悪役令嬢ですが、冤罪にはざまぁが基本でしてよ!
「リリアンヌ・イノセンス!貴様との婚約は解消させてもらう!そして今ここに、貴様の罪を暴いてくれる!」
「はい…?」
「惚けても無駄だ!貴様がマリーを虐げていたことは知っているんだぞ!なあ、マリー」
「はい!」
改めまして、ご機嫌よう。私、リリアンヌ・イノセンスと申しますわ。公爵令嬢ですの。今、婚約者であるアインス・アンベシル公爵令息に婚約破棄を突きつけられているところですわ。そのアインス様の隣には義理の妹であるマリアンヌ。まあつまり、そういうことですわね。
「お義姉様は、私がお義父様とお義母様の本当の子供ではないからと私に毎日のように暴力を…!謝ってください!それ以上は求めませんから…!」
「マリー、君は優しすぎる!君の境遇を知っていながら君を虐げた悪女を許す必要などない!」
どうやら、私は義理の妹を虐める横暴な姉という設定のようですね。事実無根ですが。マリアンヌは叔父の子供。つまりは従姉妹です。叔父が不慮の事故で亡くなった際、うちに引き取られたのです。その境遇から両親が甘やかしてしまい、私のモノを何でも欲しがる悪い子になってしまいました。さて、どうしましょう。
「私はそんなことしていませんよ。何か証拠があるのですか?」
「証拠ならある!」
「へえ…?見せてください」
「マリーの証言だ!」
話にならない。却下。
「証言だけでは話になりません。言った者勝ちになってしまいます」
「白々しいぞ!」
「きちんとした証拠もなく、このような公の場で公爵家の正式な娘たる私を誹謗中傷なさったのですか?それは問題ですね」
そう。今は学園でのダンスパーティーの場。他の貴族の子女もいる公の場です。どちらに非があるか、はっきり白黒つけさせて貰いましょう。
「そもそも。何故私の義理の妹とそんなに親しげにしてらっしゃるのですか?」
「えっ」
「そ、それは…」
「というか、そのドレス、私がこの間盗難の被害に遭ったものなのですが。治安部隊にも正式に被害届を出している、オーダーメイドの他に一つとして同じモノがないドレスを、どうして妹が着ているのですか?」
私の発言に、この騒動を遠巻きに眺めていた周りがざわつく。マリアンヌは青ざめて、そんなマリアンヌを信じられないものを見る目で見つめるアインス様。
「とりあえず、この事は両家の両親にきちんとお伝えしなければ。マリアンヌ。貴女は治安部隊の方に引き渡します。覚悟なさい」
「そ、そんなっ…酷いです、お義姉様!私とお義姉様の仲でしょう?」
「あら、私は貴女に暴力を振るった陰湿な義姉なのでしょう?治安部隊の方にそう言ってみたらいいじゃない。まあ、治安部隊に嘘をついたら罪状が増えるだけだけれど」
「ま、待ってくれ…どういうことだ?俺はマリーに騙されていたのか?」
「ご愁傷様。結婚前から、しかも婚約者の義理の妹、実の従姉妹に手を出した時点で貴方も充分アウトです。騙されていたなんて被害者面してもダメですよ」
「なっ…!?」
「皆様、せっかくのダンスパーティーの場をお借りしてしまい申し訳ございませんでした。お詫び申し上げますわ。この二人はこちらできっちりと回収致しますので、どうかダンスパーティーを再開なさってくださいませ」
ということでマリアンヌを治安部隊の方に引き渡し、アインス様は連れ帰り両家の両親の前に突き出す。マリアンヌの方はきつく罪を咎められ自供し、アインス様は両家の両親から圧迫面接のような形で事情を根掘り葉掘り聞かれた。
マリアンヌは両親から縁を切られ平民扱いとなり、窃盗と公爵令嬢への誹謗中傷の罪で犯罪奴隷に身を落とした。
アインス様は私を公の場で誹謗中傷したこと、結婚前から義理の妹に手を出していたことなどを重く受け止められ、勘当。平民として市井に放り出された。
私は両親からマリアンヌを甘やかし過ぎてお前のことを良く見てやれなかったと謝罪を受け、その上で両親と親子関係をやり直している。公爵家は、元々アインス様が婿入りする形で継ぐことになっていたので、急遽別の家から誠実そうな次男の方を迎え入れることになった。
私を裏切った義妹と婚約者はそれぞれ不幸になりましたが、ざまぁみろ、ですわ。