一つの真実2
静かに眠るボロボロの神華にアキトは色々と察して黙り黒鴉の言葉を待つ。
「やっぱり浜松ね、もう何があったか気付いたのかしら?」
黒鴉はスカートの裾を握り締め悔しそうにアキトに語りかける。
「大体な、お前が居なかったからお前がこうなったんじゃないかと思っていたが…」
咄嗟にシュメイラがアキトに黒鴉が来た時の話をする。
「いやぁ驚いたよ?急に現れて瀕死な娘を連れているんだから…」
「ごめんなさい、貴女を頼るように神鳴が…いえ、浜松だったかしら?取り敢えず計らってくれたのよ」
アキトが二人に単刀直入に疑問に思ったことを聞く。
「なぜソイツを隠す?」
「神楽を信用出来ないから…気を悪くしたらごめんなさいね」
アキトが頭を押さえて困った様子で聞き返す。
「言わんとしてることはわかった…だが何故だ?」
「神田が…眠る前に大体話してくれたわ、神威が何者かに唆されたって話、もともと二人は面識あって、いえ…神斎もかしら?」
「…分かりづらい言い方だな、つまり神威が他の神とパイプがあってその神威を神楽が唆して神鳴を攻撃させたってことか?」
アキトの要約に黒鴉は頷き話を捕捉する。
「神楽がやったという確信は無いけど…可能性があるってこと…」
「アキト君はこの話信じるかい?」
アキトは先程の神楽の様子を思い返して同意しようとするが言葉を飲み込む。
「確信は無いならそれ以上は踏み込むな…相手は神だ」
「そう…よね…」
黒鴉が残念そうに俯く。
「だがこのままだと地球に戻れないな…俺が神鳴を呼んでくる、神田だったか?ソイツは死んだことにして隠せ」
アキトの言葉を聞いて黒鴉が顔を上げる。
「私の言葉を信じるの?」
「俺はお前に深入りするなと言っただけだ…ソイツと俺は別だ」
アキトは神華を指差し答えてから腕を組みシュメイラの方に顔を向ける。。
「シュメイラ先生、君も普段通りにして欲しい、今日の事は忘れろ」
急に名前を呼ばれてシュメイラが背筋を伸ばす。
「ええ!私もかい!?」
「当たり前だ、友を裏切るな…そう言いたいだけだ。じゃあまた後で、黒鴉達は隠れているんだぞ?」
アキトはそのまま研究室を出て神楽の私室に向かい地球に行く手筈を整える。
「あら?もう向こうに行くの?」
「ああ、ちょっと翔達に神威について聞きたいことが出来てな」
「…今日は疲れたから明日でいいかしら?」
机に突っ伏した神楽を見てアキトは苦笑いしながら仕方ないと諦めて部屋を出ていこうとする。
「ねぇアキト、もし故郷に帰れるってなったらどうしたい?」
急な質問にアキトは頭を捻るがすぐに背を向けたまま答える。
「俺にもう故郷なんて無いさ、そうだろ?」
部屋を出ていくアキトを見つめた後目頭を押さえて小さな声で同意する。
「そう…だったわね」