従姉弟との対面
まあまあ、私の家族は恐ろしいものである。自分で言うのもなんだが、父親も母親も姉も水城さんも、みんな私に甘い。そして、私のことならすぐに暴走するし、裏で組む。
今回もその犠牲になったわけだが、まあ、このパーティー会場に来るのなら、これは良かったのかもしれない。普段着にはできないけど。
今回のパーティーの主催者は、いとこ一家。私の父は祖父の病院を継いでいるわけだが、いとこの父、私から見ると叔父は起業したという。それも、かなり成功したようで、製薬会社をはじめ、ホテルや旅館の経営など幅広く行っている。
―――一代でここまででしょ? その人、人間じゃないよ。
会場は、いとこ一家の別荘だった。うちもいくつか持っているが、ここはうちと比べられないほど大きい。
「兄ちゃん、いらっしゃい」
「久しぶりだな」
「な。夕陽さんと、一歌ちゃん、七瀬ちゃんも、久しぶり」
叔父さんは、小鳥遊潤という。道と似て長身のさわやかマンだ。
「いっちゃん、なあちゃん!」
「ゆうちゃんー! あ、陸にいもー」
潤とお話ししていたら、いとこの友菜と陸斗がやってきた。会うのはお正月以来だ。友菜は一歌と同じ5歳で、陸斗は8歳である。8歳で、陸にい、と陸斗のことを呼んでいても、まだまだおこちゃまに見えるのは仕方がないだろう。うんうん。私は、中身は17歳だもんね。お姉ちゃんだもん!
「じゃあ、お父さんたちは挨拶に行ってくるから、いい子で待ってろよ。あと、水城さんや高橋さん、香村さんに迷惑を掛けないこと。わかった人ー!」
「「「「はーい!」」」」
高橋さん、香村さんはゆうちゃん家のお手伝いさんである。
今日は、大きな会社のお偉いさんも結構来ているらしく、お父さんとお母さん、叔父さんと叔母さんは挨拶周りに行った。その間、私たちは子供部屋で遊んでおくのだ。大人も大変だが、子供も大変である。この年の子たちは、異常に元気である。どこにそんなに元気を溜めているのだろうか。
「何するー?」
「鬼ごっこしよう!」
「えー、かくれんぼ」
「おままごとはー?」
「やっぱり、お人形で遊ぼー?」
「かけっこ!」
―――キリがない。てか、室内でかけっこはないでしょ! いくら広い部屋でも、それは……できそうだな。
「私、本読んどくね」
「うん」
私はいつも通り本を読むことにした。以上に本が好きなわけではないが、小さいころから月に最低2冊は読むという教育をされて17まで生きたから、暇なときには読むことが癖になっているようだった。
はじめは、みんなに「えー! つまんない! 遊ぼうよ!」と言われていたが、最近は「だよねー。うん、知っている」という感じになっている。
本を読むといっても、2歳児が読む本は絵本、それも簡単なものしかない。平仮名オンリーの本は逆に読みにくい。それに、全部ではないが、「あー、面白かった!」「何度でも読みたい!」となる本はなかなか見つからない。
そういうわけで、かはわからないが、最近は図鑑を見ることが増えた。海の生き物の図鑑や、星の図鑑など、様々だ。字が解らなくても、写真を見ればわかる、ということにして私は図鑑を物色している。最近のお気に入りは、恐竜の図鑑である。これが自分の知らないことだらけで面白い。
見開き2ページを熟読し終わったころ、ようやく何をして遊ぶかが決まったようだ。長いな。
「なぁちゃん、かくれんぼ、する?」
「七瀬お嬢様、本を読むことも大事ですが、お友達と遊ぶことも、同じくらい大事ですよ」
「わかった。一緒に遊ぶ」
本当はもっと読んでいたかったが、遊んだほうがいいな、と判断した。なぜなら、ずっと遊ばずに本を読んでいるなんて、それは美奈と同じではないか。それは、絶対に避けたいことである。
かくれんぼは実はあまり好きではない。いや、かくれんぼに限らず、勝負事があまり好きではない。なぜなら、負けたらイラッとするからだ。
周りからはあまりそう見られないが、実は負けず嫌いである。だから、したくない。
わたしは他のみんなより小さい体を生かして、押入れの奥のほうに隠れた。扉はしっかり閉めた。一応、暇つぶし用の本と懐中電灯を持ってきた。これで大丈夫!
私は懐中電灯をつけ、本を開く。
しばらくして、周りの喧騒で、私は目を覚ました。
「んん。……寝ちゃってた……ふあぁぁ」
今何時だろう? と思って気づく。
---あれ、まだかくれんぼしてるの? 意外とそんなに時間たってないのかな。
そんなことを考えていると、少し遠くから水城さんの声が聞こえた。
「七瀬様ー! 七瀬お嬢様、どちらにいらっしゃいますか!?」
耳を澄ますと、一歌たちの声もする。
「なぁちゃん! どこ隠れてるのー?」
どうやら、うまく隠れすぎたようだ。なかなか私が見つからず、ちょっとした騒ぎになっているようである。
私は本と懐中電灯を手に、外に出た。
「ここー!」
「あ、いたー! もう、いなくなっちゃったかと思ったでしょ!……いっちゃん、いたよ!!」
最初に私を見つけたのは友菜だった。友菜の呼びかけに、一歌がすぐにやってくる。
「なぁちゃん! 駄目でしょ、いなくなっちゃ!!」
---いやいやいや! かくれんぼってそういうものでしょ? すぐにわかるようなところにいたら、それこそ駄目でしょ! え?
子供の思考は理解に苦しむ。地軸の別名が自分の名前だとでも思っているのだろうか。まあ、面白いからいいけどさ。
「楽しそうだな」
「お父さん!」
子供たちでギャーギャー騒いでいると、お父さんたちがやってきた。どうやら挨拶は一通り終わったようだ。道たち保護者組が戻ってきた。
「さあ、ご飯を食べに行こう。皆の好きな物がいっぱいあるぞ」
「ホント!? 唐揚げある?」
「ああ。沢山あるから、一杯お食べ」
わあ! と、子供たちから歓声が上がる。
唐揚げは大人も子供も大好きな食べ物である。
「あ、待って。友菜と陸斗はご挨拶してもらうから。兄ちゃんたちは先に会場に行ってて」
「わかった」
―――子供なのに挨拶させるの!? どういうこと?
混乱している私の心は誰にも気づいてもらえず、私は道に抱き上げられてパーティー会場へ向かった。
大変遅くなりました! 色々と忙しく、気付いたらこんな時期に……!
お楽しみいただけたでしょうか?
次は、初めてのパーティーです。