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それは遠い場所。それは触れられない宝石。

作者: 黒桐柊一

久しぶりの夢を見た。久しぶりの場所だった。






大好きな人達がいて。

ぶつかり合うこともあるけれど、

それぞれが自分のやりたいことをして、

作りたいものを作ってる場所。


少し人も入れ替わってはいたけれど、

大好きな人達と大切な人が、それぞれの大好きを形にしてる大好きで溢れた場所。


大切な人が大好きな人が私も好きで。

大切な人が笑っていてくれることが嬉しくて。


だけど、どんな場所にも権力者は居て。

どんな世界にも頭の硬い横柄な支配者はいて。


私は、私の大切な人が、そいつに泣かされることが嫌で。

我慢ならなくて。耐えられなくて。

そいつにぶつかって。真っ正面から喧嘩を売って。怒りを買った。


もっと上手くやれたはずだろう?


そうして思い出した。

私は前もこうして、ここから追放されたんだ。

私はまた、繰り返してしまった。


ごめんね、ごめん。


大好きに囲まれて笑う彼女に、そう言うことしか出来なかった。

キラキラとはしゃぐ彼女に、もう何もしてやれない。


ごめんね。またお別れだ。


ごめんね。俺は何も変わってなかった。


ごめんね。またオレが壊してしまった。


ごめんね。ごめん。


頑張ってね。また、さよならだ。


ごめんね。

大好きな人達と幸せにね。


ごめんね。


本当にごめん。






そうして夢からさめる。

弾ける笑顔も。幸せな時間も。抱き締めた彼女の感触も。繋いだ手の温かさも。戸惑い泣きそうな彼女の顔も。


全部全部全部、鮮明に覚えているのに。


私はまた弾き出された。



これは夢?そう夢だ。

だけど現実と地続きの夢だ。


私は何もかも壊してしまう。


幸せを。幸福を。感じたそばから、何かが必ず邪魔をする。


過去の罪が。過去の過ちが。


影となって返ってくる。


お前に、幸せになる資格などないのだと。

奴らはやってくる。


お前に、笑う価値があるのかと、嘲り罵ってくる。

それは私の罰だ。


幸福になどなれないまま。


いつまでも死にきれないまま。


生かされ続けている。


大好きな人の傍に。大切な人の隣に。


居ればその幸せをも壊してしまう。


取り返せない過去が、ナイフを構えてそこにいる。

いつでもその銃口は、私ではない、私の大事な人達に向いている。




「幸せ」は遠く眺めているだけでいいのだ。


それに手を伸ばしてはいけないのだ。


触れれば壊れる繊細なガラス細工なのだから。


私の薄汚れた手が、触れていい、ものではないのだ。


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