雫がぽたり
「あ」
雫がぽたり、スマホの画面を濡らす。出所を探すように視線を上に向ければ一本の木の一本の枝、そこからまたぽたりと雫が零れてきていた。急いでスマホを胸元におさえつければ、先ほどまで画面があった場所めがけて雫が落ち、そのまま道路を濡らしていく。
先ほどまで眩しく、力を入れていた眉間が数秒前から柔かったのは、この一本の枝に茂る葉が影を作っていたからだった。
「はあ、びっくりした」
ほんの数秒、耳に届く音楽を変えようとしただけだった。しかし丁度その時に影に入り、丁度その時雫が落ちてきた。
なんとも奇妙な偶然か、それともお天道様からのお叱りなのか。
笑顔とも言い難い、しかし確実に口角が上がる。耳へ流れる音楽は先ほどから変わっている。視線を枝葉に未だついている水滴に焦点を当てながら、袖口で画面を拭く。そのまま慎重にポケットへとスマホを入れる。
またぽたり、雫が落ちる。
「失礼」
誰に言うでもなく呟き前を向く。影から抜け出した顔に降り注ぐ太陽に、またも眉間に力が集中する。太陽の下、再び歩き出す。
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