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とある悪役令嬢は変な物に取り憑かれたそうです  作者: カラシ
第1章 不思議な出会い
2/5

2話 縁という少女

「……ぅ……痛っ」



 ゆっくりと目を開き、体を起こすと少し頭が痛んだ。しばらくして、倒れた事や

その前の事も思いだす。

 どうやら此処は保健室で、倒れた私を運んだらしい。周りを見渡してみたが、誰

もいない。



「あの白い物は、もしかして……魔法でして?」

(あ、あのー……)

「きゃああああっ⁉︎」



 またあの声が頭に響く、周りに誰かいないか見渡してみるが誰もいないので気味

が悪い。ベッドから降りて背筋を伸ばす、例え姿が見えない相手だろうが隙を見せ

るつもりなんて無い。



(あ、うん、そのぉ……う、うち、リリアさんに憑依する気はあっても気絶させた

いとか思ってなかったんです……! ごめんなさい!)

「貴方は誰ですの⁉︎ 名も名乗らず姿も見せないなんて、かなり失礼でしてよ!」

(は、はいぃっ⁉︎ すみません! うちん名前は山田(やまだ) (ゆかり)と言います! 約1ヶ月

間は姿が見せられないと思いますがこれからよろしくお願いします!)



 本当に訳が分からなくなって来た。ヤマダユカリ、変な名前ね。確かあの女もこ

んな感じの名前の名前をしてたわ。

 あの女の事を思い出すと無意識の内に眉を潜めてしまう。



(一応言っておきますけど、名字が山田で名前が縁ですからね)

「そう、別にどうでも良いわ」

(ど、どうでも……)



 落ち着いてみると、この頭に響く声は女の声と分かる。それにしても、今さっき

から「うち」「うちん」とか変な言葉遣いをする、多分だけど田舎者だ。

 頭に響く声に応える為、誰もいない空間に話しかけてるが、もしもこんな所を誰

かに見られでもしたら、かなり滑稽な噂が明後日までには全学年に知れ渡る事だろ

う。



(あっ、なんか誰もいないのに話してるの見られると変な噂が立つと思うんで、心

の中で思うだけでも会話できるらしいですよ)

(……貴方、姿を見せたら覚えてなさい)



 少しだけ息を飲む音が聞こえたので心がスカッとした。



(貴方は何処に居るの? そもそも何故、約1ヶ月間も姿を見せられないのかしら)

(……話すと、長くなるけど)

(ならいいわ)

(ちょっと待って⁉︎ 普通なら此処じゃ息を飲んで聞くよねぇっ⁉︎ お願いします

から聞いて下さいようってか聞いてくれなきゃ、うちが何処にいるのとか、どうし

てリリアさんにしか声が聞こえないのとか分かんないからぁ!)



 余りにもうるさい。こんな人は初めてだ。



(……はぁ、なるべく早くして頂戴(ちょうだい)

(ふっふっふ……それでは、話しましょう……)

(やっぱりいいわ)

(すみませんでした)



 少し息を吸い込む音が聞こえ、次に声を聞いた時は少しだけ落ち着いた声になっ

ていた。



(あれは……うちが1人で学校から帰ってる時やった……)





 ある日、まるで声を掻き消すかのような大雨が降っている日に、人通りが少ない

道で傘をさして歩いてる少女が1人。



「あ”ー……金が欲しい。バイトしてぇ……!」



 その少女は女子高校生1年になったばかりの山田縁、それがうち。髪はどれだけ

手を()くしてもボサボサな黒髪で貧乳、身長は普通ぐらい、勉強も運動も出来なく

て、顔は中の下なうちの唯一の取り柄といえば顔にニキビがない事、それと、自慢

じゃないけど、年齢=彼氏いない歴。

 好きな言葉は「余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)」と「リア充は爆ぜろ」、座右の銘は「触らぬ神に祟り

なし」、つまり、面倒くさそうなのには近づかないで生きろという意味。

 そして数少ない友達とカラオケに行ってみたいからバイトを探してる冴えない女

子高生さ。


 そんなうちは1人で帰ってると、足に何か柔らかい物を踏んだ感触がした。



「お? ……ってウンコじゃねぇかっ!」



 驚き勢いよく跳ねる、そのまま地面に着地しようとしたが、水溜まりの中に足を

突っ込み後ろに滑る。そのまま川の中へと落ちて行った。



「ガボッ⁉︎」



 今日は雨の日、しかも大雨だ、当然、川の水も増えてるし勢いも凄い。本能的に

悟った。もうダメだ、うちはもう助からない、と。

 そう悟った瞬間に思い出すのはあの動画、そう、うちを爆笑させ、また時間を置

いて見ると爆笑のループを起こす動画。まさにこの場面にピッタリじゃないか、現

実で起こると笑えないけどな。ははっ。

 だけど、どうせ死ぬんだったら馬鹿な事をやって死にたい。

 必死にもがいて水面から顔を出して叫ぶ。



「この川、深いから、深い! ボボボボ……! ガボゥッ⁉︎ ボボボボッ‼︎」



 結果、まぁそれなりに最後を面白くできたと思う。そして言っておくが、最後の

台詞のボボボボは途中まで自分で叫んでたけど、途中からは水が鼻や口に入って来

て溺れてる際に出た音だ。そこの所だけは変な勘違いはしないで欲しい。






(はーい此処までが、うちの前世での事)

(とても信じられないし、それにとても馬鹿ね)

(馬鹿は知ってるもーん、それに信じられんかったら、そうだなー……おとぎ話聞

いてる感じでいいから。さて、次に話す事が、どうしてうちがリリアさんに憑依す

る事になったのかって話)



 信じられない話で、いつもの私なら馬鹿な話をしないでと言うが、今は誰もいな

いし暇なので話の続きを聞く事にした。



(うちね? 眠った後になんか呼ばれてる気がして目を開けたん……)







「おい、起きろ」

「……うヘヘ、ふひっ……」

「……起きろぉ!」

「……あ”ぁ”? うるっせぇなぁ……お前、何様だよ」

「神様だよ」

「あだっ!」



 軽く叩かれた頭をさすって、体を起こし自称神という奴を見る。うん、確かに顔

が整っててオレンジの髪に毛先が赤で、瞳の色が紫色、これはコスプレイヤー以外

は神だとしか言いようがないな。外国でもこんな髪の人は見た事ないし、日本人は

黒髪黒目だし。



「うわーお、コスプレイヤーみたいな神様だ」

「失礼なテメェに突然だが、テメェは死んだ。死因は犬の糞を踏んで、驚いたら滑

って川にドボン、そのまま溺れ死んだ。ははっ、クソ面白い死に方だな」

「はははー」



 なんか嫌だけど意外とすんなり納得できた。寝起きで頭が上手く働かなかったの

も理由の1つだと思うけど。



「驚かないんだな」

「人生は受け入れが大事ですよ。それと家族はどうですか?」

「悲しんでるが、1ヶ月くらいで立ち直って普通に生活してるぞ」

「ほー」



 まぁ、うちの家族ってそんなんでへこたれる人じゃないし、普通に生活してるな

ら良かったわ。



「で、これからうちは地獄にでも行くんですか?」

「それはだな……」



 此処で紙を取り出し何かを読む神様、おい、神様はこの仕事初めてなのか?



「普通なら、また元の世界に輪廻転生して貰う筈だったんだが、テメェがやってた

乙女ゲームのキャラクターに憑依してもらう」

「えー、普通は悪役令嬢に転生! とか、他の攻略対象やヒロインに転生! とか

じゃないんですか?」

「上から言われたんだよ、もうそれは飽きたって」

「うへぁ……」



 人の輪廻転生を邪魔する上にうちがやってた乙女ゲームのキャラクターに憑依し

ろだと……うん、かなり面白(おもしろ)そうだね。



「テメェがやってたゲーム、『乙女の涙』っていう題名がなんともこっ恥ずかしい

乙女ゲームで憑依して貰いたいのは、この2人の内、1人だ」



 目の前に映し出されたのは2人の美女。右はクリーム色のボブの髪とピンクの瞳

をした可愛らしい女の子、ちなみにヒロイン。左は暗い紫色の長い髪と薄い紫色の

瞳をした少しキツそうな女の子、こっちは悪役令嬢。こうして並べると2人は本当

に真反対だ。



「普通ならヒロインとか選んで悪役令嬢を一緒に撃退するんだろうね」



 うちが指差したのは紫色の美女。つまり悪役令嬢のリリアさん。



「良いのか?」

「なんか最近、悪役令嬢に転生する小説ばっかり読んでて、どうしてもリリアさん

だけが悪いとは思えないんです……それに」



 チラリと顔の下の方を見る、見事に無い。隣に目を向けるととても大きいソレが

ある。



「なんて言えば良いんでしょう……胸が」

「あぁ、同じ貧乳だから情が移ったんだな」

「神様相手に言って良いかどうか迷ってたんですけど大丈夫なんですね、そうです

よ、うちは同じ貧乳仲間としてリリアさんの未来を守りたいと思いました」



 普通は悪役がわがままボディしてる筈なのになんだこれは、せめて2人ともいい

体してたら、もう少しは納得できたのに。完全にリリアさんが全部引っ込んでて、

ヒロインの人が出てる所は出てるんだもん、ちょっとイラってしたわ。



「でもずっと憑依してるのはちょっと、トイレとか風呂とかの時は困りそうだし…

…体は前世のままでいいから欲しい、それに転生あるあるのチートとかも欲しい」

「それなら1ヶ月後にテメェの前世での体を用意してやるし、チートもその時に選

ばせてやる、あと憑依するなら相手にぶつかればいい」

「へー、そうなんですかあああああああああっ‼︎」



 床が急に無くなり重力に従い落ちていく。



「自称神様ぁぁぁぁぁあああああ!」

「まっ、頑張れよ」

「ああああああああっ‼︎」







(……っと、こうしてうちはリリアさんに憑依した訳です。真っ暗闇の中を落ち続

けて、ようやく明るい場所に出たと思ったら修羅場だったし、なんか体が丸くなっ

て白く光ってて少し驚いた、それと憑依して倒れるとか思ってなかったんですごめ

んなさい)

(貴方、その乙女ゲームとか悪役令嬢とかはどういう意味なんですの?)



 今さっきから聞かされている話で何故、私に憑依したのか分かった。話は少しし

か信じてないが。



(あぁ、それは……)



 急にノックの音が部屋に響いた。ノックの音がしたドアの方を見る。



(あー、そんじゃ後にすんね)



 そう言って頭に響く声は聞こえなくなった。



 少し書き換えました。これからも偶に起こると思います。

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