#01 おっさん、起きる。
……普段寝ているセンベイ布団の感触がおかしい。
何やら固いし、そもそも石が腹に刺さっている気もする。
静かな郊外に独り暮らしのはずなのに、妙に周りが騒がしい。
まるで緑豊かな田舎へ里帰りしたかの様だ。
……観念して起きたらそこは、見知らぬ天井だった。
「えっと、俺自分の部屋の布団で確かに寝てたよな?」
頭が起き始めたので、寝る前の事をぼんやりと思い返す。
昨日は楽しみにしていたアニメの放送日だったので
風呂に入った後に、晩酌しながら見たことを確認する。
「うん、確かに布団に入って寝たはず」
「俺は伊紗歌慧33歳のおっさん」
「横浜の片隅に生息する、ちょっとブラックな会社に勤める社畜で、趣味はオタク系全般」
「彼女なし、ヒトカラが心の慰め」
口に出して再確認をする。
残酷な現実が、おっさんの心を抉る。
……残酷な事実を直視した為におっさんのSAN値が2減少したが
何とか気を取り直して現実を直視する。
「どう見ても、森の中、だよな」
おっさんはキョロキョロと周りを見渡すも、森の中という現実は変わらない。
素人なのについカメラを探してしまうのはドッキリに慣れ親しんだ日本人ならではと言えるだろう。
「おーい、誰か居ませんかー?」
声を出して自分の居場所を報せるおっさん。
5分経ち、10分経ち、30分経つも誰も来る事はなかった。
声を出すことを諦めて座り込むおっさん。
初夏だったのに今日は随分と暑いな、と、おっさんが見上げた先にはギラギラと照りつける太陽が
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