たどり着いたその場所はーー。
目の前を流れていく海。
雨が降りそうで降らない、灰色に染まった曇り空。
次から次へと流れゆく木々。
移り行く景色をぼーっと眺める。
「んーーっ……ん?」
目を覚ますために伸びをする。どうやら、いつの間にか眠っていたらしい。
そして、周りの不自然さにようやく気付く。
「あれ?乗り過ごしちゃったのかな?」
私が乗る車両にはいつの間にか、恐らく寝ていた間にだと思うが、一人も乗客はいなかった。正確に言えば、私以外、誰もいなかったのである。
「仕方ない。次の駅で降りて、駅員さんに現在地を聞いてみるか。」
辺境の地で電波が悪いのかはわからないが、携帯は圏外のままだ。このような不安を感じる状況でも、「なるようになる」と楽観的に考えられる所が私の長所である。今は、その性格に感謝しよう。
さて、次の駅までの退屈しのぎに自己紹介すると、私の名前は「鬼島 陽姫」、18歳、髪の長さは肩に少しかかるくらいで、性格は明るく楽観的、曲がったことは大嫌いという、一般的な高校生である。
今は夏休みで、祖母の田舎に向かっている途中なのだが、どうやら電車で居眠りしてしまったらしく、現在に至る。まぁ、何とかなるでしょ。
そうこうしているうちに、どうやら駅に着いたようだ。
電車も外の景色もゆっくり動き、やがて止まった。
とりあえず、降りてみよう。
駅のホームへ降りたが、どうやら駅員さんはいないようだ。しかも、驚くことに、電車の車掌さんも見当たらない。駅は無人駅になっているようだ。
私が駅の入口を出たと同時に、電車は去ってしまった。
「運転手さんしかいなかったのかな?車掌さんだけじゃなく、運転手さんも探せばよかった。」
後悔しても後の祭り。気を取り直して、駅周辺を探索してみる。
「これは……看板……?」
進むことをためらいそうな、禍々しい雰囲気を漂わせる場所の入口らしき所に、古びた看板が立て掛けてある。
「ようこそ!鬼ヶ島へ!!魔物は大歓迎!正義感溢れるもの、人間は立ち入るべからず!」
「……よし、他に行く所は無いし、とりあえず、行ってみよう!」
電車もなく、先に進むしかないようなので、注意書きは無視することにした。
ピンチになったら、その時に考えればいいよね。