決戦へ1
「ねぇ何で毎回俺ん家なの?」
翔は自分の家に集合する集団に辟易とする。
「仕方ないじゃない一番集まりやすい場所なんだもの」
黒鴉が腰に手を当てテーブルを占領する神達を見る。
「いや、でもそういう舞台は金持ちのそっちが決めた方が絵になるだろ?」
「浜松君、こういうのは騒ぎにしない方がいいものだよ?」
竜司の堂々とした姿勢に翔は文句も言えなくなり辺りの面々を見渡し一人見知らぬ人物に視線が向く。
玉藻前を大人にしたような佇まいにまさかと思いつつ皆に聞こえるように尋ねる。
「あの、どなたですか?」
キョトンとした顔をした後ニコッと笑って自己紹介を始める。
「あらあら、ワタクシは葛之葉、神斎の義理の母でしてその鍵というものらしいです、娘の玉藻前が世話になっております」
丁寧にお辞儀をし皆が返す中で玉藻前がウダウダと文句を垂れる。
(ぞ、属性が過多だ、てか神斎はマザコンだったのか…)
神斎の知りたくなかった事実を聞き翔だけでなく黒鴉まで白目を向く。
そんな二人を置いて神楽が鞄を取り出し他の鍵もドンとテーブルに乗せる。
「さぁ揃ったわよ!どうやって決めるつもり?」
「ちょっとアタシの眼鏡雑に扱わないでよ!あーもう指紋付いてる!」
話を遮り神華が怒りながら眼鏡を取り返して丁寧に眼鏡拭きで拭う。
神鳴が黒姫を指差して叫ぶ。
「なんで黒姫いるのよ!」
黒姫は髪を白くして答える。
「ワタシにも権利ありますよね?」
竜司が腕を組み肯定すると神楽も仕方なさそうに合わせて肯定する。
神鳴は不服そうだったがこうして四人が明確に対立して世界の命運を分ける戦いへと突入する。…はずだった。
「勝負の内容…など全く考えていない!」
竜司の発言に全員がずっこける。
「そもそも力や知恵一つで世界をどうこうというものは如何なものか!」
「じゃあどうすんだよ!」
翔がツッコミを入れると竜司がニコニコしながら宣言する。
「戦いは総合力、ゲームといこう」
全員が「は?」と言うと同時に指を鳴らし強制的に転送が行われる。
何もない白い空間に移動して竜司が手を叩き注目を集める。
「全員支持する世界は決まっているか?人数の差だとかそういう文句は一切聞かないぞ?」
「結局喧嘩せいっちゅうことかい!」
玉藻前が大半の面々の代弁をする。
「ああ、死んでもあの部屋に戻されるだけだから本気でやりあってくれて構わないよ?そして戦略的に戦ってもらう、勿論陣営の乗り換えもありだぞ?」
「…それってつまり裏切りとか平然と起きるって事だろ?…いいのか?」
アキトがつま先で地面を鳴らしながら尋ねる。
「勿論だとも、最後に残った陣営が勝者だ」
勝負を始めようとする竜司に神楽が大きな声で制止する。
「もう一度全員の願いを確認しましょう!参加者含めて!」
アキトが神楽の提案を拒否する。
「まて、それは悪手だ…」
「いいじゃないか!全員の主義主張は大事だぞ?」
翔はその様子を見ながら顔を青くする。
(心理戦!なんか分からないが巧妙な戦いが既に始まっている!?まさか我が家からサバイバルバトルが始まるだなんて…!)