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267話 不動の山、遂に出撃らしいです

 ここから10章が始まります。

 よろしくお願いします。

 雄一が異世界トトランタにやってきて6年の歳月が流れた。


 誕生祭、全ての者の誕生日である元の世界で言うところのお正月に14歳になったゼクスこと、ゼクラバースがペーシア王国の末娘ハミュとの結婚式が行われた。


 誕生祭とナイファ国の次期国王に指名されてホヤホヤの王子の結婚と明るいニュースにナイファ国内だけでなく、隣国まで巻き込む大きな祭が開催された。


 その祭の主人公であるゼクスとハミュは、誕生祭の祝辞を述べた後のゼクスがした行動は祭が終わってもしばらく酔客や街角の主婦達の間で語られる事になる。





「誕生祭でお忙しい日にお集まり下さった紳士淑女の皆様、まずはお礼を申し上げます。私、ゼクラバースはペーシア王国第3王女ハミュを正妃に迎える事になりました」


 城の周りにこれ以上集められないというぐらいのいる中、エルフの秘宝の一つの拡声器を用いて、ある商会が主導で開催されたゼクスの結婚式会場を見下ろせるベランダにゼクスとハミュが並んでいた。


 大勢の貴人、只の民関係なく満遍なく見渡しながらゼクスがそう言うと、おめでとう、などの祝いの言葉が飛び交うのをゼクスとハミュがにこやかに手を振ってみせる。


「今日、誕生祭に婚姻に至ったのは、きっとご結婚された皆さんには1度はあると思われる事を避ける為……そう、結婚記念日を忘れて奥さんに怒られないようにする為です!」


 ゼクスの言葉を聞いた出席者達は噴き出す。


 これだけの人数が注目するなかで冗談を言えるゼクスを貴族達は胆力がある王子、いずれ王に成るものか、と感心し、民達からすると優しい王様の誕生を夢を見させて貰え、未来に希望を感じているようだ。


 笑みを浮かべるゼクスが手を上げると皆が笑いをおさめる。


「それ以外で、もう一つ楽しいお知らせをするのに今日という日に婚姻を結ぶのが良いと思う事があったので今日に調整しました」


 ゼクスの言葉をそのまま受け取るとゼクスの結婚より重き話である事を示す。


 どんな内容かと生唾を飲み込む聴衆者達にゼクスは高らかに語る。


「来年の誕生祭の話になります。気の早いと思われるかもしれませんが聞いてください。その日に私と同じように結婚をされる方がおられます。皆さんも良くご存じのあの方です。ついに諦められました。逃げる事ができない状態に追い込まれました。そう、皆さんが『ノーヒットDT』と呼ぶあのお方が!」


 ゼクスの身ぶりにも熱が入り、それに釣られるように聴衆者達から期待するような声が漏れる。


 何かを思い出したような顔をしたゼクスが付け加える。


「大事な事を先に言うのを忘れました。私の妻は1人で定員ですのでねじ込もうと画策されてた方は来年の誕生祭までにダンガにあるコミュニティと学校に関わるこの方のところに嫁がせてくだ……」


 そうゼクスがシレっと言ってのけた瞬間、聴衆者達から爆笑が生まれ、その中にイエローライトグリーンのオーラも生まれるとゼクスの下に飛び出す。


 飛び出したイエローライトグリーンのオーラの塊がゼクスの胸倉を掴むが警護の兵もお腹を抱えて動く素振りも見せない。


「おい! ゼクス、俺を殺す気か? 合法的に殺す気なんだな? そうなんだな?」

「ユウイチ父さん、助けてください。僕には嫁は1人で精一杯なんです。子供が困ってたら助けてくれるんですよね?」


 ゼクスと雄一のコントのようなやり取りが始まると先程より大きな笑い声が響き渡る。


 胸倉を掴んだ雄一に揺さぶられながらゼクスは続ける。


「僕は1人じゃない! 満点ですよね?」

「うがぁぁ!!」


 以前、雄一とのやり取りのオンパレードをされて雄一がついに壊れる。


 ゼクスの隣でポケェーとしていたハミュが再起動したようにビクッとすると雄一に視点を合わせる。


 そして、ペコリと頭を下げてくるハミュ。


「ご挨拶が遅れました。この度、ゼクス様の妻に成る事になったハミュですぅ。ゼクス様が言うにはハミュ達を助けてくれるとのこと、本当にありがとうございます?」


 お礼を言いつつも首を傾げるハミュを見て、思わず脱力した雄一はゼクスを掴んでた手を離して屈み込む。


「気が削がれた。相変わらず、この子の浮世離れぷりは凄いな。それはそうと、お前のやり口があの馬鹿2人に似てきてるぞ?」

「やっぱりそう思いますか? 最近、ミラー様とエイビス様と会う度に幻聴なのか良く聞こえる言葉で『こーちらの水はあーまいぞ』と言われてるような気がするんです」


 居心地がいいんですよ、とスッキリした笑みを見せるゼクスに雄一は「そっちに行ったら真っ当な人に戻れなくなる」と力説する。


 隣にいるハミュも意味は分かってないだろうがゼクスと一緒に笑みを浮かべる。


 国は滅ばないだろうが、雄一の精神は滅びそうな予感がヒシヒシする雄一は生唾を飲み込む。


「よし、手に負えないガンに成る前に俺が始末してやろう」


 再び、胸倉を掴むと持ち上げる雄一にペーシア王国側の主賓席から「殺せ、殺せ!」と騒ぐオッサンの姿があったがすぐに王子2人に取り押さえられて奥に引っ込められる。


 目尻に涙を溜める雄一に悟り、全てを受け入れた人のような顔をするゼクスが言い切る。


「例え、今、僕を倒しても第2、第3の僕が……」

「もうお前は手遅れだぁ!!!」


 そう叫んだ雄一が上空高くにゼクスを放り投げるが楽しげに笑われる。


 ゼクスに仕込まれた拡声器のマイクが楽しげに笑うゼクスの声を拾い、会場に響き渡る。


 落ちてくるゼクスの襟首を掴んで地面に降ろすと雄一の前に立つハミュが頭を下げてくる。


「ハミュもお願いしますぅ」


 この夫妻には勝てない予感に雄一は静かに涙を流した。





 という事があり、雄一にとっては不本意ではあるが、歴史で語られる出来事になる。


 ちなみに、後に、この日の事は『前夜祭』と呼ばれた。



 そして、誕生祭から2カ月の月日が流れる。





 誕生祭の後片付けに追われる中、ゼクスの結婚した事による新居などや、政治的な立ち位置をはっきり王位を譲る準備にナイファ国内では慌ただしい2か月を過ごす。


 バタバタではあったが滞りなく、王位はゼクスに引き継がれ、ミレーヌは後見人という形で息子を後ろから支える立場で収まりがつく。


 そんなお祭りモードが抜けきらないナイファ城内を一人歩く女性が自分の執務室に入る。


 自分の席に着いてクッションの効いた背凭れに身を預けると漏れる吐息。


 少女のような美しさを残す赤髪の女性はナイファ国の女王、いや、先程、元女王になったミレーヌであった。


 物想いに耽るように天井を見つめるミレーヌの執務室のドアをノックする音がする。


「入れ」


 間髪いれずに入室の許可を出すとそこに現れたのは、戴冠式が一段落した宰相一派であった。


 ミレーヌの前に来ると頭を垂れる宰相が口を開く。


「……長い、本当に長い間、お疲れ様でした。こちらでできる準備は全て完了しております」


 肩を震わせながら報告する宰相。宰相の後ろにいる者達の中には我慢の限界が超えたのか声を洩らし、嗚咽を零す者が現れる。


 そんな宰相達を見つめるミレーヌも泣きそうな目をしながらも優しく見つめる。


「ありがとう。今までの貴方達の献身、感謝の言葉以外ありません」

「いえ、女王……ミレーヌ様! 私達の力が及ばなかった為に御苦労を強いりました……」


 目尻に涙を溜めた宰相が顔を上げるのを見つめるミレーヌは母性に溢れた表情でゆっくりと首を横に振る。


「そんな事はありません。貴方達が頑張ってフォローしてくれたから、自分を研鑽する事ができました。胸を張ってください」


 微笑を浮かべるミレーヌの後光でも見てるかのような宰相一派がミレーヌを眩しそうに見つめる。


 静かに立ち上がるミレーヌは窓の外を見つめる。


「そのおかげで間に合ったはずです。ええ、きっと間に合いました!」


 声を震わせるミレーヌの正面のガラスに映る顔は下唇を噛み締めて泣くのを耐えているのが映る。


「みれーぬちゃん、あと、ふたちゅで、さんちゅうちゃいになっちゃうぅ!」

(ミレーヌちゃん、後、2つで30歳になっちゃうぅ!)


 ミレーヌの魂の叫びを受けた宰相も遂に涙腺が決壊して嗚咽を漏らす。


 肩を震わせるミレーヌは化粧直しをする為に執務室を出ていこうとする。


 出ていこうとするミレーヌに頭を下げる宰相達に言う。


「ゆういちちゃまがいる、だんがにいってくりゅぅ!!」

(ユウイチ様がいる、ダンガに行ってきます!!)


「お気をつけて……」


 宰相達が声を震わせてミレーヌを見送る。


 みれーぬ、にじゅうはっさい、しゅつげき!


 ついに山が動いた。

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       雄一の孫の世代             こちら亜人ちゃん互助会~急募:男性ファミリー~  どちらも良かったら読んでみてね? 小説家になろう 勝手にランキング
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