228話 他人に教える事は良い復習になるそうです
ついにスマホの充電池がやばい状況になりました。充電しながらじゃないとスマホゲームができなくなったとですよ……最短、立ち上げて10秒でスマホが強制シャットアウトになり、充電しながらじゃないと立ち上がらないのですよ……
保険に入ってたので5000円ぐらいで同じぐらいの機種と交換できたので申請してきました!
場所は地下9階層。
アリア達はオークの群れを相手に戦っていた……いや、他人から見たら、アリア達がオークを蹂躙しているようにしか見えない。
片っ端から薙ぎ払うようにオークを殲滅するメンバーには様子見をすると言っていたヒースの姿もあった。
何故ならば、アリア達の背後には傷を負った4人パーティの少年少女の姿があった為である。
アリア達が階層毎のモンスターを絶滅させるのかというような狩り方をしながら地下に潜って行くとヒース曰く、メイン通路、最短距離の通路にやってくると運の悪いパーティがオークの群れに遭遇していた。
メインの通路だから当然のように後続や10階層手前で待機する冒険者見習は沢山いるが、傷を負ってオークにターゲットロックオンされたパーティを生餌にして通り過ぎたり、見て見ぬふりを決め込まれて見捨てられている所にアリア達はやってきた。
「アリア、いくぞ~」
オークを両手で持ち上げたレイアがアリア目掛けて投げ放つ。
レイアが投げたのを見つめるアリアの瞳がキラリと輝く。
モーニングスターをバットのように構え、スイング体勢に入るが引きつけるように溜める。
「見切った! 直球、ど真ん中!!」
「いや、アタシは野球してるつもりはないから!」
変化球など投げたりして空振りさせるつもりもなかったレイアがあきれ顔で姉のアリアを見つめる。
ちなみに学校の子供達に雄一が野球を教えて、学校に通う子達であれば野球を知らない子がいないほど浸透していた。
レイアの突っ込みを無視したアリアが見事なスイングスピードで振り抜き、オークを壁に叩きつける。
「んっ! 逆転満塁ホームラン!」
「あ、うん。アリアが満足ならアタシはいいよ、それで」
巴の一件の前であれば、ムキになって再戦を申し込んでいたレイアであったが、心の面でも成長を果たし、余裕が生まれ始めていた。
そんな双子漫才をしているのを苦笑いするダンテがアリアに声をかける。
「もうオークに僕達を通り抜けて後ろを攻撃するのは無理だろうから、後ろの人達に回復魔法をお願い」
「んっ、分かった」
そう言うアリアはモーニングスターを仕舞うと後ろで止血をしながら、アリア達を放心して見ていたパーティに近寄る。
そのなかの盾持ちの少年が一番傷が深いと見たアリアは手を翳しながら話しかける。
「傷を塞ぐから無駄な力は抜いて」
脂汗を流しながらではあったが頷く少年の反応を見て癒し始めるアリア。
痛みから顔を顰めていた盾持ちの少年の顔から苦痛に耐える表情が消えて安堵が広がる。
「あ、ありがとう」
「礼は要らない。無駄口叩く暇があるなら、同じ盾持ちなのに小柄なスゥができて、大柄な貴方ができない理由を盗むつもりに1秒でも長く見る」
アリアは前線で盾を叩きつけてオークの群れを一か所に固める事に念頭に時折、オークを切り裂いていくスゥを指差して盾持ちの少年に言うと次に傷の深そうな杖持ちの少女に癒し始める。
アリアにそう言われた盾持ちの少年は、二の句も告げないが、その通りだと思い、仲間はアリアが癒し始めているので任せてスゥに熱い視線を向ける。
「貴方は魔法使い?」
「あっ、はい、私は風の魔法使いです」
癒され始めて、痛みから解放されて会話できるようになった杖持ちの少女に話しかける。
頷くアリアはダンテを指差す。
「後衛の魔法使いの仕事は魔法を打てる状況を作って貰う事じゃない。魔法を使える状況になるように前衛に指示を与えて、それをできるようにサポートする事。あのエルフは水の魔法使いだけど、あれも1つの答え。貴方の役割をしっかり持ちなさい」
アリアが指すダンテはレイア、ミュウ、スゥ、そして、ヒースに下がる指示を出すと追撃してくるオークに小さい水球を牽制目的で叩きつける。
足を止めた所にデカイ氷柱を作りだすとオークが固まる中央に放つ。
オークの沢山巻き込んで大打撃を加えたダンテは4人に畳みかける指示を出す。
「普段は情けないけど、戦いになるとなかなか気合いの入るウチの司令塔」
盾持ちの少年と同じように黙り込みながらダンテに熱い視線を送る杖持ちの少女は若干見つめる瞳に違う熱が籠っているような気がしたがアリアは無視する事にした。
次に身軽な格好をする少年に近づいて、癒し始め、前の2人のように話し始める。
「貴方は、スピードと手数で勝負するタイプ? それだったら、前線で戦う、あの2人……」
アリアは指を指したはいいが、迷いを見せて手を降ろす。
「見本としてお勧めしていいか、難しい所」
「聞こえってんぞ、アリア!!」
「がうぅぅ!!!」
オークの群れに特攻していく2人は一発も攻撃を貰うどころか、当たる未来が見えないほど、余裕の表情で紙一重で避けていく。
レイアは弾丸のように突っ込み、ミュウはまるで旋風のように激しく両手に握る短剣を振り回しながら闘う。
「どこか見習うとこがあるといいな~ぐらいで見とくといい」
アリアのどこか投げやりな言葉に困った顔をする身軽な格好の少年を放置して、神官服姿の少女を癒し始める。
「貴方は私と同じ回復メイン。自分の傷もそうだけど、盾持ちに回復してあげられない程、魔力が枯渇してる。見立てが正しいなら魔力が乏しいのじゃなく、魔力運用が下手。一々、傷を負った相手の傷痕が消えるぐらいまで癒してるんじゃない?」
「だって、痛いのを耐えてる相手が可哀想。傷だって残らないほうがいいと思って……」
そう言ってくる神官服姿の少女にアリアは首を横に振る。
「それは優しさじゃない。街で過ごしてる時であれば、それでもいい。でも、貴方は冒険者、見習いでもね。傷を塞ぐ程度に留めて、癒していれば、戦い続ける事も逃げる事もできた」
アリアは、神官服姿の少女に「傷が残るのが嫌なら冒険者を止めなさい」とキツイ事ではあるが正論を伝える。
俯く神官服姿の少女にアリアは、自分自身の胸に掌を当てる。
「貴方は私を見習うといい。今の回復だけでも逃げれる程度には回復したはず。だけど、私は今ぐらいでいいなら、まだまだ同じ事ができる。貴方がそうすれば、このパーティは生き残る確率が跳ね上がる。そして、自分を磨く、この場合、女を磨く。頑張って磨いている私はついにユウさんをメロメロにする事に成功した!」
「アリア、後半、嘘吐いて、明らかに話を盛ったよね?」
アリア達寄りにいたダンテが2人が話す声がはっきり聞こえており、反射的に突っ込みを入れてしまう。
振り返ったアリアの視線に剣呑なモノが混じっている事にビビるダンテ。
「帰ったら、2人っきりで『お話し合い』しよう。大丈夫、夕飯までには済ませる」
「ひぃぃ!」
虎の尾を踏むどころではなく、ドラゴンの尾を踏んでしまったダンテは顔を青くさせるが、レイア達は「ナイス突っ込み」と褒め称えるが助ける気は皆無であった。
ヒースは苦笑いをしているが、アリアの違う一面が見れた事が嬉しいらしく満足そうであった。
それから、10分後にレイア達はオークの群れを壊滅させた。
オークの群れに襲われてたパーティの盾持ちの少年が代表でアリア達に礼を言ってくる。
「本当に有難う。助けてくれただけでなく、俺達に足りない事までアドバイスしてくれて」
「そんなにたいした事は言ってない」
そう言うアリアに盾持ちの少年は首を横に振ってくる。
「俺達は、君達がたいした事じゃないと思ってる事すら出来てないだけでなく、考えもしなかった。『試練の洞窟』を出て、皆で今日の事を話し合いをするよ」
「そうするといいの。後、4人とも基礎体力が明らかに足りてないから、体を虐めるぐらいに走りまくる事を勧めるの」
スゥのアドバイスに少年少女は、何も言い返せないとばかりに弱った笑みを浮かべると全員で頭を下げると『試練の洞窟』を出る為に登る道を目指して歩き出した。
それを見送ると結界の内側でアリア達に目を合わせられないバツ悪そうな顔をした冒険者見習達の姿にアリア達は気付くが歯牙にかけない。
「なあ、ヒース。あそこが10階層と繋ぐ結界?」
「ええ、あそこがキャンプ地として利用されてる場所です」
レイアが結界を指差す動作だけでもビクつく様子を見せる冒険者見習達。
お前らなんかを相手にする気もない、とばかりに鼻を鳴らすレイアは皆を見渡す。
「今日は腕慣らしが目的だったから、これぐらいにしとこうか。調子に乗って進んで馬鹿したら帰り辛くなるしな」
頬を掻きながら言うレイアを見るアリア達は何故か、などと聞き返したりしない。アリア達もレイアと同意見だからであった。
それと、先程のパーティにまた不運が降りかかったら笑えないから、という思いもあったので、すぐに踵を返して歩き始める。
アリア達を見送るように結界の中にいた冒険者見習達にアリア達は鮮烈なデビューを果たした。
これを機にアリア達は冒険者見習達に強者として認知され、浸透する事になる。
そんな事を露にも思ってないアリア達は、それを後日知る事になるが、今のアリア達はそれぞれ、戦いと皆無な事を考えていた。
なかでもレイアは頭の後ろで手を組みながら天井を見上げながら呟く。
「今頃、アイツは何してるだろ?」
その呟きを聞き逃さなかったアリアは優しげな笑みを浮かべた。
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アリア達が『試練の洞窟』で戦い続けてた頃、雄一達は街を出たすぐぐらいの所で向き合っていた。
「以前のパラメキ国との戦争の時に決めた。黙って放置をしないという約束を守る意味で話はしたが、俺は今回、お前達が来る事を良い事だと思っていない。これは単純にまだ、お前達の力が足りてないと危惧してるからだ」
静かな瞳で見つめる雄一がテツ達3人に迷いもなく言い切る。
そんな雄一に見つめられ、かけられた言葉は辛辣ではあるが、純粋な心配から出ている言葉である事を3人は理解してしまい、悔しそうな顔をする。
「……それでも、僕は置いて行かれたくはありません。もしかしたら、本当にユウイチさんの足を引っ張る事になるかもしれない。我儘なのは承知してます……」
「テツ、アタイも同じさ。アタイはユウの隣を歩ける事を目標に頑張ってきたさ。ユウが1人でどうしてもやらないといけない事なら邪魔する気はないさ。でも!」
「そうです。私は、ユウイチさんと共にありたい。そして、貴方が見てる世界を少しでも多く見たい。勿論、女王としての自分を放棄する気はありません。両立して両方とも掴み取ってみせます」
態度は遠慮気味であるが、言ってる内容に雄一は苦笑いを浮かべる。
「殊勝なのは態度だけだな、お前ら? まあ、そんなお前らは大好きだが……」
そう言うと雄一の瞳が細く絞られる。
瞳を細めるだけで、テツ達3人は凄まじいプレッシャーを受ける。
「今回は本当にお前達の手に余ると俺は見ている。少し真面目に相手してやる。それを凌ぎきったら行くのを止めん。好きにしろ」
そう言うと雄一の全身が淡いイエローグリーンライトのオーラを纏う。
雄一が言う、少し真面目という意味合いを理解した3人が目を剥くようにして1歩後ずさる。
「やるか?」
「やってみせます!!」
雄一の言葉に吼えるテツの言葉が引き金になり、ホーラとポプリが散開するとテツは冷たい汗を掻きながら腰にある相棒のツーハンデッドソードをゆっくりと抜き放った。
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