丑三つ時の連絡
フリーランスでインターネット生放送などのディレクターをやっているKさんの話です。
インターネット生放送ってテレビほど予算がないので、ディレクターとかって結構雑用もやるんですよ。
番組のスタッフ、音声、カメラマン、生放送で使う絵とか、台本とかそこらへんを揃えるのもディレクターの仕事なんですよね。
フリーランスなのであまり文句は言えないちょっと辛い立場、
クライアントに嫌われたら次から呼ばれなくなってしまいますから、なるべく完璧にやるしかないという感じですよね。
とある日のことです。
Kさんが次の日の生放送に向けて準備をしていたんです。
スタジオの手配もカメラマンの手配も音声さんの手配も終わった。
カメラマンと音声さんには再確認のメールも送った。
あとは台本の最終稿と使う絵素材だけ、まあこれはいつもギリギリなのでそんなに焦ることはない。
構成台本という番組内で行うコーナーの内容とか、ざっくりとこんな事を言うみたいな事が書かれた台本は手元にあるから
明日の生放送をどうやって組み立てるかを「まだ昼だし、昼飯食ってから考えよう」と思ってお昼ご飯を食べに出たらしいんです。
たまたま目に入った中華料理屋さんに入って、ランチの炒飯セットを頼んで待ちながら、テレビを見ていたんですって
するとお店のドアが開いていないのに、黒い人がにゅっと入ってきたそうなんです。
霊感のあるKさんはすぐわかったそうです。あれは霊だと。
幽霊なんですよね。幽霊って自分が見えると認識されると寄ってきてしまうそうなんです。
それで昔Kさんも大変な目にあったそうで、Kさんは見えた瞬間に目をそらすそうです。
「いやな物見ちゃったな」と目の前のテーブルだけを見ていたら
肩をポンと叩かれて、振り返ると
お店のおばちゃんがいて、「あんたも見える人かい?」と言われたそうです
Kさん「あれですか?あそこの入り口の」
おばちゃん「そうなんだよ、土曜日の12時過ぎに必ず来るのさ。最初は怖かったんだけどね。まあ害はないよ」
と言われてKさんはちょっと安心したそうです。
それでもやはり幽霊の方は見ないように注文した炒飯を食べ、お店を出たそうです。
Kさんはオフィスに帰り、改めて番組の構成をチェックし、メールで次の仕事のスケジュールを調整などの仕事をしていると椅子に座ったまま寝てしまったそうなんですね。
するとKさんの左耳の耳元で「見ていただろ俺のことを」と聞こえたそうなんです。
Kさんはビックリして、椅子から転げ落ちてしまったそうです。
「ヤバイ!連れて帰ってきてしまった」と思ったKさんがオフィスを見渡しても中華料理屋さんで見た霊は見えない。
時間を確認すると朝の2時、いわゆる丑三つ時だったのです。
霊のこともあるんですが、ちょっと寝すぎたというのもあって、ヤバイと思ったKさんがメールをチェックします。
台本の最終稿のメールが1時間前に来ている、だけどもう一本のメールが来ていない。
これはマズいと思って、先方の会社に深夜2時にも関わらず電話をします。
プルルル プルルル ガチャとすぐに電話がつながります。
「お世話になっております。○○のディレクターをしておりますKですが、△さんご在席でしょうか?」
すると先方が「大変申し訳ございません。△は本日お休みをいただいておりまして」
Kさん「は?」
先方「△は本日お休みをいただいております」
Kさん「いやいや、明日、もう今日ですが、今日使う昨日納品予定の絵素材があるんですよ」
と問い詰めると、先方がちょっと歯切れが悪いんですよね
そこでKさんが更に問い詰めると、△さんは休んでいるのではないと
出社してきていなくて、現在も連絡がつかない状態だそうです。
8時間後に使う素材が手元になく、デザイナーに連絡がつかない
これは大問題です。
Kさんの頭の中に「干される、仕事がなくなる」という思いがよぎります。
とりあえずKさんは先方に「すぐに誰か代わりに作らせるか、△さんを見つけろ」と言って電話を切りました。
何か手はないか?
自分で作るしかないか?
間に合うのか?
ヤバイ、ヤバイ、いつもちゃんと届くから安心してた
どうしよう?
絵素材なしじゃ視聴者に伝わらない
どうしよう?
他にデザイナーを探そうにも深夜2時過ぎだぞ
デザイナーとか夜行性とはいえ、見つかるわけがない
諦めて自分で作り始めた朝5時にデザイン会社から電話があり、
△さんの居場所を突き止めたと
△さんは食中毒で入院しており、スマホの電池が切れた状態だったそうです。
作成途中のデータを入手して、仕上げて、納品データがきたのが朝8時
なんとか生放送には間に合ったそうです。
フリーランスってスリーアウトチェンジではなく、
一発アウトっていうケースが多いので、怖いですよね。
僕はフリーランスではないですが、聞いた時にゾクっとしました。
ちゃんとハッピーエンド?