42話 家政婦(テツ)は、見た!らしいです
土曜の更新をどうしようかと悩み中。
カクヨムでレビューが書かれていたのを見て、びっくりしました。双子の親をあんな感じに見てる人もいるのかと思わせてくれる良いレビューで満足です!
エイビスから受け取った地図を見ながら歩く雄一の隣を歩くテツが不安そうに聞いてくる。
「ユウイチさん、本当にその宿屋に行かれるんですか? 僕、とっても不安しか感じないんですが?」
不安そうな顔を寄せてくるテツに、フム、と頷く。
頭の上にいるミュウも雄一の真似をして頷き、ガゥと犬歯を見せる笑みをテツに向ける。
「テツ……証拠過多という言葉を知っているか? 例えば、台所に置いておいた『豆大福』があったとしよう。さあ、食べようとしたら無くなっているんだ。その場にはシホーヌとホーラがいた」
テツはいきなり雄一は何を言い出すのだろうかと目を白黒させて話をとりあえず聞こう考えたようで雄一の言葉に頷く。
シホーヌとホーラが、なんで例で使われるのかと拗ねるように雄一を睨みながらも続きが気になるようでテツに倣って頷き、他の面子も聞き耳を立てる。
「そして、2人に問いかけるんだ。食べたのはお前か? とな。勿論、2人は否定する。では、犯人は誰だ、という話になるんだ」
「どうせ、シホーヌに決まってます。あのバカ女神は食い意地が張ってますから」
澄ましたアクアがそういうと、いつもの恒例の喧嘩を始めようとしたので2人のデコをペシッと叩く事で止めさせると続きの話し始める。
「2人を観察するとな? ホーラはいつも通りどこも変わりがないんだが、シホーヌの口の周りに餡子をお弁当してて手の指先は白くなっており、足下を見ると豆が落ちてたんだ」
「だったら、シホーヌさんがツマミ食いしたんじゃないんですか? こないだも、ユウイチさんのクッキーをツマミ食いしてましたし……あっ!」
思わず、口を滑らせたテツの頭をスパパァーンと叩くシホーヌの残心をしているところを雄一の大きな手がシホーヌの小さな顔にジャストフィットする。
掴んだまま、持ち上げて雄一の視線まで上げる。
痛がるシホーヌの目を覗き込みながら、
「後で、ゆっくりお話をしような? シホーヌ」
「ヒーン、許して欲しいのですよぉ」
滂沱の涙を流すシホーヌは雄一の手を掴み、幼子のように泣き、許しを請う。
その様子に呆れた雄一は溜息と共にシホーヌを下ろす。
とりあえず、手を離した雄一から距離を取るようにしてホーラの胸に飛び込み、チラ、チラ、と雄一を見て様子を窺う駄女神様にキッツイお仕置きをする事を胸に刻んだようである。
シホーヌからテツに視線を戻した雄一は、「どこまで話したっけ?」と呟いたが自分で思い出せたので続きを話し始める。
「確かに、ここまで証拠が揃うとシホーヌしかいないって思うのが普通だよな? でも、少し考えてみてくれ。いくらシホーヌが底なしの頭の足らなさといえど、証拠を残し過ぎだとは思わないだろうか?」
それを聞いたアクアがシホーヌに目を向けて、プークスクス、と笑い、指を差す様を見てお前も似たようなもんだと思うが、口にすると脱線するのが目に見えて分かったので黙る事にした。
「どういうことですか?」
「つまりだ、これ以上、証拠を集める必要がないと言えるほど目の前に羅列する状況が嘘臭く見えてきて逆にまったく疑う要素のないホーラが怪しく見えてくるような気がしないか?」
「えーと、えーと、はい! なんとなくそう思えてきました! 前に大学芋を作った時にツマミ食いしたホーラ姉さんが取った芋の空白を他の芋を移動させて、間隔を変える事で偽装するホーラ姉さんの手腕があれば、できるはずですっ!!」
指を立てて、なるほどっ! と言いそうな顔をしながら喋るテツの背中にドロップキックを仕掛けるホーラがいた。
狙い通りにテツの背中にクリティカルヒットさせるとテツは地面に顔から突っ込む。
襲撃に成功したホーラであったが、その結果を見ずに踵を返して逃げようとする。
だが、肩に手を置く者に逃亡を阻止される。
「ホーラ? 後で、俺に時間を割いてくれないか? 勿論、いいよな?」
「りょ、了解さ、ユウ? お願いだから、お手柔らかにお願いするさ……」
とほほ……と聞こえてきそうな背中を見せながらホーラは言ってくる。
テツは、「酷いよ、ホーラ姉さん」と口に入った土を吐き出しながら恨めしそうに見つめるが、「ああっん?」と睨まれると股ぐらに尻尾を隠す犬のように視線を明後日の方向へと向ける。
「まあ、つまるところ、疑う場所が多いからってそうだとは限らないって話だ」
「なるほど、さすがユウイチさん! とてもタメなりましたっ!!」
うんうん、と頷く雄一の後ろを嬉しそうに着いていくテツを後ろから眺めていた
、シホーヌ、アクア、ホーラとレイアの4人は心の中がシンクロする。
「「「「ダマされてるぅ!!!」」」」
小さな声だったのでテツは聞き逃したようで、不思議そうに見返すが雄一には聞こえたのか、察したのか分からないが無表情のまま近づくと4人に顔を寄せて内緒話をするように話し始める。
「エイビスは、少なくとも現状は俺に気に入られたいのは間違いないと思う。そのアイツが面子に女の多いのを見て勧めてくる場所だという事を考えた場合、どんな場所だと思うよ?」
「分かるかよ! 後、テツ兄をイジメるなよっ!」
そう言いつつ雄一の脛を蹴ってくる。
少し痛かったが耐えた雄一は、
「今から向かう場所は、きっと飯が美味い宿だ。アイツが言ってただろ? 自分の名前を出したらデザートが毎食出るって? つまり、女のツボを突いたような料理やサービスが良い店ってことになると思うんだが……店を変えたほうがいいか?」
ガシガシ蹴っていた足を止めたレイアが顔を顰めて雄一を睨み、雄一の後方にいるテツに視線を向ける。
向けた先のテツは、どうしたの? 僕に用? と尻尾を振っている犬のように純真な瞳に耐えれなくなったようでレイアは視線を地面に逃がす。
「ご飯大事! デザートはもっと大事なのですぅ!」
「何もテツが、不幸になると決まった訳ではありません。それにあったとしてもテツなら乗り越えられるはずです」
「世の中、大事な事は沢山あるさ。それと天秤にかけて考えればテツを人身御供する事に躊躇したりしないさ……」
サラッと掌を返す女達を見て雄一は、口の中だけで言葉にする。
「女って、こえぇ……」
自分が誘導したとはいえ、女の欲望の闇の濃さに尻込みするが今回は自分は安全圏だと見なかった事にする。
女達から離れてテツの下へと帰るとテツが声をかけてくる。
「何かあったんですか?」
「いや、そろそろ陽が沈む恐れがあるから急ごうって話だ」
それに何かあるのは、これからだ、という言葉を飲み込んだ雄一は歩き出す。
そして、雄一に手を引かれて歩くアリアは背伸びをしてテツの二の腕を叩くと、負けないで、とメッセージを送るような悲しそうな目をすると雄一に手を引かれていく。
クエスチョンマークを浮かべて立ち止まるテツを置き去りにするように進む者達がチラッと見る目の意味を理解できずに考え込むテツ。
気付くと皆の背中が遠い所にある事に気付き、走っておいかけながらテツは叫ぶ。
「どういう事なんですかぁ!!」
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陽が沈み切る前になんとか目的地に着いた雄一は扉の上にある看板を読み上げる。
「マッチョの集い亭か……さて、テツ。お前は宿の手続きなどをやったことないよな?」
「えっ? はい、村で生活していましたから、そんな機会ありませんでした」
雄一は、テツの言葉に大袈裟に慌てるような仕草を見せると棒読みなセリフを言ってくる。
「それはいけないなぁ? そうだ、テツ。ここは、ぶっつけ本番で宿の部屋を取れるかチャレンジだ。こういう事は何事も経験だ。俺達は外で待ってるから、ちゃんと取れたら呼びに来るようにな?」
「はい! きっと良い部屋を確保してみせます!」
では、行って参りますっ! と敬礼までして任された喜びに震えるようにして、テツは入り口の扉に突撃するようにして入っていった。
それを見守っていたホーラが雄一の横っ腹を肘で突きながら言ってくる。
「ユウ、テツで安全かどうか確認しようとしてるでしょ? さすがにちょっと酷くない?」
雄一は、何の事か分からないとばかりに、すっとぼける。
そして、雄一の視線の先にはワクワクが止まらないとばかりに目を輝かすシホーヌとアクア、それとハラハラして落ち着かない様子のレイアがいた。
さて、どうなるやらと思って扉を見つめる事、カップラーメンができるぐらいの時間になると店の中から少年の叫び声が聞こえてくる。
どうやら、アタリだったようである。
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