黒幕とロボと卑怯者1
町の中で物資を集め懐がホクホクでサバイバルに向けて気合いを入れていた翔達の前に町の雰囲気から違和感のある近代的な建物が見えてくる。
「なんでしょうあれ」
黒姫が真っ先に反応して首を傾げる。
「すごい罠っぽいな…」
恐る恐る近づき翔は窓から中を覗き込む。
「地下に続く階段しかないな…」
黒姫がそれを聞いて入口から缶詰めを一つ投げ入れる。
「何も起きないですね…」
二人は安全を確認しながら中に入っていく。
丁度そんな時に八坂がやっとの思いで町に到達する。
「無人か…気味悪いな…」
チラッと家の中をみて色々な物資に気付き使えそうな物を手に取る。
(飲み水とパン…取り敢えず食っておくか)
どんなものか等気にも止めずさっさと飲み食いして気合いを入れ直す。
黒鴉が更に遅れて到着する。八坂と同じく物資を見てプライドを捨てて腹ごなしをする。
そして二人は翔達の入っていった建物前で遭遇する。
互いに一人なのを見て二人は疲れきった顔をしながら構える。
「どことやり合ったかは知らないけど…」
「お前を倒して浜松も倒す!」
「…ん?ちょっと」
黒鴉が構えを解いて八坂に誰と戦ったか確認する。
「俺らは外国人のいるチームだけだ」
「…ちょっと待ちなさいという事は…浜松だけ無傷じゃない!休戦よ休戦!」
黒鴉が自分の戦った相手を説明すると八坂も激しく同意する。
「卑怯な奴だな!戦わずして勝つとか!」
「そうね!どこに行ったのかしらね!許せないわ!」
それを翔は地下の広いモニターの並ぶ部屋で音声と映像を見て苦笑いする。
「どうするかね?」
部屋の中央に傍観者となっている竜司が笑みを浮かべて座っていた。
「なんで父さんがここにいるのかの説明が先かと思います」
「私が管理しているからだよ?それ以外に理由はないと思うが?」
スッと竜司の首にデスの鎌が掛けられる。
「姉さんと父さんは同じチームのはず…最後まで隠れてやり過ごすつもりだったのでしょうか?」
「黒姫…私がそんな不誠実な考え方すると思うか?」
「思います…真剣に答えてください」
竜司の表情が余裕のあるニヤケ顔から真面目な雰囲気に変わる。
「お前は優しいな、俺からの答えだ」
急ぎ黒姫はデスに攻撃の指示を出し翔は氷雨の氷の壁を作り防御しようとする。
鎌は空を斬り床が揺れ始める。
「な、なんだ!」
「引きますか?」
翔が頷き急ぎ建物から脱出する。
外では地響きに驚く二人だったが近くの変な建物から翔達が出てきて顔色が変わる。
「浜松!見つけたわよ!」
黒鴉は好敵手を見つけた喜びで目を輝かせる。
「俺達と…な、なんだぁ!」
八坂も翔に宣戦布告しようとするが急に地面が隆起して全員その場から逃げるように同じ方向に走り出す。
「あんた達何したのよ!?」
「地下で如何わしい事してたんじゃねーよな?」
四人が振り返ると巨大な二足歩行型ロボが町を破壊しながら立ち上がる。
「わぁー」
怒りと困惑と意味不明で混乱する黒鴉が思考放棄して声を出す。
ロボの目が光り竜司の声が響き渡る。
「娘達よコレがわたしからの答えだ!」
「父さん、流石にそれは卑怯過ぎません!?」
「ふはは!悲願の為なら卑怯と吟われようが構わん!勝てばリセットよ!」
黒姫が呆れつつ呟くと思考停止していた黒鴉がぶちギレる。
「は!?お父様?!私の苦労はなんだったのよ!?」
「どうする?まだ俺と喧嘩するか?」
翔が困り顔で二人に尋ねる。
「お前との喧嘩は何時でもできる…あんなのとの喧嘩は今日くらいしか出来ねぇよな!」
八坂がグローブを引っ張りきつく絞め直す。
「ねぇ私勝敗に関係なくない?」
「じゃあ姉さんは大人しくしててください」
黒姫に冷たく突き放されやけくそになりながら武器を抜く。
「お父様!私に苦労させた釈明あるまで敵対してやるんだからー!」