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悪役令嬢は魔王様の花嫁希望  作者: 星 くらら
第四章 アダルトに突入です
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80 波乱のバースデーパーティー(2)

 少し乱暴にベッドに降ろされる。直ぐにリドが身体の上に伸し掛かってきて、顔の横で両手首をシーツに縫いとめられた。

 見上げると、私を見下ろすリドの表情は微塵も甘さがなく、冷たい瞳の中に情欲の炎を燻らせていた。


「リド? なんか……怒ってる?」

「あ? ……別に怒ってねえ」

「でも、なんか……」

「落胆してるだけだ。お前もそこいらの発情してる女共と一緒だったのかってな……」


 ………………は? 発情ぉ!?

 な、なんなの? その言い方……ッ!


「……そういう女に、思い切り煽られてる自分にも腹が立つ……」


 だって、好きな人に求められて嬉しくない方がおかしいでしょ? リドの考え方の方がおかしいわ。


「は、発情とか、そんな言い方しないで……ッ!」

「……好きな奴としかやらねえって言ってたクセに、独り身の()()にハメ外したくなったか? 他の男の味も味わっときてえって? そりゃ俺は適任だよな。他国に帰っちまえば後腐れもねえし、ナニもデカいし、アレも上手いって評判みてえだしな」


 ………………え?


「な、なにを言ってるの?」

「残念だったな。知らねえのか? ログワーズの男の性欲の強さ。……明日は大事なパーティーなのに足腰立たなくなっちまうだろうなあ」

「……ッ痛!」


 ギリッと、手首を握った手に力を入れ、リドは私の耳に唇をつけて熱い吐息と共に囁いた。


「たっぷり調教してやる。……なんにも知らずに、お前を抱いた時のジークフリートが見物だな」


 想像して、私はぶるりと身震いすると、リドに耳朶を甘噛みされた。


「ひゃぁんッ……! ぃ、いや……ッ!」


 全然ッ!! 想いなんて通じてなかったァァァーー!!!

 それなのに変な声出ちゃったよォォーー!!

 このままじゃ、気持ち良くて流されちゃう。抵抗したくないけど、抵抗しなくちゃ!


「ちょっと待って! 離してリド!」


 私は思い切り手足をばたつかせたけれど、リドはびくともしない。でもダメだ。こんなリドに抱かれる訳にはいかない。絶対ッ!!


「ジークフリートの名を聞いて急に抵抗しやがって……お前から抱かれに来たんだろうが」


 ほらやっぱり! なんか変な誤解してる! なんでここで陛下の名前が出てくるのよ。


「リドに抱かれるのとジークフリート陛下は関係ないでしょ!」


「……そうかよ。あくまで俺は()()()だったな……だが、閨で他の男の名前なんて出してんじゃねえぞ」


 先に出したのはそっちでしょォォ!!

 リドは、私の両手首を頭の上で左手で一纏めにして押さえつけた。


「あ……ッ」

「……胸も可愛がられたのか? 道理でデカくなったわけだ」


 そう言いながら、リドは私のドレスの胸元に手を掛けた。


 ビィィーーッ……!!


 布を引き裂く音がして、私は恍惚から引き戻された。見ると、リドがドレスの胸元を破ったのだというのがわかった。無残に引き裂かれた淡い薄紫色の布を、リドはベッドの脇に放った。


 嘘……。

 リドがプレゼントしてくれた大事なドレス……。


 プツン……ッと、ドレスと共に私の中で何かが切れた音がした。


 私は渾身の力を込めてリドの延髄(えんずい)に踵を落とす。だがそれは命中する前に、パシッと、いとも簡単にリドに片手で足首を掴まれて封じ込まれてしまった。


「……俺にこの程度の攻撃は無駄だ。お前は本当に相変わらず足癖(わり)ぃ…………なッ!?」


 私を見下ろして、リドがギョッと驚いたような顔をした。でも、そのリドの顔はもう歪んで見えない。ボロボロと後から後から涙がとめどなく流れるからだ。多分ぐしゃぐしゃで酷い顔をしているのだろう。リドが若干怯んでいる……ように見える。


「おま……ッ……何でそんな泣いて……」

「リドのバカぁ……」

「……ッ!?」


 リドの拘束が解け、自由になった両手で露わになってしまった胸を隠す。涙が止まらず、ヒックヒックとしゃくり上げた。そして、のろのろと起き上がりベッドから降りてリドに背中を向けた。


「わ、わたし、初めてなのに……こんなリドこわい……大事なドレスも……やぶってひどい……」

「………………は? はあ!? ()()()ェ!?」


 私はこくこくと頷く。


「嘘だろ? だってお前、ジー……トーリとヤッたってヴィヴィが……」


 私はフルフルと頭を振った。

 そうか……ヴィヴィから聞いて、私が処女じゃないと思ったから、乱暴に抱こうとしたの?


「……みんなが『処女だ』ってバカにするから悔しくて……トーリとは言ってないけど、ヴィヴィたちが勝手に解釈してくれただけ。トーリにはもうちゃんと謝ってる」

「じゃあ、お前まだ……ホントに処女……なのか?」


 私はリドに背を向けたまま、こくりと頷く。相変わらず涙は止まらない。


「十五歳()()の夜だから……処女のまま成人しちゃうと、魔王になっちゃって、もうリドに抱いてもらえないから……そうしたら、私一生処女のままなの嫌だし…………私、ずっとリドのこと好きだから……リドとの約束を果たしに……来たのに…………」

「………………え?」

「……でも、もういい。もうヤダ」

「ちょ……ちょっと待て! こっち向けアリス!!」


 “アリス”と呼ばれて、ピクッと一瞬反応してしまったが、振り返ることはしなかった。


「……私もリドに()()()って言った! でも待ってくれなかった」

「アリス!!」


 私は乱れた髪とドレス、裸足のまま、リドの部屋を飛び出した。

 部屋を出ても誰も居ず、ホッと安堵の溜め息を吐いて隣りの自室に戻った。

 破れた服も、靴も、アップルパイもティーセットも、ワゴンも、全部リドの部屋に置いてきてしまった。


 ……大泣きして……呆れさせちゃったかな……。


 ずっと背中を向けていたから、リドがどんな表情をしていたか分からない。

 閨で怖がって大泣きして飛び出していくなんて、“子どもだ”と呆れさせたかもしれない。


 私は自室の扉に鍵をかけた。のろのろとした動作で、リドから貰った無残に破れたドレスを脱いでいく。夜着に着替えて、ドレスをクローゼットの大きめの帽子箱にそっと隠した。

 ベッドに潜り込み、さっきまでのことを思い出す。

 リドには、あんなにいっぱい酷いこと言われたのに、やっぱり嫌いになれない。……滑稽だわ。


 リドの、私を見下ろす熱い眼差しとか……初めてのキスとか……。(この際、口移しはカウントしない)

 震える程エロくて色気半端なかった……。あんなリドを前に、よく流されなかった。偉過ぎる私。

 頬に集まる熱に、ドキドキと高鳴る鼓動。


「好き……リドが好き……」


 声に出すと、泣きそうになった。また、自覚してしまった。

 興奮した身体を鎮める術がわからず、熱を持て余したまま、その日はなかなか寝付けなかった。


 そうして、私は十六歳になった。



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― 新着の感想 ―
[一言] アリス…誕生日おめでとう…このタイミングでリドの誤解が解けるなんてなんてバッドタイミングな。゜(゜´ω`゜)゜。 リドがこの後どういう行動に出るのかハラハラドキドキ…次回更新も楽しみにしてま…
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