閑話 それから
私が本当の「小鳥遊家の家族」となれて、2年が経った。今日は私の2回目の誕生日だ。私がどうして普通ではないのか、それは親は気になって気になって仕方がないだろうが一切聞いてこない。姉の一歌と水城さんは恐らく気付いていない。まあ、それが一番いいのだが。
「なぁちゃん、お誕生日おめでとう!!」
「ありがとう!」
今日は道も夕陽もお仕事をお休みしてくれた。そして、今は毎度恒例のお誕生日会をしている。
「はい、どーぞ!」
「ありがとう、いっちゃん」
一歌は「お姉ちゃん」と呼ばれるより「いっちゃん」と呼ばれる方が良いらしく、私も一歌のことは「いっちゃん」と呼んでいる。
「お花作ったの」
「わぁ! え、これ、いっちゃんが作ったの?」
「うん、もちろん。作り方は水城さんに教えてもらったんだけどね」
折り紙で作られた封筒から出てきたのは、毛糸を編んだお花のブローチだった。一歌が編んでくれたらしい。白と黄色と緑の3色の花びらがピンにつけられている。
「ねえ。つけてみてよ、なぁちゃん」
「うん! お母さん、やって?」
―――自分でしてもいいけどさ、2歳になりたての子が器用にブローチをつけたらおかしいよね?
私、成長した。最近ではボロが出ることが無くなったのだ。誰か褒めて?
「わあ! かわいい! 似合っているよ、なぁちゃん!! さすが一歌の妹!」
「ああ、確かにかわいいな。一歌もすごいぞ! お父さん、感動だぁ!!」
―――あ、誰かこの二人の暴走止めて。ちょ、水城さん、目を逸らさない! お母さんも見て見ぬふりをしない!
親ばか、姉ばか。ブローチに似合う似合わないがあるわけがない。「服と」ならまだわかるけど、「私と」って……。
私は、いまだに私の可愛さを語り合っている二人の興奮が早く収まるように、祈っておくことにした。正直、自分のことをかわいいと繰り返されるの状況は、居心地が悪いのだ。
その後、夕陽から薄ピンクのボレロを、道から靴とヘアアクセをもらった。二人ともセンスが良い。
最後に水城さんが近づいてくる。
「七瀬お嬢様、わたくしからはこちらを。お気に召していただけると嬉しいのですが」
「ありがとう、水城さん。開けても良い?」
「どうぞ」
私は受け取った白い包みを開ける。中には、
「これ……!」
白を基調としたワンピースが入っていた。スカート部分は薄いピンク色の生地が使われている。
「お嬢様が以前、デパートでこのワンピースを見つめていらっしゃいましたから」
「まあ、よく見ているわね」
「当然の事ですよ、奥様」
可愛いけれど、かわい過ぎることもなく、中身高校生の私にはピッタリだと思ってじっと見ていたのが、水城さんにはバレバレだったらしい。
「ホントにホントにありがとう!!」
「お礼には及びません」
―――大きくなったら水樹さんみたいな女性になりたいなあ。
「七瀬、明日のパーティー、それを着ていったらどうだい?」
「いいわね! きっとみんなが振り向くわ!」
「でも、そんなことして、なぁちゃんとられない?」
「む。それは危険だ」
「どうしましょう? でも、このワンピースを着せて、自慢したいわ。だって、絶対に似合うでしょう?」
「ああ。間違いないな」
また始まった。……お母さんが参加してしまった以上、諦めるしかなさそうです。
だけど、この服を着れば、確かに目立つだろう。
青春は、別に大きくなるのを待たなくても良いのでは? 最近、私はそう思いだした。
青春とは「夢や希望に満ち活力のみなぎる若い時代を、人生の春にたとえたもの」だ。
私は夢---青春を取り戻す―――や希望---青春を謳歌する―――(順不同)に満ち、活力のみなぎる若い世代だ。若すぎるかもしれないが、そこは考えないものとする。
定義に当てはまっているのだから、私は青春真っ只中といって良いだろう。
よし、これを着てパーティーへ行こう!
青春は、私的にはモテること! ちやほや万歳! いざ出陣!
―――ん? 待てよ。今日もらった物で全身コーディネートができる!? これは……!
バッと皆を見回すと、完璧だと言わんばかりの顔でお互いを見合っていた。
計画犯行かい! それにまんまとひかかった私! まあ、いいけどね。可愛いし……わたs、ごほん! プレゼントが。
むちゃくちゃ遅くなったくせに短い。しかも2年ほど飛ばすという……。
ごめんなさい!
キリが良かったのでここで切りました。
ちょっとだけ、いい方向に環境が変わりました。