宝物1
夏も終わりを迎えた頃、神楽がアキトを連れて浜松家にやってきて神理の鍵についての説明と謝罪をしてくる。
初めて話を聞いた神鳴が半信半疑に質問する。
「その鍵を集めたら神様不要で世界再構築?とんでもない話ね」
「なぁーなぁー、それウチらみたいなんでも叶えられるんか?」
玉藻前が割り込んで願いを叶えるものと思い込んで聞いてくる。
「流石に私や神鳴意外はどうなのかしら…」
ガッカリした様子で玉藻前はテレビの方に行くのを見て神鳴が苦笑いする。
「あ、興味無くしちゃった…」
そんな中で黒姫が自分を指差して首を傾げ言う。
「ワタシどうなるんです?」
沈黙の後全員が険しい顔になる。
「わ、忘れてたわ…」
神楽が白目になり顔を手で覆いながら謝る。
「え!忘れてたんですか!?」
「忘れてたのか!」
全員がツッコミ翔とアキトが二人して何が鍵になるのか考える。
「因みに何が鍵か分かるか?」
思考が面倒になった翔が直接聞いてみるが黒姫は首を横に振って分からないとアピールする。
「…という事は鍵は集まらないで世界再編も無し?」
神鳴の言葉をアキトがすぐに否定して自論を述べる。
「神の力を実際使っているのならやはり何処か…いや何かに源はあるんだろう…形の有り無しは関係ないのかもな」
それを聞き黒姫が青ざめる。
「ま、まさか私の命そのもの…?」
神楽が半泣きになり机に突っ伏して謝る。
「ごめんなさい!わ、私とんでもない事仕出かす所だったわ!」
悪役の神楽を想像して神鳴が難しい顔をする。
「最後の鍵と言って黒姫を手に掛けるのね…絵になるわね」
「じょ、冗談じゃないですよ!」
翔がそうならなかった事に安堵して黒姫の背中を撫でて落ち着かせる。
「分からない以上集められないそれで終わりでいいじゃないですか…確かに元の世界に帰れないのは残念ですけど」
「そうだな…逆に言えば神姫は全てを集めることが可能な訳だが…」
アキトの言葉に翔は深刻な顔になる。
「それはそれでマズイのかもな…」
「わ、私そんな大それた事できませんよ」
アキトが腕を組み呟く。
「思い当たる物が無い訳じゃない…神姫にとって大事なものとかな」
「あら?その根拠は?」
神楽が驚いたように尋ねる。
「鍵が神達にとって大事なもの…俺はそう考えてる。神螺の宝玉、神斎のとある魔物の魔石、神華の伊達眼鏡、神威の世界の歯車、神楽の鞄…」
神鳴が自分を指差す。
「私のは?」
「ソイツ」
翔を指差す。
「え!?俺!?黒姫なんかよりも俺の命がヤバいじゃないか!」
「知らん、可能性を言っただけだ」
アキトは馬鹿にするように笑顔であしらう。
「取り敢えず立証の為に一つ一つ考えてみるか?」
ちょうどそこで呼び鈴が鳴り黒鴉がやってくる。
「来たけど話って…う」
神楽を見て黒鴉が気まずそうにする。
黒鴉に説明するために神楽は席を立ち土下座して謝る。
「勘違いされてるようだからまずは謝るわ、ごめんなさい!」
「えぇ…」
困惑する黒鴉にこれまでの話を軽くして席に着かせる。
「神様の力…世界再編…神田はそんな下らない事のために…」
わざとらしく被害者として振る舞いもう一度神楽を謝らせ気持ちが晴れたのか許す。
「兎に角その鍵が黒姫の何が該当するのか知りたいのでしょ?私分かるかも」
黒鴉は勿体振りながらニヤッとして自信満々な仕草をする。