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悪役令嬢は魔王様の花嫁希望  作者: 星 くらら
第二章 これは恋か?
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32 告白(1) ※リド目線

「それでね、リド。私どうやら、元王女様を囲ってる悪女って噂が立ってるみたい。知ってた?」


 アリスが、宝石のような碧い瞳で上目遣いをして俺を覗き込んでくる。


「ああ。そうみてぇだな」


 薔薇の庭園に置かれたテーブルに着き、優雅なティータイム。

 その囲われてるとされる元王女様は、アリスの隣りに腰掛けて、アリスの作ったアップルパイとやらを旨そうに頬張っている。

 これがすげぇ美味い。

 俺の大好物になった。

 初めて食べた時に、アリスに気に入ったことを気付かれたらしく、それ以来ちょくちょく作ってはご馳走してくれる。


「あ、リド。おかわりいる? たくさん作ったからいっぱい食べてね」


「………………」


 アリス自らサーブしてくれ、作りたてのツヤツヤとしたアップルパイの横にたっぷりと生クリームが乗った皿が再び俺の目の前に置かれた。


「…………チッ」


「え!? なんで舌打ち!?」


 俺の為にいろいろやってくれようとするアリスが、いじらしくて物凄く愛らしい。すげぇ愛しい。日常のちょっとしたことにいちいち幸せを感じちまって、調子が狂ってばかりだ。


 俺の舌打ちに、眉尻を下げているアリスも可愛いとか思っちまう……重症だな。


「アリス様! そんなことはわたしがやりますから、アリス様はどうぞ座ってわたしの為に笑っていて下さい!」


 そう言って、アリスの隣りに座っていたもう一人の女……クラリスが立ち上がって、俺の前に置かれた綺麗に盛り付けてあった皿に、ドカドカとアップルパイを三個程積み上げた。


「そうですわ。兄様へのサーブなど、わたくしたちで十分! ()()()()()為に笑っていて下さいアリス様」


 更に妹が、俺の皿に三個盛った。……てめえら……アリスの気持ちが台無しだろうが……。


「二人とも、私のことは“アリス”と呼び捨てにしてよいのよ。私たち同い年だし」


 アリスがにこりと女二人に笑いかけると、二人同時に「きゃあ!」と黄色い声を上げた。


「ムリ! ムリですぅ! アリス様! そんな恐れ多い!」


「わたくしの愛しの人の名を軽々しく呼び捨てなんてできませんわ! ……でもあえて呼ばせていただくならば、“姉様”と呼ばせていただいてもよろしいかしら?」


「え!?」


 ヴィヴィの言葉に、アリスの頬がほんのり桃色に染まる。

 おいおい。可愛いすぎんだろ……。


「お嬢、今何考えた?」


 俺がしれっと聞いてやると、アリスは慌てて首を振った。


「な、何も考えてないわよ? 別に変なことは」


 ヴィヴィがアリスの両手を取って、自分の手で包み込むと、うっとりとした表情でアリスの瞳を見つめた。


「いずれアリス様が兄様と結婚したら、わたくしたち()()になりますものね。“姉様”と呼ばせていただいてもなんの支障もありませんわよね」


「いや、それは早計だな。アリスは殿下と婚約している。リディアと結婚することはあり得ない。しかし、この“アップルパイ”というやつは、本当に美味いな。アリスが作ったと思うと更に美味い」


 ……どうしてお前がここに居る。


 同じテーブルで、偉そうに脚を組んで紅茶を飲んでいるのはトーリだ。お前は一応()()アリスの従僕だろ。いいのかそんな偉そうで。


「アリス様。このジークフリート殿下にそっくりな偉そうな方はどなたですか?」


「お前、姉様とわたくしに対しての無礼は許しませんよ」


 女二人から怪訝な視線を向けられても、まるで二人が居ないかのようにトーリの視線は真っ直ぐアリスに向けられている。

 クソ。間違いなく二人で出掛けた後からトーリのアリスに対する態度おかしいだろ。

 アリスの様子から二人の間に何も無かったのは明白だが、トーリ(こいつ)の意識を変えてしまう何かがあったことは確かだ。


「アリスに対する不名誉な噂、消し去ることは可能だ。お前が望めば今すぐにでもな」


「いえ、あえてそれを逆手に取りましょう。天下のシャーリン家に楯突いてでもリドやヴィヴィを取り戻したい方が、私を襲ってきたところを懐柔していけば良いわ」


「お嬢てめえ、ほんとふざけんなよ」


 こいつはほっとくと、すぐ自分を犠牲にしようとする。

 あっけらかんとしているが、あの髪だって、切っちまった日の夜に部屋で一人で泣いていたのを俺は知っている。

 部屋に行って肩を抱いてやったら「大丈夫。大丈夫なの私は。髪切るなんて私にとってはどうってことないの。でも私の中のアリスの部分がどうしようもなくなっちゃうの」……と、よくわかんねえが明らかに俺を気遣ってるようなこと言いやがった。


 アリスはたまに、クラリスのことを『もう一人の私』と言ったり、俺を『命の恩人』とか言ったりする。

 よくわかんねえが、多分……俺に蹴られて頭打ったのが原因じゃねえかと俺は睨んでいる。

 だから俺には責任がある。

 アリスの脳ミソを残念にしてしまったことに対する責任が。

 だから俺は、アリスが俺の嫁になりたがるのを、あえて否定するのを止めた。

 なってやろうじゃねぇか、王様にでも何でも。アリスを嫁に貰う為ならな! ……否、あくまでアリスがなりてぇっていうから嫁にしてやるだけだがな。



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