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247話 ダンジョンマスターらしいです

『訓練所、踏破おめでとう!』


 ノンビリとした声と共に激しい光に包まれたアリア達は光から目を守るように手を翳す。


 その激しい光は一瞬の出来事で、真っ暗だった辺りは程良い光源を放つ。


 光でぼやける視界で、辺りを見渡すと何もないと思っていた中央に柱の上に大きなオーブがあり、そこから照らされるようにして男の人影があった。


 そこには黒髪でぼさぼさで手入れされた形跡がない髪型、どこか犬を彷彿させる20歳になってないと思われる少年が眠たそうな目をしてアリア達を見つめていた。


『僕はマサムネ、マー君と呼んでくれていいよ。いや~えらく長い間、起動されてない感じが……うわぁ、127年も到達者がいなかったの?」


 光で眩んでいた目も治り、ちゃんと目の前に写されるマサムネが見えているが、心の整理が追い付かない。


 別に早口という訳ではないが、口を挟む事ができずに茫然として見つめるアリア達。


 その様子に首を傾げるマサムネが声をかける。


『あれ? もしかして、音声出てない? それとも言語が変わってる?』

「い、いえ、聞こえてますし、言葉も分かりますが……色々想定外過ぎて困ってしまってます」


 いち早く立ち直ったダンテがどもりながらマサムネに返事を返す。


『ん? どういうことだい?』

「実はですね……」


 ダンテはここに来た経緯を話し、ヒースがそれに付け加えるようにして書物で最下層がここである示唆された文章を見てやってきた事を伝える。


 2人から説明を受けたマサムネは長い溜息を吐いた後、頭をボリボリと掻く。


『えらく簡単な方法で攻略したつもりになってるね。それで皆が帰ってたから、ここまで来る人がいなかったのか……おそらく、39階層を攻略できない人を一人前と扱う為に特別処置が今では、本ルートと勘違いされちゃってるのね』


 しかも、最短ルートを辿って終わらせてると知ったマサムネが『それじゃ、意味ないでしょ?』と溜息を零す。


 どうやら、アリア達が攻略してきた形が本来の通常だったらしい。


「色々、聞きたい事が一杯できたの。まずは貴方は誰なの?」

『僕はマサムネ、これは言ったね? 訓練所、ああ、君らが言う『試練の洞窟』を作り出した者のパーソナルデータだよ』


 パーソナルデータ? と首を傾げるスゥにマサムネはオーブを指差して『オーブに込められた記憶だよ』と言い直してくる。


「という事は、本体のマサムネは死んでるの?」

『多分ね、僕は普通に人間だったし、ここに記憶を写された段階では特別寿命が延びるような出来事はなかったけど、イマイチ、自分でも否定しきれないけどね』


 弱ったように笑うマサムネにどういう事かと問うが、良く分からないと言うマサムネは、答える気がないのか、本当に適当に言っただけなのか区別が付かないが煙に巻かれるように質問を封じられる。


「じゃ、質問を変えます。マサムネさんは、ここを訓練所と言ってるけど、何の為に作られたんですか? まさか本当に新人教育の為じゃないですよね?」

『いや、本当に新人教育の目的もあったんだよ? 君達がグリフォンと戦った場所まで行くだけならね? さっき言っただろ? 39階層を攻略できない者達の特別処置と』


 そして、オークキングを倒して一人前と認めてたようだ。たまに運が悪いとグリフォンが出るようにしてたのはマサムネの趣味らしい。


 オークキングにやっと勝てるような相手がグリフォンと遭遇した時の恐怖を考えると最悪の性格だと思う。だが、すぐに出入りすれば回避でき、それをしない者達は自分の実力を計れない馬鹿という事で仲間に迷惑をかける前に戦線離脱させるという冷たい効率を考えられた手口であった。


『まあ、君達のように正規の形でやってくるとオークキングは出てこないけどね』


 正しい手順でやってきたアリア達は最初からオークキングという選択肢はなかったようだ。


『で、訓練所の本当の目的だけど、4か所ある施設で行われる試練を受ける為の試験をここでしている』

「何の試練?」


 アリアがマサムネに問うと、『その辺りもやっぱり失伝してるか』と、ぼやくが説明してくれる。


『四大精霊獣は知ってるかい?』

「知ってるどころか、家に4人ともいる」


 何でもない事をサラッと言うアリアにヒースは驚き過ぎて目を剥いてダンテに口をパクパクさせながら、ジェスチャーで本当か問うと苦笑いしたダンテに頷かれる。


 これにはマサムネもビックリしたようだったが、説明を続けてくれた。


『じゃ、四大精霊獣と対なる四大邪精霊獣は?』

「知らない」


 そう答えるアリアは他の面子に一応確認するように見るが首を横に振られる。


 少し考える素振りをしていたダンテが顔を上げるとマサムネを見つめる。


 ダンテの様子を見てマサムネは笑みを浮かべる。


「4つの試練、つまり……」

『君は察しがいいね。それに頭の回転も良さそうだ。多分、思ってる通りで、四大邪精霊獣と戦う為に必要な試練だよ』


 やっぱり……と呟くダンテは、その先を想像して芳しくない顔をするが、他の面子は理解できないようでレイアが頭から湯気が出そうな顔しながら肘で突いてくる。


「さっぱり理解できねぇ。アタシでも理解できるように教えてくれ」

「うん、でも僕がする必要ないと思う。マサムネさんが説明してくれるだろうし、それでも理解できなかったら後で僕が説明し直すよ」


 そうですよね? と問うダンテに頷いてみせるマサムネがした説明はこうだ。


 全てのモノは循環する。それは精霊の世界でも同じで生み出すモノが四大精霊獣であれば、それを行う過程で生まれた不純物が四大邪精霊獣という具合になる。


 2つは、まったく違うモノであり、同時にまったく同じモノ。


 四大精霊獣と四大邪精霊獣は相成れないモノだが、決して争わない。


 何故なら、相手を殺そうとする行動は自殺をするのと同義であり、同格の存在だから勝負がつかない。


 そう説明されたレイア達であるが、レイアが必死に話に着いていけるように頭を捻りながら質問する。


「確か、精霊獣が死ぬとその属性の力が弱まり、大変な事になるって聞いたけど、そんな邪精霊獣と戦っていいのか?」

『邪精霊獣は精霊獣と違って、そう簡単には消滅しない。凄まじい力の持ち主であれば消滅させる事は可能だが、精霊獣が存在する限り、数年で復活してしまう。その数年を数十年、数百年にする為に試練を受ける必要があるんだよ』


 答えてくれたマサムネの言葉を受けて違う疑問が生まれたスゥが続けて聞く。


「どうして、そんな存在である邪精霊獣と戦わないといけないの?」

『さっき説明した不純物に問題があるんだよ』


 マサムネが困った顔をして説明を続ける。


『新しいモノを生み出すとどうしても不純物が生まれる。料理を作るとどうしても捨てるモノが出るように、それはドンドン増えていく。すると、それは悪さをするんだよ。訓練所の外は砂地になってるだろ?』

「あっ、そう言う事なの? 戦う事で力を削ぐ。不純物を破壊して減らすのが目的という事なの?」

『その通り。外の砂漠化は土の邪精霊獣が原因だよ。かなり前に封印されたと聞いたけど、力を削がないと状況は好転してないから何も変わってないようだね』


 肩を竦めるマサムネが目を瞑ると眉を寄せる。


『ん? 土の邪精霊獣の傍に人がいる? そうか、結界に綻びができるサイクルが今か』


 マサムネがそう言うがアリア達には見えていないから分からないが、その人物が雄一かどうか気になったアリアがマサムネに言う。


「マサムネ、その人はどんな人?」

『見たいのかい? こんな人だよ』


 そう言ったマサムネは掌をアリアの額に当てる。


 当てられると青竜刀を杖のようにし、イエローグリーンライトのオーラを立ち登らせ、暗闇から放たれる大きな石柱をオーラで弾き返し続ける雄一の姿がイメージとして伝わる。


「ユウさんだ!」


 まったく土の邪精霊獣の攻撃をものともしない雄一の姿に安堵と誇らしさを伝える。


「ミュウも見たい!」

『見る必要はないと思うよ? 力量が見て取れる範囲でも圧勝と分かるぐらいには実力差あるから心配するだけ無駄だよ……と言いたいけど、不味い状況になってきてるな』


 そう言われて、固まるアリア達を見つめるマサムネが指を鳴らすと空中に映像が浮かび上がる。


 それはザガンから見える外の景色であった。


 映像を見て固まるアリア達。


『さすがの彼でも厳しいかもしれないな』


 それに驚くアリア達は、雄一が苦戦するという発想がない。それが危ないかもしれないという話になれば当然の結果だったかもしれない。


 同時にヒースは顔色を悪くしていた。


「お父さんはもっと危ないかもしれない……」


 そう言って固まるヒースとどうしたらいいか分からなくなってるアリア達をダンテが喝を入れるようにして掌を強く打ちつける。


「ここでグダグダ言ってる場合じゃない! すぐに外に出よう。考えるのはそれからだ」


 ダンテの言葉を受けたアリア達はお互いの顔を見合わせて頷くと最下層から飛び出していく。


 それを見送るマサムネであったが、アリア達の後ろ姿が見えなくなった時、あっ! と声を上げる。


『試練の合格の証を渡すのを忘れた……』


 マサムネの声が一人になった室内に寂しく響き渡った。

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