1話~告白/第一回腐女子会議~
今日、俺 花吹 一は家族にちょっと大事な事を話す。それなりに緊張してるし少し怖い。ただ否定されるからとかそういう怖いじゃない…。
「ねぇ母さん、姉さん。ちょっと聞いて欲しいんだけど」
「ん?どした??」
「あのさ、俺バイかもしれない」
カシャン…
漫画のような反応をする母、手は少し震え焦った様に俺に駆け寄る。
「な…何個が聞きたいことあるんだけど…」
「うん」
「なんでそう思ったの?」
「この前の休みの日、母さんが描きかけてたBL読んで抜けた」
「…………なんかごめん」
「いいよ。別に」
「え?一バイなの?えっどっち?タチ?ネコ?」
「いや待って何それ」
いきなり専門用語を言われても分からん。
「好きな子はいるの?」
母さんが真剣な眼差しで聞いてくる。
「いや、……まだ」
「何今の間!」
姉さんの鋭いツッコミが入った。本当は居る。ってか付き合っている。ただここで言うのは質問の数が増えるだけということは分かっている。
「あーあーもういいだろ?以上!おやすみ!!」
これだから嫌だったんだ。報告をするのは…。
俺の家族は母、姉共に腐女子である。
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「娘よ。少し話をしよう」
「なんでしょう。 師匠」
俺の母、花吹 薫と姉、花吹 文は腐女子である。俺がいない間こうやってしばしば会議をしていることを俺は知っている。(彼女らはバレていないと思っている)
「我が息子もとい貴女の弟がバイ宣言をしている事について2つの観点から意見をぶつけたい」
「家族と腐ィルターですね。分かっておりますとも」
ちなみに腐ィルターとは腐った状態の目と思考回路の事である(らしい)
「とりあえず家族として…私は受け入れます。もちろんです。そして目覚めさせた罪悪感が少しあります」
両手を組み真剣そうに語る母を姉はこれまた真剣な目で見つめ返しながら母の手をガシッと掴み答える。
「確かに、しかし母さんのアレがなければ一が目覚めることは無かったのです。ならばもはやファインプレーとしか言えないと思う。グッジョブ母さん」
すっっっごいドヤ顔で親指を立てる姉さん。
「まぁここで家族としての話は置いておいて、問題はあの子がタチかネコかということ。そして相手がいるor気になる子がいる可能性があるということ」
タチとは男女の恋愛で言う男役。ネコは女役の事である。
「私はタチだと思う。そして相手は居ない!正確にはまだそこまでの域に達していないと思う」
「理由は?」
「タチであるのは最初の発言『母さんの漫画で抜けたから』って言うのを考えたら純粋に男の体が抜けるという事になるから。弟は昔からイケメンである。イケメンは攻め=タチであるべきだと私は思うの!」
バンッと机を叩き自分の意見を母に伝える姉、その図はまさにドラマで見た新入社員が自分の意見を通そうと上司に真っ直ぐ向けられる視線のようだった。
「ふふふ…甘いわね」
「な…なに?!」
……なんか本当にドラマ風になってきた。
「一は受けよ。あーいうタイプはね最初は分からないものなの、でも素敵で生意気な後輩に出会って色々開発されて素晴らしいネコに育て上げられるのよ」
「さ…流石」
ちなみに、俺にはもう恋人は居るし自分は彼女らの言うところのタチだ。相手は同じクラスのクラス委員で成績は常に上位の少し自分に自信がない(そしてそこが可愛い)ゲイ&ネコの子ではある。
そしてこの後話は膨れに膨れまくり彼女らはほぼ徹夜で語り合い俺の朝飯&昼飯の弁当はコンビニにお世話になった。