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関空物語  作者: 銀の筆
2/5

1.妄想の餌食


 次の日、二日酔いで頭が痛い。特に後頭部から首にかけて鈍痛が仕事をさせてくれない。きっと、脳みそが酒に漬かってカニ味噌のように甘くなっているに違いない。酒臭い息が妙に甘く感じるのは、そのせいだろうと自分勝手な言い訳を考えながら仕事をしている振りをする。

 昨日、友人にはとうとうこの計画のもう一つの楽しみを言うことはできなかったが、それを考えるだけで俺は、ニヤついてしまう。その楽しみの方が本当の目的なのだ。


「ぬっふっふ」


「あ、ヨダレ」


 俺は、つい口を半開きにしたまま会社の机の上にヨダレを数滴垂れ流していた。

 やばい、向いの席のおばさんがニヤニヤと俺を見ている。完全に妄想の瞬間を目撃されてしまった。

 このおばさんは、会社の先輩で歳は40歳くらいの独身。髪は短めのボブカット、中肉中背で人が良さそうな感じだがとにかくしゃべる。俺は、この人の呼吸法を勝手に『しゃべり呼吸』を呼んでいる。とにかく、いつ息を吸っているのかわからないくらいに次々に言葉が出てくる。そして、そのほとんどがとても薄っぺらい内容だ。しかし、注意しなければいけないのが『うわさ話』が大好きだということと、そのうわさ話を自分の知り合い全てに話しているだろうと思わせるくらいの発信力だ。この人の餌食になったら最後、次のうわさ話のネタが現れるまで誇張され続けながら全世界へ発信されるのだ。


「銀太郎君、今ボ~っとしてたけど彼女のことでも考えてたの」


(ギクッ!)


 完全にばれてた。


「あ、いや。工藤さん。そ、そんなことないっすよ」


「ふ~~ん。じゃ、何考えてたの」


(まいったなぁ)


 どう答えたら、この人のうわさ話のネタにならずに済むんだろう。そして、俺はこの場を逃れたくて、最悪の回答をしてしまった。


「あ、ちょっとトイレに行ってきます」


「あらら。若いって良いわねぇ~」


 と言ったおばさんの目は、糸のように細くなり、口は右側にぐにゅっと曲がり、同時に右側だけ変なエクボがでた。そして、俺がこれからトイレで何をするか、勝手に妄想を始めたかのように細くなった目をへの字に曲げた。


(し、しまった。妄想の餌食になってしまった。)





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