的な馬鹿に比べて十分優秀だね」
「先輩お酒飲み過ぎじゃないですか?」
「分かるかい?やけ酒でもしなきゃこの場で大暴れしているさ!父の論文を使って紛い物ばかり作りやがって…今に見ていろ!」
聞かれたらマズイ話を周りの歓声を盾にべらべらと翔に話してアルバートはヨロヨロと千鳥足で元の場所に戻って行く。
翌日、神鳴と合う前にアルバートに呼び出され翔は愚痴を聞かされる。
「ふふふ、あの屑共め…アーキタイプの発表を終えると同時に厄介事を寄越して来やがった」
何故自分が呼ばれたのか不安になったが他の部下が軒並み逃げ出していたのか色んな机の上が綺麗になっていた。
「あの使えない世界を何とかしろとさ…あと何億年もかかると僕がアドバイスしたらこの様さ…」
翔は黙って案を考えているとアルバートは涙で腫れた顔を向ける。
「君も辞めるのかい?」
「…案がない訳じゃないですよ…多分許可は降りないですけど」
「何!?」
アルバートは藁にもすがる思いで机を叩きながら立ち上がり翔に詰め寄る。
「K!うまく行けば我々は昇級できるのだ!教えてくれ」
「別に昇級に興味は無いです、神鳴…プロトタイプの力を使います」
「プロトタイプの…力?」
翔は説明するためにもアルバートを連れて神鳴の所へ向かうことにする。