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25話 これから、よろしく。お前が俺の相棒

 平日も休みの時も投稿時間を統一しようかと試験中。

 色々試すかもしれないので、更新の時間がまばらになるかもしれませんので、ご了承ください。

 マッチョの社交場を後にしようとした雄一だったが、エビぞりしたままのミチルダに廻り込まれる。


 なんとなく、逃れる事ができない予感はしていた雄一は冷静に肩にいるミュウに、


「ゴゥ、ミュウ!」

「がぅ」


 ミュウは、雄一の肩を蹴るようにしてジャンプする。


 ドロップキックをするように、真っ赤なパンツの蹴り易そうな場所を的確に狙った攻撃をする。


 狙いは違わず、めり込むようにミュウの小さな足が激突する。


 ミチルダは、両手で剃髪の頭を抱えて、声なき悲鳴を上げていた。


 それに合わせたかのように、雄一も前屈みになり内股気味になるが、何かを振り切るようにして元の体勢に戻る。


 一仕事終えたミュウは、再び、雄一の肩に昇り、気持ち悪そうに雄一に言う。


「柔らかいフニっとした、生温かいモノで気持ち悪い」

「ミュウ、けしかけた俺が言うのもなんだが、今後、男のあそこを攻撃するのは、考えてしような? 殺してもいいと思える相手以外にはしないようにな?」


 雄一の言葉に、ガゥと頷くミュウを見て安堵する。


 自分が無闇に蹴られる可能性だけは回避されるようであると。


「主様、アレってそんなに痛いのですか?」

「ああ、男にとって、死ぬ次の苦しみと言っても大袈裟じゃないと思うぞ?」


 ミチルダは未だに声なき悲鳴を上げながら、丸まったり、横になりながら直立するようにしたりと震える。


 その姿を見る女からすれば、危ない薬を使ってる人なのかと思わせる。


 しかし、雄一はあの苦しみを理解する者、こうなるとは思ってなかったとはいえ、責任の一端はあると判断した。


 恐る恐る、ミチルダの容態を確認する意味で、近寄って声かけする。


「大丈夫か? ミチルダ」

「プ、プリティボーイ……何やら、見た事がない扉が見えて、触れれば開けれそうなの……」


 それは、開けてはいけない扉だと叫び、ミチルダの頬を平手打ちにする。


「ハッ、ここは、どこ? 私は、美人! そう、ミチルダよっ!!」

「どうやら、戻ってきたようだな、戻って来ても問題なところが頭が痛いところだが」


 ふらつきながら立ち上がるミチルダは、分かり易いぐらいに内股になり、雄一を見ながら言ってくる。


「北の森に行ってきたのね。話は中で聞くから入って」


 極端なほど、オネェ歩きになっているミチルダの後ろ姿を見つめながら、雄一はコメカミに汗を流す。


「まさか、潰れてないよな?」


 想像するだけで、雄一の股のモノがキュンと小さくなるような感覚に襲われるが、無事であると信じる事にした。





 再び、マッチョの社交場のドアを開け、中に入るとミチルダはカウンターにいるサリナに何か伝える。


 チラ、と雄一をサリナが見たので、雄一は男前の顔で歯をキラリと輝かして雄一スマイルを送る。


 そんな雄一を見てクスリと笑って、会釈をすると店の奥へと消えていくのを雄一は鼻の下を伸ばして見送る。


「これは、サリナさん、脈アリだなっ!」


 思わず、独り言が漏れる言葉を聞いていた乙女達が馬鹿にするような声音で言ってくる。


「まったく脈なしさ、あれは、ヤンチャな弟を見る目さ」

「その通りです。男性は、微笑まれるだけで、気があるとよく勘違いされる典型ですよ? 主様」


 間髪入れずに言ってくるホーラとアクアの言葉に、崩れ落ちそうになるが、ギリギリで耐えた雄一は、


「そこから始まるラブストーリーだってあるかも……」

「「ない」」


 今度は、最後まで言わせて貰えず、否定されて、雄一はホロホロと涙を零す。


 頭をポンポンと叩きながら、ミュウが言ってくる。


「大丈夫。ミュウが一緒」


 雄一は、「ミュウ……」と頭の上のミュウの手を取る。


「優しいな、ミュウは、何か欲しいモノあるか?」

「ミュウ、今日、肉が食べたい。骨が付いてるヤツ」


 よしきた! と雄一が了承するとミュウは、ガゥゥ!と叫びながら、肩の上に立ち上がる。


 そんな2人を、やれやれと見つめるホーラとアクア。


 ミュウと楽しく騒いでいると、ミチルダに苦笑されながら声をかけられる。


「ごめんねぇ、楽しそうにしてるところ申し訳ないけど、試験のリンゴ出してくれる?」


 踊っていた雄一は、はっ! と我に返り、若干頬を染めながら風呂敷にあるリンゴを手渡す。


 受け取ったミチルダは、軽く嗅ぐようにして、一口パクリと食べる。


「うん、間違いないわね。これは確かにあの森のリンゴだけど、採ったの昨日の明るい内じゃない?」

「食べただけで、そんな事分かるのか? 確かに、昨日採って帰ってきたけど、来るのは今日に日を改めたんだ」


 なるほどねぇ、と呟き、リンゴを食べたそうにしているミュウに残りを笑いながらあげる。


 嬉しそうに受け取ったミュウに「今度は溢さないでくれな?」と言うと、ガゥと機嫌が悪そうな声を出して頭をペシペシ叩いてくる。


「じゃ、次は逆刃刀を渡してくれる?」


 言われるがまま、雄一は逆刃刀を渡す。


 受け取ったミチルダは、一目見ただけで分かったようで、呆れたように溜息を吐きながら雄一を見てくる。


「まさか、ここで試し抜きした以外で、一度も鞘から刀を抜いてないなんて、喜ぶべきか、悲しむべきか悩むところだわ」

「さすがに、抜かずにそこまで分かるのはおかしいだろ?」


 うふふ、と笑うミチルダは種明かしをしてくれる。


「鞘に毛を挟んでいたから、抜いたら分かるのよ」


 そう言って、鞘から抓むように抜くとポイと捨ててしまう。


 雄一は、気付かなかったな、と呆れているとミチルダが目を真剣にさせ、聞いてくる。


「ちゃんと森の奥に行っておきながら、鞘から抜かずに切り抜けてきたと? まさか拳や違う武器を使ってじゃないわね?」

「ああ、逃げながら行ってきた、途中でミュウに出会って道案内して貰えて、楽にいけたよ」


 頭の上でリンゴを食べるミュウに、「なぁ?」と問いかけると、ガゥと返事される。


「つまり、これのメッセージは理解したと解釈していいのかしら?」


 ミチルダは、逆刃刀を掲げて、雄一に聞いてくる。


「ん? ああ、合ってるかは分からねぇーけど、つまるところ、その刀に魅了されて、試し切りしたり、その力に振り回されないかどうか、という試験だろ?」


 雄一の解答に、ミチルダは、クスクスと笑い続ける。


 それを見た雄一は、あれ? 違ったのか、と不安になりかけるが、ミチルダは笑顔のまま言ってくる。


「プリティボーイ、いえ、ユウイチ……と言ったかしら? まさにその通りよ。さすがに1度も抜かずにやり遂げるとは思ってなかったけど合格よ」


 雄一は、おお、と感動して、


「じゃ、それを俺に譲ってくれるのか?」


 逆刃刀に指を指して、ミチルダに問いかけるがミチルダに首を横に振られる。


「この子は、雄一を主と認めないと思うわ。ユウイチ、貴方が主として認めさせるべき子を紹介するわ」


 店の奥にいるサリナをミチルダは呼ぶ。


 はーい、サリナが返事をすると、持つのも大変そうに抱える大きな得物を持ってくる。


 朱色の長い柄に龍の装飾がされ、その先端には反りが大きな刃が付いており、その刃に何やら文字が彫られているが、なんて書いてるか読めないところから異世界の通常の文字ではないようである。

 そして、刀身と柄の間に赤い布が縛られいた。


「青竜刀か?」


 青竜刀と言えば、日本では刀剣の類と勘違いされるが、薙刀のような作りをしたモノが青竜刀と呼ばれる。これも略称であるのだが……


 雄一は、惹かれるように、サリナが持つ青竜刀を見つめる。


 逆刃刀を見た時も、凄いと見惚れはしたが桁が違う。


 雄一は独白するように呟く。


「最初にこれを渡されてたら、一度も使わずに森を抜けたかと言われたら、少し自信無くすな……」

「うふふ、そうやって冷静に判断できてる時点で合格よ」


 サリナからミチルダは受け取り、雄一の前に差し出すように出してくる。


 それを見つめていた雄一の手がピクリと動くが、青竜刀から目を離してミチルダを見つめて聞いてくる。


「コイツの名は? 無名なワケないよな?」

「本当におかしな子ね……勿論あるわ、『巴』よ。とっても、じゃじゃ馬よ。ユウイチに乗りこなせるかしら?」


 雄一は、へっ、と口の端を上げて笑みを作り、ミチルダの言葉に返事をせずに、青竜刀、いや、巴を見つめる。


 そして、手を伸ばして柄を掴もうとすると掌に痛いほどの圧力がかかる。


「こりゃ、本当にじゃじゃ馬ときたもんだ! だがよ! 俺は、手がかかるヤツが大好きなんだぜ」


 雄一は、痛みと圧力に拮抗する為に踏ん張り続ける。


 額から流れる汗が滴り出すが、雄一の挑むような笑みに崩れは確認されない、むしろ、笑みがどんどん広がり出しているように見える。


 拮抗していたパワーバランスは徐々に雄一に傾き、後、少しというところで雄一にかかっていた圧力が跳ね上がる。


 さすがに、これには一瞬、顔を歪めるが雄一は、高らかに笑いだす。


「俺は掴むと決めたモノは、絶対に諦めないし、諦めさせられてやらねぇ! 巴! お前は俺のモンだぁ!!」


 掌から血が吹き飛ぶが、まったく気にせずに、一気に柄を握り締めにいく。


 握り締めた直後、巴から眩しい光に包まれ、視界を奪われる。


 光が落ち着くと、先程の光景は夢だったのかと思わせるほど、掴む前と同じ店内のままであった。


 だが、雄一の掌の裂傷と顔を滴る汗が夢ではなかったと教えていた。


「おめでとう、ユウイチ。巴に、とりあえずは認めて貰えたようよ。でも忘れないで、まだ完全に認めた訳じゃないわ。これからの貴方をずっと見て、見定めているのを忘れないで」


 微笑みを浮かべながら、娘を送り出す母親?のような表情をしたミチルダが雄一に伝える。


 雄一は、オウ、と返事して巴を受け取る。


 受け取った雄一にアクアが近づく。


「主様、手を出してください」


 出してくれと言われた雄一は、巴を握ってない左手を差し出すが、「右手です」とアクアに怒られて持ち直して右手を差し出す。


 するとアクアにそっと握られ、胸元へと引き寄せられると何やら呟くと、掌の痛みが和らぐ。


 少しすると、笑顔のアクアが手を離す。


 離された右手を見つめると掌の怪我は直り、痛みもなくなっていた。


「ありがとうな、アクア」

「いえ、当然の事をしたまでです」


 雄一の言葉に、澄まして言えたら良かったのだろうが、嬉しさが隠し切れずに、エヘヘ、と笑ってしまっていて台無しだが、アクアらしくて雄一は笑みを零す。


「後は、サリナの武具だったかしら? 予算はどれくらいで?」

「その前に巴の支払いは?」


 雄一は、当然の事を聞くが、ミチルダは、クスクスと笑うと雄一の疑問に答える。


「私は、名付けした子を金銭で取引したりしないわ。私にとって子供のようなものだもの」


 行くべきところへ、行くモノと、ミチルダが言うが、対価は受け取るべきだろうにと思うが、ミチルダがそう納得しているなら有難く貰っておくことにした。


「サリナさんの武具か。とりあえず、ホーラには初心者だと言う事を念頭に、壊れても、そこまでショックを受けない金額にしてやってくれ。ホーラは、そういうところ気にするから」


 なぁ? とホーラを見ると顔を赤くして、雄一を蹴りながら言い返してくる。


「そういう事は、もっと含ませて言うもんさ!」


 悪い悪いと謝る雄一に、フンッと顔を背けるホーラ。


「俺のモノは……お任せで、払えない額でも、稼いでくるから絶対に払う」

「あらまぁ、巴を持つ男は男前ね。でも、サリナにそこまでの素材を使わせるのは早いから、そんな事にはならないけど、今できる上限までいいと言ってくれるのはサリナのオーダー品のデビューには最高ね」


 気張りなさい、とサリナに言うミチルダを見て、当のサリナはガチガチになりながら「頑張ります」と声を震わせて言う。


「そうそう、それと別で、ホーラに投擲武器、ベストに仕込めそうな適当なのないか? 練習もこれからだから、入門編みたいなのがいいんだけど?」


 雄一は、チラ、とホーラのベストをミチルダに見たと分かるようにすると、物分かりの良いミチルダは事情を察したようで笑みを浮かべた後、顎に手を当てるようにして考え出す。


「そうね、投げナイフなんてどうかしら? 1年前にサリナが作った駄作なんだけど、見栄えは悪いけど重心バランスは悪くないわ」


 ミチルダの言い様に、サリナが涙目で、「ミチルダさん……」と恨めしそうに見つめていた。


「10本セットで、銅貨10枚だけど、どう?」

「買った!」


 雄一は、銅貨10枚払って受け取るとそのままホーラに手渡す。


「ありがとう、ユウ、凄く嬉しいさ……」


 大事そうに胸に抱えながら、雄一に笑顔を見せるホーラに、ほっこりする雄一。


「じゃ、サリナのお任せオーダー品は、ユウイチとその子のでいいのね? 1週間ぐらいしたら、顔を出してくれるかしら?」

「ああ、分かった。サリナさん、楽しみにしてるな?」

「あんまりハードル上げないでね……ミチルダさんって本当に鍛冶の事になると妥協しないのよ……」


 そう言いつつも、嬉しそうに頑張ると言葉と力こぶを作るようにするが、まったく出てなくて雄一は笑ってしまう。


 笑った雄一に、もう! と怒って手を上げるフリをするサリナに怯えたフリをした雄一がおどけて言う。


「サリナさんに怒られる前に退散しますわ。じゃ、また!」


 雄一は、巴を肩にかけながら、マッチョの社交場を後にして、冒険者ギルドへと歩き出した。



 歩き出して、しばらくして、アクアがボソっと呟く。


「そういえば、ミチルダさん、鞘に毛を挟んでたとおっしゃいましたけど、あのツルツルの頭でどうやったのでしょう?」


 最後に解いてはいけない予感がする謎が残された。

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       雄一の孫の世代             こちら亜人ちゃん互助会~急募:男性ファミリー~  どちらも良かったら読んでみてね? 小説家になろう 勝手にランキング
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