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299話 精霊王になる条件らしいです

 雄一が生み出すイエローグリーンライトの力の奔流を頬に汗を滴らせながら見つめる精霊王は、若干引き攣り気味ではあるが笑みを浮かべる。


「まだこれでも抑えている力を解き放っただけ、というのが恐ろしい雄、いえ、さすがに男と言わせて貰おうかしら?」

「ほう? 精霊王に敬意を払われた事を誇ればいいのか?」


 精霊王に肩を竦めてみせる雄一は少しも嬉しそうな素振りは見せない。


「ええ、誇っていいわよ。今の貴方にサシで戦える神ですらいるか分からないわ。口惜しいけど、私も例外ではないわ」


 そう言う精霊王は、アクアと出会った頃に様子見をせずに殺しておけば良かったと肩を竦め返し、笑みを浮かべるのを見たホーエンは眉を寄せる。


 ホーエンの様子に気付いたミレーヌが声をかける。


「どうされましたか、ホーエン様?」

「今のユウイチは俺とやり合った頃と比べるのが馬鹿らしいぐらいに強くなっている。俺の見立てでも本気を出さないユウイチに精霊王は傷一つ付けられないはずなのに、あの余裕はどこから……」


 黙って見ていたアグートが、ハッと顔をホーエンに向けた後、雄一を見つめた後、叫ぶ。


「アンタ、逃げなさい! 精霊王が考えている事は……」

「遅いわ、私は貴方がここにやってくるのを待っていた! 乗り込んできたつもりでしょうけど、待ち構えられてたのよ!」


 そう言うと精霊王が両手を翳すと空に浮かぶ星が激しく明滅し出し、それを見上げる雄一。


 明滅の速度が速くなり、点灯してるのと区別が付かなくなった直後、目が眩む光が辺りを包む。


 ホワイトアウトした視界が戻るとホーエン達の見つめる先には高笑いをする精霊王とイエローグリーンライトのオーラが消えて白いオーラに包まれる雄一の姿があった。


「あっはははっ! かかったわ。所詮は馬鹿な人の雄と言う事ね? 確かに貴方の力を封じる事はできない。でもこの精霊界では例外よ。精霊の力、霊力を封じる事は貴方との力量差があろうとも問答無用で封じられるわ!」

「遅かった……精霊の加護の力は上位精霊の力で押さえ付けられる……」


 アグートの絞り出すように呟きを聞いたミレーヌとポプリは弾けるように雄一を見つめる。


 見つめる先の雄一は驚いた様子も見せずに巴を持っていない左手を開いたり閉じたりしていた。


 冷静な雄一を怪訝な表情で見つめる精霊王と事態に付いていけてないミレーヌとポプリが辺りをキョロキョロして状況把握をしようとする。


 探す視線の先で雄一と同じく冷静な態度で見つめる四大精霊獣のリューリカ達に気付く。


「ダーリン、これで本当に良かったのか?」

「ああ、問題ない。巴?」

「はぁ、やれやれ、ご主人はいつも、わっちの存在意義を殺す事を平気でするのぉ? それでも嫌いにさせてくれない厄介な男じゃ」


 リューリカの問いかけに答えた後、巴に声をかける雄一。


 その問いかけに反応した巴が青竜刀から花魁姿のキツネの獣人の幼女に実体化すると拗ねた表情を雄一に向け、不機嫌そうにキセルを咥えながらミレーヌとポプリがいる場所へと移動する。


「済まない、巴。それとホーエンはアグートが危ないと思ったらその2人を平気で見捨てそうだから守ってやってくれ」


 雄一の物言いにアグートは頬を真っ赤にさせ、ホーエンも苦笑いを浮かべる。


 落ち着いた様子を見せる雄一サイドを見つめる精霊王は予想と違う対応をし続ける雄一達を見て混乱気味であった。


 アグートは勿論、四大精霊獣であるリューリカ達も当然のように知っている事。


 精霊王の力を増幅する精霊界から出れば、封じる事は出来ない事を知ってるはずである。


 現にアグートはそれを言おうとする素振りは見せた。


 だが、封じられた雄一の様子を見て、どうしたらいいか分からなくなってる辺り、雄一が落ち着いている理由は分からないのだろう。


 精霊王も知られている事は分かっていたので、リューリカ達が雄一に伝えて、ここから逃がすと読んでいた。


 だから、逃げようとするのを阻止する手もいくつか考え、既に手を打っている。


 疑心暗鬼に囚われる精霊王は目を細めて雄一を見つめる。


「ユウイチ、貴方は何を企んでるの?」


 問われた雄一は精霊王を見つめ返すだけで答えないが、代わりにアイナが答える。


「ユウイチちゃんは何も企んでないよ? 精霊王ちゃんが勘違い、ううん、精霊王ちゃんの物差しじゃ測れてないだけ。だから3つの計算違いをしてるよ?」

「どういう事?」


 問い返す精霊王に反応しかけたアイナであったが、雄一がする両拳を打ち鳴らす音に首を竦めるとバツ悪そうにして口を閉ざす。


「そんな御託はいいだろう? ここで俺とやり合うつもりだったのだろう? だったらする事は一つだろうが?」

「ふ、ふん、何を計算違いしてると言ってるのかは多少は興味を引いたけど、確かにやる事は同じね?」


 そう言うと身構える精霊王は精神集中を始めるのを見て、雄一も拳を握り締めて半身立ちになる。


 それを見つめていたポプリがハッとなり、傍にいる巴に縋りつき揺すり始める。


「力を制限されて大変なのに、どうして貴方はここにいるのです!? 私達を守る為というなら放ってユウイチさんの所に行ってください!」

「揺らすな、この年中発情娘!」


 そう言うと巴はキセルでポプリの手の甲を叩いて掴む手を外させる。


 涙目で手の甲を摩りながら巴を見つめるポプリに答える。


「ご主人は、頭に来る相手であっても女子供には激甘じゃ。じゃが、やり合うと決めた以上、情けをかける訳じゃないが……」

「なるほど……武器越しではなく、拳で殴る事で拳に伝わる感覚、痛みを心、身に刻もうと……ユウイチ様らしいですわね」

「不器用な男だ。だから、皆が付いて行き、手を差し出したくなる。そんなアイツだから俺とアグートも今、こうしてられる訳だが」


 巴の濁した言葉の続きを拾うミレーヌと、雄一を見つめながら6年前にやり合った時の事を思い出すホーエンは苦笑を浮かべ、アグートを抱き寄せる。


 雄一の事を理解する者が増える事が嬉しいと同時に自分だけの雄一が減っていく事も悔しい巴は鼻を鳴らし、負け惜しみのように簡潔に言ってしまう。


「馬鹿なご主人、それだけなのじゃ」


 そう呟く巴の視線の先では雄一が雄叫びを上げながら精霊王へと飛びかかる姿を捉えていた。





 真っ直ぐに駆け引きもせずに飛び込んでくる雄一に目を見張る精霊王。


 その突進速度は精霊王の予想を超える速度で慌てて掌を雄一に向ける。


「力を封じられてるのにまだそれだけ動けるの? 末恐ろしい男ねっ!」


 精霊王の言葉と共に熱を伴う閃光が雄一に襲いかかる。


 襲いかかる力に臆する様子を見せない雄一は握り締めている拳を閃光に叩きつける。


 一瞬の拮抗を見せる力と力のぶつかり合いであったが、真正面からのぶつかり合いは精霊王に軍配が上がり、押され始めた雄一は気合い一発で力の方向をずらして上空へと弾き飛ばす。


「ふっふふ、さすがというべきかしら? 貴方、既に加護抜きで人を超える力を持ってしまってるのね、化け物よ」

「さすがに精霊王に化け物呼ばわりは傷つくぞ?」


 軽口を叩く雄一だが、先程の力の競り合いで肩で息をしてしまっており、言葉ほど余裕はなかった。


 逆に自分の優勢を感じた精霊王は笑みを浮かべ、自分の周りに火球を生み出していき、饒舌になって語り出す。


「少し、昔話をしましょうか? 私は4代目なのよ、精霊王のね?」


 そう言いつつも雄一に向かって火球を放ち続ける。


 必死に避け続ける雄一を見つめる精霊王は暗い笑みを浮かべながら話は続く。


「精霊王は四大精霊の中から選ばれる。選ばれなかった精霊は転生する。記憶をリセットされてね?」


 選ばれた精霊の属性は同じ属性で一番、力がある者が選ばれる、と付け加えながらも執拗に雄一に火球を放つ精霊王。


「3代目を選ぶ時に転生させられたのだけど、何故か記憶がリセットされなかった。だから、先代扱いになる自分が何を思って転生したか、ちゃんと覚えている」


 火球を放つのを止めたので呼吸を整えながら、先程より暗い笑みを浮かべる精霊王の瞳を見つめる雄一はその暗い想いを正しく理解した。



 『嫉妬』であった。



「知ってる? 1~3代目の精霊王の元の属性が何か? 水よ。私はそれが悔しくて3代目精霊王になろうと躍起になった。たいした事のない水が華やかで強力な火の苦手属性とされるだけでも我慢ならないのに精霊としての格まで下扱いされるのは!」


 泣きそうな顔で広範囲に熱の衝撃波を放つ精霊王の攻撃を雄一は腕をクロスさせて耐える。


「それなのに、風、土、そして、精霊獣の4体の全てが水の精霊を精霊王に推したわ! 私は気が狂いそうになるほどの思いをさせられて転生した。その強い想いがあったから記憶が残ったのかもね?」


 虚空を見つめて笑う精霊王を憐憫の瞳で見つめてしまう雄一に気付いた精霊王に激昂される。


「憐れむな! この水、水、水に連なる者達は皆、私を馬鹿にする!!」


 一気に生み出した火球を一斉に雄一に放つと爆煙が生まれ、雄一の姿が見えなくなり、少し溜飲が下がったようで落ち着きを取り戻した精霊王が話を続ける。


「記憶を引き継いだ私は、密かに根回しをしていき、今度こそは精霊王、4代目になる為に奮闘した。途中までは上手くいってた手応えはあった。何故なら、記憶を失っていても風と土の精霊の性格は同じだった。精霊獣も初代の頃からいるから同じ相手だ」


 煙が晴れていき、片膝を着く雄一の姿を認めた精霊王が壊れた笑みを向ける。


「趣味嗜好を理解して立ち廻ったのに、最終的に選ばれたのは水……そこで気付いたわ。最初に選ばれた水の精霊だったから常に当代の精霊王に優遇されているのだと! でも、どんでん返しが待っていた」


 鬼女かと思わされる表情をした精霊王が叫ぶ。


「打ちひしがれる私に選ばれたアイツは言ったわ! 「みんなを纏めるような大変な事ができると思わないので、頑張り屋さんの火の精霊のアラートちゃんに精霊王を任せたいのですが?」と情けをかけられたのよ!!」

「それで精霊王になれて万歳と喜ばずにアクア、前世のアクアに逆恨みして、今代のアクアに仕返しをしているのか?」


 キッと強い視線を雄一に向ける精霊王は「そうよっ!!」と叫ぶと同時に雄一に火球をぶつける。


 地面を滑るようにして耐えた雄一を見つめる精霊王は嘲笑う。


「だから、私はアグートを優遇した。そして、自分の半身を捧げる加護を与える相手を見つけた。その時、勝った、と思ったわ。初代精霊王が選ばれた理由は心を捧げるに値する相手を見つけた事が決め手になったのだから……それなのに!」


 精霊の言葉を受けて、今まで優遇されてた事実と理由を知り、アグートは顔を青くし、ホーエンは苦虫を噛み締めたような顔をする。


 雄一に指を突き付ける精霊王は憎しみに染まった瞳で見つめて腹から響く声で言う。


「水の精霊のアクアにも相手が見つかった。同格であれば、優遇して何とでもできた。でも、本来なら相反するはずの神の力と精霊の力を共存させ、そこの男、火の加護を受けし男も凌駕してみせた。そのうえ、四大精霊獣が私、精霊王との契約を破棄してまで付いて行く……許せるはずがない!」


 興奮し過ぎて肩で息をする精霊王を見つめる雄一は口許から垂れる血を手の甲で拭う。


 静かな瞳で見つめる雄一が口を開く。


「どうして、お前は気付かない。今の話を聞いてるだけでも分かる。精霊王に求められるのは相手を信じ、相手に優しくあれるかどうかだという事に? 同じ精霊だから属性の優劣はあっても力に大きな差はないんだぞ?」

「ウルサイ! そんな理由では選ばれてない!!」


 そう叫ぶ精霊王が放つ火球を雄一は明後日の方向へと弾き飛ばす。


 雄一の行動は先程のようにギリギリではなく余裕があった事に気付き、一歩後ろに下がる。


「忘れた? さっきアイナが言った計算違い」


 先程からどれほど雄一が劣勢になろうとも動かなかった四大精霊獣の1人、エリーゼが首を傾げる。


「どういう事……?」


 目の前の異常事態に恐怖を感じ始める精霊を見つめるポプリもまた分からないようで呟く。


「何がどうなってるのです?」

「まったく、年中発情して頭が茹ってるのではないのかの?」


 キセルを吸って、紫煙を吐く巴に見上げられて、眉を寄せるポプリに説明する。


「お前も見たはずじゃ、ザガンでクソガキ、レイアとヒースの戦いを?」

「えっ?」


 そこでいきなりザガンでのレイアとヒースの戦いの話が出るのか分からないポプリが素っ頓狂な声を上げる。


 その話を聞いていたホーエンは事情はさっぱり分からないが雄一の内側の変化に気付き、納得したように頷く。


 みんなが見つめる先にいる雄一の白いオーラに違う色が混じり出す。薄い朱色が混じっていくのに気付いたポプリが理解に至り、声を上げる。


 それを見た巴が、やっとか? と言いたげに鼻を鳴らす。


「クソガキが出来るような事をご主人が出来ん訳ないのじゃ」

「そう、加護の力に頼りっきりで、他の人が出来るような事をユウイチが出来ないと思ったのが1つ目の計算間違い」


 巴の言葉に追従するエリーゼが、無表情に見えるが僅かに口許に笑みを浮かべる。


 雄一が纏う朱色のオーラが炎のように力強く煌めき、精霊王は、「嘘っ……」と呟き、信じられないモノを見るように後ずさった。

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       雄一の孫の世代             こちら亜人ちゃん互助会~急募:男性ファミリー~  どちらも良かったら読んでみてね? 小説家になろう 勝手にランキング
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