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悪役令嬢は魔王様の花嫁希望  作者: 星 くらら
第二章 これは恋か?
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39 君のためにできること(1) ※リド目線

 俺達はシャーリン領の外れに住むという呪術師に会う為、早朝から馬車に揺られていた。

 流石に馬車一台で行くには狭すぎると思ったが、トーリとアルは用事があるとかでジャンヌに馬車を借りて王都に帰って行った。そりゃあな。一国の王子が何日もフラフラしてらんねぇだろ。

 俺は馬車の窓際に座り頬杖をついて、外の風景を見るフリをしながら、チラチラとアリスの様子を伺い見る。

 アリスは始終ご機嫌でニコニコと愛らしい笑顔を振り撒きまくって、周囲の不審な目を集めていた。

 そりゃあご機嫌だろうよ。

 あの後、俺のベッド占領してグッスリ寝てくれたんだからな。

 俺はもちろん一睡もできなかったがな。惚れた女が隣で眠ってて、寝られるわけねーだろが。

 昨晩のことは自分の都合の良いように見た夢だったのではないかと心配になる。

 俺は再び窓の外の景色に目をやって、昨夜のことを思い出した。





 満面の笑みだった。

 蕩けるような……幸せそうな……まさに“天使の微笑み”で、アリスは俺の告白を受け止めた。

 そんな笑顔を向けられたのは生まれて初めてで、俺の心臓は痛いくらいに高鳴った。顔も紅潮していたに違いない。

 そして俺は、アリスに想いの丈を全部ぶちまけた。

 この際だから、洗いざらいだ。


『いいか、一度しか言わねぇからよく聞けよ』


 俺はアリスの両肩を掴みながら、真剣な眼差しを向けた。


『う、うん』


 アリスも少し緊張したような面持ちを俺に向ける。

 

『俺は、お前が好きだ。こんな感情、初めてだからよくわかんねぇが、他の誰にも感じたことねぇ感情……信頼とか、友情とかを超えてる。……お前を愛してる……』


 アリスの瞳が驚きに見開かれて、揺れた。


『アリスが俺の嫁になりてぇってだけじゃなくて、()()アリスを嫁にしてぇ。だから国を取り戻して王になるのはお前の為だけじゃねぇ。自分の為だ。()()望みだ』


『は、はい!』


 アリスは真っ赤になって、俺にぎゅうっと抱きついた。


『私も……二十年と八年生きてきて……こんな気持ち初めてだけど、ちゃんとわかってる』


『あ? 二十年と八年?』


『……間違えた、八年だけだった』


『…………』


 また出たか……。残念脳……。


『私もこんな感情初めてだけど、リドのこと愛してる! ……と思う!』


『なんだその“思う”っつーのは』


 俺は笑って、アリスの頭の後ろをクシャリと撫でた。


 この俺がここまで言われて、こんなことされても歯止めが効いてるのは……こいつの幼さだ。

 時折びっくりするほど大人びて見える時もあるが……まだまだだよな。

 

『……なあ、アリス。一応聞いとくが……お前処女だよな?』


 俺のその言葉に、アリスは俺から飛び退いた。熱した鉄みてえに顔を真っ赤っかにして、非難めいた眼差しで俺を睨む。


『あ、当たり前でしょ! 私まだ八歳だし!! ……それに好きな人としか、そういうことしたいと思わないもん。今言ったけど、私も男の子を好きになったのリドが初めてなんだから!』


 アリスの剣幕に少々面食らっちまったが、必死なとこも可愛いくて、つい笑ってしまった。


『なんで笑うの?』


『いや、やっぱりお前変わってんな。好きな奴としかヤらねぇとか。……まぁ、アリスのそういうとこが好きなんだけどな』


 もう一度、アリスを抱き寄せる。俺の方が若干高いが、ほとんど背の高さに差がないせいで肩にコツンとアリスの顎が当たった。

 ……クソッ。悔しいな。


『アリス、お前が十六歳になる前の晩までお前の気持ちが変わらずにいたら……俺はお前を抱く』


『へっ!?』


 耳元でアリスが素っ頓狂な声を上げた。そりゃそうだよな。突拍子もねぇ話だ。


『そん時、お前の処女を俺にくれよ……いいか?』


『…………うん』


『……それまで誰にも奪われんじゃねぇぞ』


 ……俺が誰にも奪わせねぇけどな。


『うん』


 気付いたことがある。

 アリスの言葉遣いだ。

 アリスは俺と喋る時だけ、くだけた喋り方になる。

 それが、俺にだけ心を許してるような気にさせて……優越感で身悶えそうな程、興奮した。






「兄様もニヤニヤして……お二人何かありました?」


 ヴィヴィの声で我に返ると、狭い馬車の中、ジャンヌとクラリスの視線が痛かった。

 特にクラリスの奴には、アリスと同室で一晩過ごしたことがバレて(つーか、アリスがバラした)敵意剥き出しの突き刺さるような視線を送られた。


「何もねぇよ」


「ええ。なにもありませんわ」


 同じように答えたアリスと目が合って、何となく照れ臭くて俺は思わず目を逸らしちまった。

 



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