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悪役令嬢は魔王様の花嫁希望  作者: 星 くらら
第一章 嫁ぎ先は魔王(仮)に決めました
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19 魔剣はあります!(4)

 何故こんな事になったのでしょうか……。私は今、娼館の一室に居ます。そう、先程の綺麗なお姉さんのいる娼館に。

 私がソファで膝を抱えて座っていると、綺麗なお姉さんがグラスを片手にソファの手すりに腰を下ろして、私の顔を覗き込んだ。


「大丈夫? ……ブルースくん……だっけ? 何か飲む?」


「……いえ、お気遣いなく。わた……ぼくはソファで一人で寝るので、貴女はベッドで寝て下さい」


「……ジャンヌ」


「え?」


「アタシの名前。呼び捨てしてちょうだい。敬語もいらないわ」


 私がこくりと頷くと、ジャンヌがクスッと微笑んだので、私は思わず息を飲んで、その笑顔に魅入ってしまった。す、凄い! 美女の微笑の破壊力……ッ!!


 結局、アルフレッドとの賭けに負けた私は、娼館に泊まることになってしまった。それはもう、そういう約束だったので仕方ないと理解しましたけど。あの、アルフレッドの勝ち誇ったようなドヤ顔も大変ムカつきますが仕方ないと理解しました。……でも、まさか、リドが……あんな女の子みたいな顔して……相当の肉食系だったなんて知りませんでしたわ。……なんだか裏切られたような、モヤモヤするような、変な気分。

 部屋に入る前のやり取りを思い出すと、胸がきゅう……と、締め付けられるように痛い……。

 私が『一緒の部屋に泊まりましょう!』と誘ったら、『冗談だろ? 折角久しぶりに女抱けるのに、なんでお嬢と一緒の部屋じゃなきゃなんねぇんだよ。……それとも、三人でしてぇのか? 俺はまぁ……かまわねぇけど』と。

 三人で()()ってなにを!? ナニを!?


「……そんなに落ち込むことないわ。男なんてみんな欲望には弱いものよ」


 ジャンヌの声に、ハッと瞳を上げると、綺麗なエメラルドの瞳とかち合った。


「え? 嫌だ、私、声に出してた?」


「ううん。思ってること、全部顔に出てるから。アナタ、あの眼帯のコが好きなのね?」


「……へ?」


 突然言い当てられて、変な声が出てしまいました! え? え? 今、なんて!?


「す、好きじゃないわ! リドのことなんて全然! そ、それに、ぼ、ぼくは男だし!」


 ジャンヌはサイドテーブルにグラスを置くと、腕を組んで立ち上がった。


「リド……成る程、リディアだから()()な訳ね。彼、元ログワーズ王国のリディア王子よね?」


「……え?」


「珍しい物好きのオズワルドらいわ。彼……凄く綺麗な顔してるものね。……ああ成る程ね。それで下げ渡されて今はアナタの奴隷(オモチャ)になったってトコかしら? ……当たり?」


 ……何? 何を言ってるの? ……この人……私のこと知ってる……ッ!?


「……なんで? 貴女一体……?」


 妖艶な微笑みが、目の前でぐにゃりと歪んだ。一歩ずつゆっくりとジャンヌがこちらに近付いてくる。私は立ち上がって、ソファに沿いながら後退った。


「……その目……王家の血を引くロイヤルブルーの瞳……そんな美しい色を、俺は三人しか知らない……現王と、その息子……そして、お前……」


 え……? 今、()って言いました? ……まさか!?

 ジャンヌの長い腕が伸ばされて、私の肩を掴む。

 私はどうしてこの人を、女の人だなんて思ったのだろう。間近に迫ったジャンヌは、紛れもなく“男”だった。


「……あ、貴方……何者……?」


「……まさか、こんなチャンスが巡ってくるなんて、思ってもみなかったからさ……アンタが逃げないように内心ヒヤヒヤしてたよ……ねぇ、アリス・ローズ・シャーリン」


 そう言うが早いか、ジャンヌは私の身体をヒョイと肩に抱え上げた。驚く程に、軽々と。


「ちょっ……ッ!? 何するの!? 放して!!」


 バタバタと脚をばたつかせて抵抗するも虚しく、私はベッドの上に投げ出されてしまった。私はすぐにベッドの上から逃げ出そうとしたが、ジャンヌに素早く伸し掛かられて手足を拘束されてしまい、それは叶わなかった。


「アリスお嬢様は、俺のこと覚えてない? たかが奴隷(オモチャ)のことなんて、忘れちゃった?」


 手首を拘束している指先にグッと力が入る。

 ジャンヌは昔、シャーリン家に居たのね。お父様の性奴隷(オモチャ)として。そして私に下げ渡され、捨てられて……私達を恨んでいる……。

 ベッドの上に仰向けで手首を縫い付けられ、真上から顔を見下ろされる。彼の長い金髪が垂れ下がり、私の頬を擽った。私は彼を見上げながら必死に思考を巡らせる。お父様の性奴隷(オモチャ)なんて、それこそリドのように数時間で捨てられた子も居るし、ほとんど覚えていない。


「それじゃあ……これなら思い出すか?」


 ジャンヌはそう言って自分のシャツの胸元を引っ張って、広くはだけさせた。

 思っていたよりも、しっかり筋肉が付いていて男らしい胸元が露わになる。そこには、刃物で斬られたような古傷……大きなバツ印の傷痕があった。


「貴方……ッ! もしかしてジャン!?」


「ご名答。良かった思い出して貰えて。名前が出なかったら……首を絞めてしまうところだった」


 傷を見て思い出しましたわ……ッ!!

 三年前に彼がお父様に飽きられて、捨てられた日の事を。


「二年間、お前の父親にいいように弄ばれた挙句、俺は娼館の前に捨てられたんだ。こんな無残な傷を付けられて」




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