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悪役令嬢は魔王様の花嫁希望  作者: 星 くらら
第四章 アダルトに突入です
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63 謎とドレスと秘密の大暴露(1)

 王都に居ることが多く、滅多にシャーリン領に帰って来ないお父様が珍しく帰宅した。

 前世の記憶が戻ってから暫くして、お父様の中で私が使()()()()()に入ったらしく、城の切り盛りを任されるようになってからは、ほとんどシャーリン邸でお父様の顔を見ない。

 屋敷に戻らない間は、王城で公務をこなしていたのだと思っていたが、もしかしたらユリウスが監禁されていた港町ラグのシャーリン別邸で過ごすこともあったのかも。

 急なお戻りは、十中八九ユリウスのことが耳に入った所為であろう。どこからお父様のお耳に入ったのやら。

 まあ知られているなら、こちらも都合がいい。【迷鳥】では触れていなかったユリウスの謎が解けるかもしれない。


 こちらが出向く前に、お父様の方から“応接室で待つ”と侍女を通して伝言が来た。

 久々のお父様との対面……緊張します。

 応接室をノックすると、中から「どうぞ」とお父様の声が聞こえたので、私は「失礼致します」と言って部屋の中へ入った。


 応接室のソファに座り、優雅にお茶を飲むお父様に淑女の礼をする。

 お辞儀をする際にこっそりと盗み見たお父様の顔色は、相変わらず読めない。笑っているようでもあり、怒っているようでもある。さて……どう切り出すべきか。

 それにしても、本当にうちのお父様は若い。

 年齢は肌に出ると私は思っているが、肌年齢は十代じゃないかな? というくらいピチピチしている。髪の毛もフサフサのサラサラで今年で三十七歳にはとても見えない。逆サバ読みではなかろうか。髪型も金髪のオカッパ頭で、年相応じゃないのが悪いのか。どっからどう見ても(わっか)い兄ちゃんだ。出会った(私が前世の記憶が戻った)時から、容姿が全く変わっていない。

 うーん……この人魔女かな? 魔術でも使ってんのかしら?


 私がお父様の容貌について思いを巡らせていると、お父様がニヤリと口の端を上げた。……怖いです。


「姫さ、僕に何か隠してるでしょ?」

「はい。隠してます。ユリウスのことですわよね?」


 誤魔化すだけ無駄なのでとっとと白状してしまうと、私の反応が予想外だったのか、お父様はパチパチと瞬きして私を見た。


「へぇ。もう少しとぼけるかと思ったけど、潔いね。あの子返してくれる? 僕のなんだ」

「それは出来かねます。彼をお父様にお返ししたとして、彼の処遇が危ぶまれますから」

「……姫、言うようになったね。自分で権力持つと変わるもんだねえ。パパ悲しいよ」


 “悲しい”と言いつつ、笑っているからホント怖いです。

 初めてお父様に刃向かってしまい、内心焦りまくりで心臓がバクバクいってます。


「彼をどうする気ですか?」

「……ユリウスから聞かなかった? うちの養子にしようと思ってるんだけど。もっと早くこの屋敷に連れてくるつもりだったんだよ? ホントは」

「え?」

「あの子が七歳の時にさ。姫と一緒に可愛がってあげようと思ってたんだけど、姫が突然いい子ちゃんになっちゃったから連れてくんのやめたんだよ。遊べないでしょ?」


 お父様が再び、にぃと口の端を上げる。


「いい感じに壊れたからさ、そろそろ連れて来てもいいかなぁって」


 背筋にぞわりと悪寒が走った。お父様……この八年間、ユリウスに一体何をした。

 “壊れた”って……。一見、そんな風には見えないのに。あのオドオドとした感じは演技だということ?


「姫の保護じゃ不十分なんだよね。公の場に出して護らないと、あの子すぐに消されちゃうよ」


 とても物騒なことをさらりと言いますね。でも彼に迫る脅威は、もうすでに身を持って経験しています。


「……彼は何者ですか?」

「何者だと思う?」


 私は、先日の事件から導き出した自分なりの答えを口にする。


「……ユリウスは……イザベラ王太后様の私生児ではないかと考えます」

「ご名答。さすが姫」


 ……やっぱり。


「あの女はさ、自分の地位を確固たるモノにしたくって、浅ましくもジークフリートの他にもう一人産もうと思ったんだよ。王様が種無しなの知ってるくせにさ」

「えっ……?」

「ジークフリートで上手くいったから、次も上手くいくと調子に乗ったんだろうねー。でも自分に似ちゃって失敗したらポイッだよ。でもね、闇になんて葬りさらせないよ……」

「え? え? えぇ!?」

「あれ? 姫、知らなかった? ダンテはね、種無しなんだよ。ジークフリートも王家の血を引いてないの」

「えっ…………えぇぇぇぇぇぇーーっ!!!?」

「多分ダンテも薄々気付いてんじゃないかなぁ。薬に逃げてたし。ジークフリート本人は知らなそうだけど」


 は、はぁぁぁーーーー!?

 ちょっ……ちょっと待ってッ!!

 え? ジークフリート陛下が王族の血を引いていない!? って、えええぇぇぇぇーーッ!?


「ほ、本当ですかッ!?」

「うん。あの女が権力欲しさに平民の中からロイヤルブルーの瞳を持つ男を探してジークフリートが生まれたんだよね。つまり、真の王族の血を受け継いでるのは、ダンテと姫だけなの」


 突然のカミングアウトに、完全に受容キャパがオーバーしています……。


「な、何故今、そんな話を私にしたのですか……?」


 知らなかった……知りたくなかった……そんなこと。

 国家機密の超極秘情報。知らなければ平穏でいられたのに。

 そんなの【迷鳥】の設定には無かったけどぉーーッ!?

 重い……重過ぎます、お父様……ッ!! そんな重い荷物、私背負いたくなかったです。


「何で姫に話したかって? 何でだと思う?」


 もしかして……もしかしなくても……。


「あの女は、姫とジークフリートとの婚姻で、自分の不義の帳尻を合わせようとしてんだよ。あの女の策略に乗るのは不本意だけど、姫以外に王家の血を残せる者が居ないんだから、しょうが無いよねぇ」


 お父様……私が逃亡資金を貯めていることをご存知なのですね……。


「ジークフリートとの婚姻から……この国からは逃げられないよ。姫」


 私は、生まれた時から……否、生まれる前から、巨大な蜘蛛の巣に雁字搦めに捕えられていたのだと……思い知った。



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