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記憶は輪廻から外れる。  作者: *ラズ×ベリー*
三章
49/50

 8 〔 コウサイ 〕

 「『友ちゃん』の『眼球』って、何か『茶色』掛かってるよね?」


 と、三月 一が言った。此処は『フェアリー・アクティブズ・デザイン』の、社長室で在る。


 言われた陽藍は応えた。


 「嫌、茶色か? 俺には『赤み』掛かって見えるけど、彼奴の虹彩。」


 『三月、「目」の話しに「来た」のか?』とーー陽藍は言った。いいや、仕事しに来た筈なのだが。



 ✻  ✻  ✻


 定期メンテナンスと称して『兼息抜き』に来た三月を、玄関フロア迄送る為に、陽藍は其処に降りて来たが、玄関を出る前に呼び止められ、立ち止まった。三月も一緒に振り返った。


 ✙  ✛  ✙



 「『社長』っ待ってくださいっ、あの」


 「結婚してくださいっ」


 ×  ×  ×  ーーーーーーーー



 「ーーーーは?」



 新入社員、天見アマミ ヒカリは、研修内容の不明点を、社長高月を見付け質問したく、走り寄って来たが、何故か手前に居た『男』に掴まり、球根ーー嫌、求婚された。



 「離せ『お花畑チューリップ野郎ヤロウ』ーー誰よ『アンタ』?」


 天見 光は意外にドスの効いた容姿とは違う声を出した。『クール・ビューティー』台無しだなと、陽藍は思った。『秘書』候補、天見 光ーー少し『教育』は『要る』なーーと。


 玄関フロアの『真ん中』で、新人、光は、社長から説教される事となった、平和な光景で在った。


 後に『三月』光に成る彼女は、『言葉使い』、『来客に』対して、『此処は』会社の入口かおだと、懇々と説教されながら、今は未だ未来の自分を知る事はなかった。勿論それは、当たり前だが。


 三月の想いが『叶う』のは、此処から未だ『先』の話で在る。それは又別の『物語』だ。


 交際処か、未だ『デート』の約束にまでも、『行かない』のだから。先は長い様だ。



 ランチに出たかった麻宮と、光と同じく『新人』の冴木サエキ ユキは、後から合流した松元と共に『通り過ぎる勇気』と、『時間は有限』について議論していた。『昼休み、終わる』よね?と。


 社にタイミング良く戻った金沢 雅は、その日の『英雄ヒーロー』だった。


 正に『口才』だった様だ。


 『それを女口説く事に使えれば雅さんはもてるのにね』とは、陽藍は声には出さずに、心の中でだけでそう言った。今年の春も、金沢には春では無い様だった。


 光を気に入っていた雅は、自覚するより前に、三月に負けた様だなと。


 『やっと友美の事、諦めてくれそうだったのに』と。


 陽藍は二年半前、渡仏前に、入籍した友美を一応雅に紹介してから、行くつもりだった。友美と待ち合わせたが、少し遅れた。着くと先に『着いた』金沢 雅は、珍しくも『一目惚れ』した『友美』にアプローチしていた所だった。


 『珍しい』と思った陽藍だったが、『手遅れ』に為る前に間に入った。


 手遅れだった。



 金沢 雅は、失恋を引きずる。『損な性格』だなと陽藍は思うのだった。



 『ごめんね雅さん。』と。


 『ま、ヒカリも「オッサン」より、「若い」方が良いかな。』と、陽藍は三月を推す事にした。



 推さずとも、三月 一は、『必ず』手中にするだろうが。三月と光を見て、陽藍は『笑っ』た。


 笑われたハジメと、天見 光は、一瞬見惚れたが、不満そうだった。


 『嫌、陽藍さん、俺、今、「真面目」だからね?』と、三月が言ったので、高月 陽藍は思いっ切り笑い出してしまった。



 やっぱり三月は面白いと。 ×  ×  ×  ーーーーーーーー




 ✻  ✻  ✻



 「え?私の『』って、赤い………の?」と、


 友美が言った。横で三月は不貞腐れて居た。


 高月邸リビングは、夕餉ゆうげの時間だった。今日はハンバーグだそうだ。リクエストは三月。案外お子様味覚だ。



 どうせ肉なら和風おろし醤油ステーキが食べたい陽藍で在った。で、呑みたいと。


 陽藍は意外と和食派だった。煮物が好きだ。炊き合せでも良いが、そこ迄の我儘は言わない。


 肉より、案外魚派だ。ただ、友美が魚が苦手らしく、焼き魚も煮魚も出て来なかった。なので偶に陽藍が作った。白身なら友美も食べる。濃い味付けが苦手らしい。外食や惣菜だと美味く感じず、魚が苦手に為ったらしかった。


 肉も得意でないらしく、ステーキやソテーが余り出て来ない。然し、最近『鮭』が焼ける様に成った。切身で売っているからだ。陽藍はそんな『友美』を『見て』何だか可笑しくなった。


 『誰も真似出来ない様な絵を描ける癖に』、彼女は魚の切身ひとつに悪戦苦闘し、それでも陽藍の『為』に、苦手と『闘う』。


 炙ってない『網』で焼いて魚が取れずに崩してしまい、『残骸』にしたりしていた。勿論『残骸』を『頑張って』剥がして食べたが。


 最近はフライパンとホイルで包焼ムニエルきにしていた。


 『御前、其れ、正式には「蒸し野菜と鮭の蒸し焼き(×オリーブオイル仕立て)」だぞ』と、思いながら。美味ければ、いいかーーと。



 『簡単だしな』と。三月 一は『ハンバーグ』の『手間』を知らない。友美を今『忙しく』したのは、アイツなのになと、陽藍は苦笑した。



 聖 清氏からの『依頼しごと』は、順調な様だった。



 高月 陽藍はそう思って、ふと、壁に『飾られ』た、『枯蘭古』を見た。悪戯な妖精が華と融けて、その『華々』の色に『変わって』ゆくーー絵だった。表題タイトルを『新生』と言う。



 陽藍が態々『画廊』を通して『枯蘭古』に依頼した『絵』だ。『妖精』を『描いて』みてくれと。



 陽藍はそうして今、なるべく友美に『描かせて』いるーー師匠とオーナーを巻き込んで、『個展用』の『作品』を『描かせて』いるのだ。



 当人に『内緒』のままで。



 『展示』スペースを建築している。『御披露目』は『湖泉 枯蘭古』で行くーーと、もう決めたのだ。サプライズに、咲之暁に、『友美・・を描いて』欲しいーーと、依頼してある。



 枯蘭古ではない、『友美』そのものを、『えがいて』欲しいーーと。



 どんな友美が出て来るのか、とても楽しみで在る。



 「『ただいま〜』腹減った〜『友』ちゃ〜ん」と、


 かずいちがまるで友美が『嫁』な様な『掛け声』で、入って来た。おかえりと言った陽藍は一応『忠告』しておいた。



 「『かずいち』やっぱり『お前』は、『自分』の『嫁』を貰え。お前、雅さんと違って『もてる』んだから。」と。



 「?!?」


 帰宅早々かずいちは目を白黒させた。



 ✻  ✻  ✻



 「は? 友ちゃんの『目』が『赤い』?」


 ハンバーグを口に運びながら、甲田 一一は、そう言った。



 「昔の『兎』って、瞳が赤かったんだよな。何で友美が『兎』に『見えた』か、考えたんだよ。」


 「ーーお前は『何時代』のひとだーー、陽藍。最近のはみんな『品種改良』とかで赤くないだろ。なあ? ミツキ君? 」


 「ーーーーはあ、ーーーひかりちゃん。」


 三月 一はうわの空だった。


 かずいちが『どうしたの?』と聞いて、陽藍が『恋』と言った。意外にもハジメは『愛だよ……』と応えた。



 テーブルに伏せて『はあ。どうして今迄出会えなかったんだ……』と、ぶつくさ言っていた。


 テーブルを拭きたい友美に『邪魔』と言われながらも。



 ✛ ✙ ✛



 「はあ。」


 天見 光は溜息を吐いた。チューリップ野郎を思い出して。大馬鹿だと思ったが、何故だか彼が『懐かし』かったのだ。『変なの』と、光は思った。


 光は知らないからだ。『ひと』に『前世』が『ず』在るーー事を。


 例えば『一目惚れ』等と言う『運命』の様な出会いに、『前世』の『記憶』の『欠片』がーー関わってても、ひとは、気が付かない。



 記憶は『輪廻』しないのだから。



 魂の輪廻に『記憶』が在っては『混乱』するーーだから、『人』は、前の『記憶』は置いて来る。『記憶』の『向こう』に。



 時々、思い出して『しまう』ひとが『在たら』それは、『神』なのかもしれないーーとは、誰も知らない。『神』以外は。



 『彼等』は『人間』なのだから。『今』は『未だ』。




 友美の『赤い』虹彩も、陽藍の『深い藍い』虹彩も、ずっとずっと前に『在った』前世の『名残り』だとは誰も思わない。それが『現代』と言うものだから。



 ヒカリが知るーー『覚醒める』訳もないのだ。前世で『三月』と『出会った』事等は、今は未だ知らないのだ。



 ✾  ✾  ✾



 『際立って美しいーー』輝きの事を、ひと際『優れて』目立つーー美しい輝きの其の様を、其の輝きを『光彩』とひとは、呼ぶーーだろう。



 陽藍は、友美の『瞳』の其の薄赤色を、『光彩』だとーーそう思った。



 あの赤色の虹彩の輝きは、其れだろうと。『ひかり』の『いろどり』だと。




 此れからも護ろうと。見守ろうーーと。そして、『救け』て、貰おうと。



 友美が自分の横で、笑える様になった様に、陽藍も友美の横ならば、『笑って』居られるーーと、そう思った。





 間違いなく、彼女が好きだった。愛情だろう。『欠落』していなかったのだと思えた。




 ✻  ✻  ✻




 多分陽藍は知らない。友美は陽藍が『思うより』ずっと、陽藍の『事』が、大事だった。



 焼けない『魚』を焼ける様に『成る』位には。苦手な魚と『格闘』してでも、『煮魚』を攻略『する』位には。義母、花撫子に、秘密で『伝授』を申し込む『位』には。



 高月 陽藍の事が、大好きだった。




 言葉で言えない不器用なだけで。


 陽藍の予想よりもっとずっと『格上』の、不器用だった。




 後に、気付く事になるが、今は未だ、これで『良い』だろう。



 未だ、『新婚』は、始まったばかりだろうから。



 何しろ二人の『交際』期間等、有って無い様な、ものだった。交際より前に『同棲』したのだから、仕方無いだろう。その前に、『求婚』だったが。




 そのうち笑い話にしようと、陽藍は思った。その笑った顔の方が余程『光彩』だった事等、そう思った友美しか知らない。



 光り輝いて美しい優しいその『笑顔』が向けられるだけで、筆を走らせる『感情』が沸き上がる事等、きっと陽藍は知らないが、友美はそれで良かった。



 横でなくとも、すぐ『側』の、此の『位置』でも、幸せだった。



 ✾  ✻  ✾

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