プロローグ
恋愛禁止。部活禁止。テストでは毎回3番以内に入ること。
「お母さんとお父さんはあなたの事を思って言ってるのよ」。「言うとおりにしてごらん。幸せになれるから」。「学生は勉強だけをしていればいいの」。
反論したかった。そんなわけないって叫びたかった。今ではもっと思う。点滴に繋がれて、整えられたベッドに寝るか勉強するかしかない今では、もっと。
突然だった。まだ高校2年の私。死ぬことは眼中にもなかったのに、いきなり目の前にやってきた。もう、手遅れだった。あとは死ぬのを待つだけ。そんな状態になっていた。なのに、両親はまだ言う。
「勉強しなさい」。「退院した時、みんなに置いていかれると大変だぞ」。
いや、もう学校に行くことなんか無いから。本当は自分たちのためのクセによく言うよ。
子供は意外と大人を見ているものだ。両親が我が子のことはお見通しなのと同じで、子供もまた、両親のことはよく分かっていたりする。
父と母は、二人とも志望した高校、大学、会社に入れなかった。自分の子には同じ思いをさせたくない、というのもなんとなくだが解かる。つらいとわかっていることを好んでやる人は、そうそういないであろう。けれど、
―――押し付けないでよ。
これは、私の人生だ。あんた達のやり直しのための道具ではない。自己満足のための道具ではない。私がやりたいようにさせてくれ。
と、いうのが私の本音である。
「美奈ー。サボらないでやりなさいよ。自分の為よ。あとで困るわよー!」
今日も言う。
もう、我慢の限界だった。17年も耐えたのだ。最期に言ってやってもバチはあたらない。と、思いたい。
「あとでって、いつの事?」
「そりゃあ、大学受験よ」
「私はできないよ。そんな遠くの未来は持ち合わせてない」
「そんな後ろ向きな気持ちじゃ、治るものも治んないわよ」
「元から治んないんだよ!! 手遅れだったの! 聞いてたでしょ!? 何もかも、もう無駄なんだよ! やりたい事をやらせてよ!!」
「美奈、落ち着きなさい!」
焦りを含んだ母親の声がした。
点滴が抜け、腕から血が飛び散る。息がし辛い。「感情的になってはいけないよ。呼吸困難になるかもしれないからね」そんな、担当医の言葉が蘇る。
どうでもいいと思っていたが、やっぱり、やっぱり、
―――まだ、死にたくない。もう、もう終わりなの?
まだ17だ。高校生だ。青春だなぁ、という事をしている歳だ。なのに、私はそんなことの思い出は、私の中に皆無だ。私の青春を
「か、え、して……」
まだ、まだやりたい事がある。やっと母に意見できたのだ。これからなのに……。
もう、目の前が真っ暗だ。遠くで何人かの人がバタバタしているのが、なんとなくわかる。名前を呼ばれている気がする。だが、もう私にそれに応答する気力は無かった。
また、手遅れだ。
―――決めた。
もし、転生というものがあって、それができるのならば……
―――取り戻してみせる。何がなんでも、私の青春を取り戻してみせる!
◆◆◆
「やるぞぉ!」
「え!?」
―――え……?
転生するの早すぎませんか、神様?
新連載スタート!とかカッコイイこと言ってみます。