表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は魔王様の花嫁希望  作者: 星 くらら
第四章 アダルトに突入です
57/88

56 僕、登場!(1)


 八年後、遠い乙女ゲームの世界で……




 シャーリン公爵令嬢アリス・ローズ・シャーリン(以下アリス)は、九歳の時シャーリン領の道路整備に着手。整備は公共工事として職につけない生活困難者を雇い入れる。

 四年の間にシャーリン公爵家のある首都ナーディアから、港街ラグ、ミストラスの街までの道を整備し道々に関所を設置。治安が悪く見放されていたミストラスだったが、現在では繁華街として活気があり、人気の観光地になっている。

 関所には用心棒などで生計を立てている者やならず者を教育、育成して警備にあてている。彼らを立派な騎士として育てたのは、現在【蒼龍の騎士団】の団長を務めるカーライル侯爵家長男ガイ・ライオネル・カーライルで、王都に設立された育成所から優秀な成績を修めたものが関所に送られている。

 アリスは更に道路整備事業を拡大する。シャーリン領から王都への道を整備し、半年前に無事開設させた。これについては反対派など意見が分かれたが、王都も流通などの面で利益が増大し、今では感謝の声しか聞こえてこない。

 現在は治水事業にも力を入れている。

 また、アリスは自領にて“福祉”という制度を提案する。今までも貴族の“慈善事業”は行われていたが、“福祉事業”は人々が受ける当然の権利として、病院や教育機関など、今まで一部の裕福な者しか受けられなかったものも全ての者が利用できるようにと動いている。

 その数はまだまだ少ないが、教会とは別に孤児院、養護院なども設立され、飢えや貧困による死者が激減している。

 孤児への教育や生活の改善には特に力を入れていて、アリス自ら出向き、子ども達に勉学を教えたり、子ども達と戯れたりする姿が度々目撃される。アリス曰く、『子は未来の宝』だとか。

 塩やお茶、薬など、シャーリン領の特産品は他領や他国から重宝されており、それを輸出して、ここ八年間でかなりの利益をあげている。その生産には孤児院出身の者や戦争で家族や家、財産を亡くした者、他国で虐げられた移民者を多く受け入れている。

 又、アリスは自領に宝石や魔法石の鉱山を探り当てた。これは、アリスが持つ王家の血筋の証である“真眼”と呼ばれる能力によるもので、貴重な鉱石のある場所が特定できる。鉱山によってもたらされる利益は未知数である。


 二年前、アーネルリスト国王であるダンテが突然の退位宣言をし、国王の座を第一王子であったジークフリートに譲った。それによりジークフリート王子は齢二十歳でアーネルリスト国王となり、その手腕を大いにふるっている。

 現在、ダンテ元国王は離宮にて隠居生活中。イザベラ王太后は隠居に反対し、ダンテ元国王と別居状態で王宮に留まり、ちょくちょく政治に口を出している。

 王妃不在の今、ジークフリート国王陛下と、婚約者であり国民の間で人気が高まるシャーリン公爵令嬢アリスとの婚姻が強く望まれている。王都においては、今月にも十六歳……成人を迎えるアリスとの婚姻が成立するのではという噂が流れ、街はお祝いムードに包まれている。






 ……あれ?

 今頭上に某ハ●ウッド映画、ス●ーウォー●のオープニング・クロールを彷彿とさせる説明文ような文字が、壮大な音楽と共に空一面に現れて、流れるように消えていったように見えたけど……。

 気のせいかな?

 気のせいよね。

 そう、ちょっとこの八年間に想いを馳せていたから、幻でも見たのね。


 この数年間で、見事にシャーリン家の財産を何倍にも増やすことに成功しました。……あくまで隠し財産ですが。

 教育や兵力強化にも力を入れてきたので、優秀な人材も揃っていますし、いつでも我が王リディア・ヴァン・シュナイダーを担いで国一つぶんどる用意はできています。

 ……ここまでくるのは長かった! 文字にすると簡単ですが、王宮やお父様の目をかいくぐっての資金集めに軍強化。更に領民の生活も改善。

 流通が軌道に乗る前や、“真眼”が鉱山を発見できるということを知る前までは、私のドレスや宝石を売ったり、秘伝の特効薬を量産してみたり……と、こそこそと地道に基盤を作ったりして。

 だから私の無駄に多かったドレスは新調もほとんどしていないこともあり、今では必要最低限のものしかない。

 まあ、この世界は十五歳で社交界デビューなのだが、この一年は王太后様のお茶会くらいにしか出ていないので全く問題がなかった。

 夜会のお誘いは来ていたが、決まった婚約者、しかもそれがこの国の王様ということで、夜会免除。勿論、苦手なダンスやマナーを疎かにしていたわけではないし、それどころか叩き込まれてかなり上達しました。

 ダンスへの苦手意識がなくなったのは……あの時の約束の通り、ヴィヴィとリドがレッスンをしてくれたからだと思う。……リドは『なんで俺が』と納得できないといった顔で渋々教えてくれていたのだけれど。

 残念ながら、未だにリドの記憶は戻っていない。記憶を失くした最初の頃よりはずいぶん軟化したが、まだなんとなくリドとの間に一枚、分厚い壁を置かれているような気がする。

 この八年間、どんなに頑張ってもリドとの出会いからの数週間には敵わなかった。

 リドの婚約者の記憶を奪ってしまったというのが大きいみたい。リドは私をなかなか許してくれない。


 この八年間で、私はずいぶん背が伸びた。今では165センチあり、客観的に見ても出るとこ出て、締まるとこ締まったかなりのナイスボディーだ。さすが十八禁乙女ゲームの悪役令嬢。色気ムンムンです。

 悪役令嬢としても、貴族の間ではかなり悪評を轟かせている。お父様の政敵を呪術で追い落とし向かうところ敵なしだとか、周りにいい男を侍らせていい気になってるだとかなんだとか。ジークフリート王の婚約者、王妃候補というのをいいことに、夜会には出ずとも気に入った男を屋敷に招き入れて複数の男と肉体関係を持っているだとか、爛れた性生活を送っているだとかなんだとか。

 冗談じゃありませんわ。

 私、こう見えてまだ処女でしてよ!!

 ……この歳で処女なんて、この世界では異常なことですが……。

 



「……おい。これどうなってんだ? ……クソッ……結べねえ」

「アリス様、私のクラヴァットも自分では結べないのでアリス様が結んで下さい」

「アンタ達、クラヴァットも自分で結べないの!? もーアリスちゃんを困らせるんじゃないわよ! しょーがないわね。アタシがやったげるわ」

「いや、触らないでください。ジャンヌ。私はアリス様にやってもらいたいので」

「はあ? てめえは自分で出来るだろうが。クソアル」

「アリス。俺のカツラはこれでいいのか? つけ髭も曲がっていないか?」


「……お願いだから私を囲んで好き勝手喋るのをやめてくださらないかしら?」


 私の周りを物凄く背の高い男達がズラリと壁の様に取り囲み、まるで私を外界から遮断しているような感覚に陥らせる。

 その中でも一際背の高い男が苛立たしげに私を見下ろして凄んでみせた。


「おい」

「わかってます。ほら、こっち向いてくださいませ」


 未だに私のことを名前で呼ばないリドの首元に手を伸ばし、私はちょっと背伸びをして彼のクラヴァットを結ぶ。

 リドに近付くと、男らしい彼の匂いに鼻を擽られてドキッと胸が高鳴った。


 この八年間で一番変わったのはリド。中身もさることながら、外見が……。

 私と変わらない位だった身長は、ガイと同じ位……寧ろガイよりも高くなってしまった。身体つきも神話の神々の彫刻のような逞しい体躯、芸術的な肉体美に。

 少女のようだった容貌をしていたのが嘘のようだ。

 昔から美しい顔立ちだったけれど、切れ長の目元、長い睫毛、高い鼻梁の落とす陰影の下には形の良い薄い唇。圧倒的な男が匂い立つ美貌。オッドアイも神秘的な美貌に華を添えている。

 艶やかな赤い髪は、少し長めのサイドの髪を自然に後ろに流していて、セクシー&ワイルドを演出。

 ……恐ろしいほどの美丈夫(イケメン)に成長してしまいました。

 しかもなんかエロい。

 十九歳とは思えない、アルフレッドも顔負けの男くさい淫靡な雰囲気を漂わせているのだ。

 

 なんだろう。これは、もうすでに魔王様として覚醒してしまってるんじゃなかろうか。

 ……というか、魔王というより夜王。王様というより夜の帝王。

 

 屋敷中の侍女、メイドがリドのエロフェロモンにヤラレて彼にメロメロだ。道行く女性もリドとすれ違うと目をハートにして必ず振り返る。

 そういう私だって、リドに近付くだけでドキドキだ。ただでさえ昔から好きなのに、こんなにカッコよくなっちゃったらもう! もう!!

 昔からずっと好きだから、欲目でカッコよく見えているというのだったらどんなに良いだろうか。

 モテまくりで私以外の女の子に手を出しまくるリドをずっと側で見ていて、私は八年間ずーっとヤキモキしまくりだ。

 くぅ……この超絶美形魔王(仮)様め……。


「お、おい! く、苦しいッ……」


「ハッ! ごめんなさい。つい、締め過ぎてしまいましたわ」


 私は無意識でリドのクラヴァットを結ぶ手を思いっきり締め上げていた。


「……お前、俺を殺す気か?」


 うっ! ち、近い……ッ!!

 し、しかも耳……ッ!!


 綺麗で男らしい顔が間近に迫ってきて耳元で囁かれ、私は思わず仰け反った。

 絶対、私がその声に弱いの知っててわざと耳元で囁いたとしか思えない。

 顔に熱が集中していくのがわかる。……私の顔、今真っ赤になってるに違いない。


 そう、なんと言ってもその声。

 女の子のように可愛らしかったリドの声が、十三歳頃から変声期が始まり、今ではすっかりハイパーイケメンボイスに!!

 こんな腰に()る色っぽい低音ボイスは、前世で大好きだった一推し声優“小野寺玄樹様”を彷彿とさせる。

 特にここ最近は、悪役(ヒール)を演らせたら右に出る者の居ない小野寺様の演じた、アニメ【斬撃のガンゲリオン】の敵の総大将【シャーク様】の艶のある声にそっくりになってきて、リドに身近で囁かれると腰が砕けてしまう。ただでさえ惚れてるのにぃ!

 そういえば、プレイする事なく終わった【迷鳥】の続編に小野寺様が演じるキャラクターが居ると知って小躍りしたっけ……。どんなキャラクターだったのかな。やっぱり悪役(ヒール)かな。


 


「これぐらいじゃ殺そうとしても死なないでしょう? はい。できたわ」


 結んだクラヴァットをポンッと指先で軽く叩くと、リドは顰めていた表情筋を緩めて、フッとはにかんだ。


「サンキュ」


「うん。リド、がんばってね」


 私も思わずはにかむ。

 こういう他愛ないやりとりが嬉しいんだなぁと、しみじみ思う。

 美形のはにかみの破壊力、半端ないですけどね。


「あ、リド。その目立つ髪色と目の色、魔法で変えてね。今回は脇役なんだから、アルフレッドより目立っちゃダメよ」


「わかってる。去年みてえなのはうんざりだからな」


 リドは魔法の勉強をコツコツしてきたおかげで、他人の魔力を無効化しつつ、自分は簡単な魔法なら使えるというスキルを手に入れた。

 今までは自身の内に秘めた強大な魔法のコントロールができなかったが、魔剣の記憶を身体が覚えていたようで、魔力をコントロールするコツを掴んだらしい。

 これは魔剣を教えた私のおかげよね。感謝していただきたいわ。

 このまま修行していって強力な魔法も使えるようになれば、リドは間違いなく向かう所敵なしの国内最強の魔法使いになるだろう。

 髪色を変えたりとか、いろんな魔法が使えるなんて、やっぱり魔王の素質があるのよね。

 私なんて、魅了(チャーム)の魔法くらいしか満足に使えないのに。


「ア、ア、アリス様……わたしやっぱり無理です……き、緊張しちゃっt&○@」







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ