開戦2
草原と森の間、古城のような建物に神楽率いるチームがいた。
「ふむ、地図を用意するなんて優しいのね」
神楽が地図を指で摘まみながらヒラヒラさせる。
「まぁここからなら多少の範囲は見えるんだけどね」
窓の外を見てニヤニヤする。
「油断するなよ、一応狙われる立場なんだ」
アキトが壁に寄りかかりため息をつく。
「じゃあアキト一人で外行かせる?」
「ひひ、薬ならあるよ」
シュメイラが神楽の提案を後押しするように薬品ボックスを開けていつも使っている薬を何本か渡す。
「構わないが俺無しで戦えるのか?」
葛之葉が自分を指差し笑う。
「ワタクシがいますので、ふふ」
「じゃあ行くか…」
アキトが木刀を確かめて窓の外を見ると森の方から煙が上がっている。
「おい、なんか…あれ…」
「あら、山火事かしら」
神楽も火の手を見てわざとらしく驚く。
「もうおっぱじめてんのか…火か…翔か?」
「ワタクシの娘かもしれませんよ?」
兎に角火の手が上がった事でどうするか判断を迫られる。
「火の手の方向からして誰か逃げてくるかも知れないな…様子を見よう」
「そうね、来るなら相手しましょう」
砂漠と草原の間に位置する海岸エリア、河内達が地図とにらめっこしながらどこに行くか話をしていた。
「オレの見立てなら市街地一択!」
猪尾が中央を指差して自信有り気に胸を張る。
「砂漠は無いにして草原経由で古城もありじゃないか?」
河内の指摘に猪尾が唸る。
「動かないって選択肢は?」
「無いと思います…視界が開け過ぎてて危険かと」
西園寺の考えをミナが否定して古城か市街地の二択になり古城となる。
「草原は視界確保できるので慎重に行きましょう」
自分の意見が通らなかった猪尾が口を尖らせるが仕方なく着いていく。
火の付いた森、煙に巻かれ黒鴉が絶叫する。
「なんでこうなるのよ!火遊びしたのは誰よ!」
「俺らはタバコ吸いませんよ!」
荻原が大声で返事をし黒鴉達は前後不覚になりながらなんとか火から逃げようとする。
「まずいわ、久坂、今どっち向かってるか分かる!?」
「分からないです、今は煙から離れましょう!」
「もう!最悪」
走る五人の前に古城が見えてくる。
「…うわ、もっと最悪」
中に誰か潜んでいる可能性の高い場所に黒鴉が辟易とする。
「入ります?」
神華が恐る恐る尋ねると黒鴉は「私にいい考えがある」と言って剣を抜く。
「お、お嬢まさか!?」
久坂が驚きながらも遠藤と荻原に下がるように指示する。
「ぶっ壊すわよ!バハムート!」
古城の中にいたアキトがその声を聞いて飛び上がる。
「げ!アイツ!本気か!?」
アキトが窓際から離れるように神楽達にジェスチャーして黒鴉の攻撃に備える。
燃費を無視した水圧で一気に城を破壊しようとする。
「さ、流石に破壊は出来ないでしょ…?」
神楽も音に驚くが階下の壁が破壊される音がして全員が嘘と言いたげな顔をする。
「…全員突入された時に備えろ」
アキトが動揺する面々に伝え木刀を抜く。
水流が止まり黒鴉のチームの面々含めて覚悟を決め戦闘を開始する。