怖い人
翌日の日曜日、朝に困り顔の黒姫に起こされる。
「おはようございます、すみません、服が無いです」
「買いに行けば…金がないか、下で待っててくれ」
寝ぼけ眼で今後の事を考えて頭を抱える。
(参ったな…買い物か…)
階下に降りてリビングで黒姫と神鳴に挨拶する。
「服ねぇ、取りに帰れないの?」
「勘当されちゃったから、どうでしょう」
「翔、この子あなたとデートする口実作ってるわ!」
突拍子のない発言だったが否定できず注意する。
「邪推するなよ、マジで服は無いみたいだし」
「神鳴は服どうしてるの?」
話をそらすように黒姫が尋ねる。
「御安心あれ」
神鳴がリビングから物置に繋がる扉を開く。しかし物置にではなく神鳴の部屋である異空間になっていた。
「人ん家を勝手にとんでもリフォームしてんじゃねーぞ!」
「広くなるんだから良いでしょ!」
「そういう問題じゃないだろ!」
「神鳴?そういうのは良くないと私も思います…」
黒姫の追撃に開き直る。
「もうやっちゃったもんね」
直す気はないらしい。
「仕方ない、…とりあえず服買いに行こう、金は無いんだろ?」
「う、ごめんなさい…必ず埋め合わせはします」
「二人だけで行くの?私もー」
「留守番、もとに戻すまで許さんからな?」
文句を言う神鳴を残してとりあえず出発する。
「とは言ったものの…どのくらい買うんだ?」
「とりあえずこのドレスから変えないと一目が…」
まずは一着さっさとワンピースを購入して着替える。
「…体のいい荷物持ちになる予感がするぞ」
財布を心配しながら次々と服を購入していき想像通り両手いっぱいになる。
「黒姫さん?何日分買うんですか?」
「一週間…?」
「金無くなる、ドクターストップでお願いします」
翔の本気の顔を見て納得して最後と言って下着コーナーに向かう。
「男性が入れない聖域…!」
「すぐ終わります、待っててください」
言葉通りさっさと済ませてくれたのは救いだった。
「ありがとうございました」
「うぅ…暫く飯代と遊びは我慢だな…」
昼をとうに過ぎている時間まで買い物をして一段落してお腹が鳴る。
「…飯か」
「安いところでも…」
苦笑いしながら歩く二人の前に豚顔の魔物が現れる。
「あぁ、丁度良かった金に…」
翔が刀を呼び出すより早く死神の鎌がオークの首を飛ばす。
「…邪魔しないで」
「黒姫さん?いつからデスを?」
「え?あ…その、ずっと」
神だろうが問答無用で殺しそうな剣幕からサッと元に戻り黒姫は魔石を拾う。
「翔君!これでご飯も服も…デート続けられますね!」
「あぁ、うんもう隠す気も無いんだね、たまに君が怖くなるよ」
「ディナーと行けるかな?」
「晩御飯は家で食べような…?」
ムッとするがダメなものはダメと注意すると諦めてくれた。