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227話 過去の自分を振り返るのは大抵苦痛らしいです

 お久しぶりの双子の親の更新です!


 それはそうと、久しぶりという言葉で思い出しましたが、久しぶりにマイブームがきちゃったかもしれません。


 その名は、『コーヒーゼリー』!!


 昨年の友達同士の忘年会で子供の頃以来にきまぐれで食べたんですよ。これが過去に食ったコーヒーゼリーはなんだった? と聞きたくなるぐらい美味く感じたのですよ。


 皆さんは、今年の○○みたいなのありますか?

 アリア達が先頭で付いていく形でヒースが少し離れた後ろから随行するように『試練の洞窟』の1階を歩いていた。


 『試練の洞窟』は一般に想像されるような、湿気があり、じめじめした場所であった。

 鍾乳洞に入った時の感じと言えば分かるだろうか?


 自然にできた通路は広く、高さは3m近くある密閉感はないが違う不安が過る。


「これだけ、広くて大きいとモンスターでデカイのが出てきそうですね」


 ダンテが否定して欲しそうに乾いた笑みを浮かべながら呟くと後ろにいるヒースがそれに答える。


「聞いた話では、大きな蛇は出た事があるそうですよ? 威嚇するように飛び上がった時の全長の目測が間違ってないなら天井に届きそうだったという話です」

「冗談だよね?」


 目を虚ろにするダンテは実は蛇を始め、爬虫類が苦手だったりする。


 勝てる勝てない以前に遭遇したくない相手であった。


「蛇! ウマい?」


 大きな蛇が出ると聞いて、目を輝かすミュウがヒースに振り返って聞いてくる。


 ミュウはお小遣いを使い果たすと食べ物を求めて山に良く行き、木の実などは勿論、狩猟もして食べている。

 当然のように蛇なども食べているのでミュウに蛇を食べる抵抗などない、というより未知の領域の大物の蛇が食べてみたいと顔に書かれていた。


 食の権化になっているミュウに苦笑するヒースが答える。


「さあ? どうかな、倒したという話は聞かないから食べた人いないんじゃないかな?」

「なら、ミュウが最初に食べるぅ!」


 そう言いつつ、両手を交差させたと思ったらフォークとナイフを取り出す。


 冒険の道具は忘れてもコレだけは忘れた事がないミュウであった。


「何故にフォークとナイフ?」

「ユウさんに食事は手掴みではなく道具を使いなさい、と4年かけて教育した賜物!」


 疑問を口にするヒースに自分の事のように胸を張って自慢するアリア。


 鼻息荒く、辺りを見渡すミュウに肩を竦めるアリア達であったが、スゥが振り返ってヒースに声をかける。


「先程から気になってたの。ここまで来るまでに他の冒険者見習の子達の姿を1人も見てないの。外にあれだけいて、中に入って行く人も沢山見たのに、これは一体どういうことなの?」

「ああ、それは遠回りの道で普段使われてない道だからです。勿論、最短ルートがあるのですが、腕慣らしという目的できてますので人通りの多い場所の安全なルートを使って意味ありませんから」


 ヒースの説明に食の権化になってる者以外は、なるほど、と納得する。


 頭の後ろで手を組んで、今まで話さなかったレイアが呆れるように話し始める。


「つまり、このルートを使うようなヤツはアタシ達のような理由か、よっぽどの物好きか、それとも……」

「ええ、僕もさっきからいつ切り出そうかと思ってたのですが、皆さん、やっぱりお気付きになられてましたか」


 レイアを始め、アリア達は頷く。


 ミュウは拗ねたような顔をして、フォークとナイフを懐に仕舞いながら唇を尖らせながら言う。


「ミュウのご飯を狙ってるのがいる!」

「うん、多分、それはないと思うよ、ミュウ?」


 律儀に突っ込みを入れてやるダンテ。


 レイア達は、少し拓けた場所に来ると足を止める。


 そして、振り返るとレイアが声を上げる。


「いい加減、こそこそついてこずに姿を見せろよ」


 そう話しかけるが動きは止めて出てくる様子を見せない。


 嘆息するレイアがダンテを見つめる。


 それに頷いて見せるダンテは水球を生み出すと岩場の影に目掛けて放つ。


 水球が岩場の影に着弾すると少年達の悲鳴と共に飛び出してくる3人の姿があった。


「まあ、なんとなく察しはついてたけど、やっぱり貴方達だったの……」


 呆れた声を出すスゥを始め、レイア達は飛び出してきて尻モチを着く少年達を見つめる。


 3人の少年は『試練の洞窟』に入る前にレイア達にちょっかいかけてきた奴らであった。


 ばれてると思ってなかったようで、悪態をつくように舌打ちする少年達。


「で、何か用? こそこそしてて、真っ当な理由なんてないと思うけど?」


 呆れを超えて、見下すように話すアリアに額に血管を浮き上がらせるリーダー格の少年が吼える。


「そこのポニーテールのガキのせいでかかった、回復魔法の代金と俺の金属鎧の買い直しの落とし前をつけにきてやったんだろうがぁ!」

「何を言ってるんですか? あれだけ警告されたのにも関わらず、無様に手加減をされてやられ、そんな相手に勝てると思ってるのですか? しかも、不意打ちはできない状態で、どうしてそんなに強気なんですか?」

「武器を振り下ろして殺されても文句が言えないのに、相手の温情で命を拾って学習しないのは馬鹿以外の何物でもないの」


 ヒースが頭が痛そうに言い含めるように伝え、スゥは何かに気付いたようで顰めっ面をしながら皮肉を利かせながら言う。


 それを後ろで見ていたレイアが唾を吐き捨てたい衝動と戦うように苦い表情をしながら言葉を捻り出す。


「成程、こないだまでのアタシはアレと同類だったのか……そら、ホーラ姉も怒るし、銀髪キツネもアタシ達を嫌うのは当然か……」

「そうだね、僕もあの後、頭で理解はしたつもりだったけど、こうして目の前で見せられるとベッドに籠りたくなるね……」


 この少年達は自分達に自信があった。


 アリア達の見立てでもおそらく、ヒースと同じ20階層までキャンプ地まで進んでいるのだろう。


 だから、自分達より年下で初めて『試練の洞窟』にやってきた様子のレイアに負けたのは、たまたまの偶然と自分達の油断からラッキーパンチが入っただけ、と解釈していた。


 しかも、相手側にはコミュニティ順位が落ちてきてはいるが、自分の親が運営するコミュニティの上にいるヒースがいるパーティに負けたと吹聴されたら堪らないというくだらない自尊心もあった。


 たまたま、が重なる事など、そうそうあることではない、しかも手加減されている事に気付けない、この少年達は、巴にボコボコにされる前のレイア達そのものであった。



 自分達は強い。


 自分達が放った拳、得物は必ず届く。


 死とは自分達には関係なく、常に何度もチャレンジできる特別な存在。



 と、レイア達は心のどこかで当然のように思っていた。


 だが、それは幻想と巴に打ち砕かれた。


 死とは、常に隣り合わせで、自分達は特別な存在ではなかった。


「アイツ等、見てると胸がムカムカする」


 眉を寄せるミュウも、理屈では分かってないが、同じ想いのようだ。


「大方、私達がモンスターと交戦中の背後から強襲、といったところなの」


 自己嫌悪と生理的に見てるのも気持ち悪いとばかりに顔を顰めるスゥが吐き捨てるように言う。


 もう、このままだと少年達の身が危ないと判断したヒースが最後通告する。


「貴方達に勝ち目はありません。例え、モンスターと交戦中であったしても彼女達が不覚を取るような状況であれば、成功した時点で貴方達はモンスターに殺されます」


 実力が違い過ぎる事に気付いて欲しくて、キツイ言葉で言うが逆効果だったようでリーダー格の少年が顔を真っ赤にして剣を抜く。

 それに倣うように後ろの少年達も各々の武器を抜く。


「馬鹿にしやがって、偶然、1度勝ったからって次も同じようにいくと思ってるのかよ!」

「ヒース……無駄だって、ああ、なると正論ぶつけられても理解できないんだよな」


 いきり立つ少年を見て溜息を吐きながらゆっくりと近づいていくレイアがヒースに言う。


 レイアは勿論、アリア、スゥ、ダンテのように分かってるつもりだった3人ですら、あそこまでされて初めて身を持って理解した。


 ホーラやテツでも、雄一の殺すつもりかと疑うような訓練で死を実感させられた事で何度も鼻っ柱をへし折られてきている。


 ホーラがゲンナリ説明したゴブリンの集落に放り込まれる、などを体験してきている努力のたまものであった。


 アリア達もレイアの言葉を同意すると同時に過去の自分を見てるように直視ができないようであった。


 身構えないレイアが真っ直ぐに少年達の前に歩いていく。


 構える武器が見えてないのか、と問いたくなるレイアの行動にリーダー格の少年が切れる。


「舐めるなぁ!」


 ためらいもない剣戟を放つリーダー格の少年の攻撃にも身構えないレイアに迫る。


 しかし、リーダー格の少年の剣はレイアに当たらす、レイアの横の地面に叩きつけられる。


 それに驚いたリーダー格の少年は後ろに下がりながら無差別に斬りかかるがレイアに剣が届かない。


 慌てたリーダー格の少年は振り返ると2人の少年に指示を飛ばす。


「お前らもボケっと見てないで攻撃に加われ!!」


 リーダー格の少年の様子に放心するように見ていた少年達は我に返るとレイアに襲いかかるが、結果は変わらない。


 ゆっくり近づくレイアが少年達とすれ違うと少年達が悲鳴を上げるとその場で倒れる。

 少年達の左足がおかしな方向に曲がっていた、


 通り過ぎる時にレイアが少年達の左膝を砕いていったようだ。


 少年達の悲鳴を聞きながら、ヒースがアリア達に質問する。


「膝を砕くのは見えたから分かりますが、レイアさんに攻撃が当たらなかったカラクリは何なんですか?」

「あれは歩法。相手の認識をずらして距離感をおかしくする。私も理屈でしか分からない。でも、あれはできたとは言えないレベルらしい」

「そう、あれはあの人達ぐらい弱い人だからできるけど、強い相手には普通に歩いているようにしか見えないの。レイアはユウ様は勿論、テツさんの足元にも及ばないの」


 それを聞いたヒースは、アリア達の身内、雄一達が化け物のようにしか聞こえないようで額に汗を滲ませる。


 そんなヒース達をよそにレイアは少年達に近づいていくと拳を握り、トドメを刺すつもりで振り被る。


 顔中、痛みからくる脂汗で酷い事になってるリーダー格の少年が悲鳴を上げるようにレイアに命乞いしてくる。


「た、頼む! 見逃してくれぇ!」

「殺そうとした相手に見逃してくれって正気かよ……んっ?」


 そう言って拳を止めたレイアが辺り、洞窟を見渡し1つ頷くと拳を降ろす。


 レイアの行動にアリア達も少年達も目を白黒させる。


「いいぜ、見逃してやるよ」

「有難い、助かる!」


 脂汗で酷い事になっている顔にイヤラシイ笑みを浮かべるリーダー格の少年にレイアは冷笑を浮かべる。


 そんなやり取りするレイアの横を抜けて、イヤイヤというのを隠さないアリアが回復魔法を行使しようとするがレイアが肩を掴んで停めてくる。


「アリア、治してやる必要はないぜ。アタシは見逃してやる、と言っただけだからな」


 一瞬、眉を寄せたアリアであったが、レイアの思惑に気付いたようで溜息を吐くとスゥの隣に戻る。


 アリアとレイアのやり取りを見て、スゥ達は理解に至ったようだが、リーダー格の少年は右往左往した。


「おい……助けてくれるんじゃねぇ――のかよ!!」

「はぁ? アタシは見逃してやる、と言っただけで、助けてやるとは言ってない」


 レイアもゆっくりとアリア達の下へと戻る。


 歩きながら後ろを振り返るレイアが冷笑を浮かべて告げる。


「外で受けた傷を癒したヤツと同じ奴に癒して貰うんだな。アタシはトドメを刺さない。無事に外に出れる事を祈ってる」


 リーダー格の少年は口をパクパクさせて、目を丸くさせる。


 ここは滅多に人が使わない道でモンスターがどこから出てきてもおかしくないうえに、途中で誰かに助けを求められる状況ではない。


 レイアの言い分は理解できるが手口がエグイと苦笑するアリア達。


 ヒースがレイアに伺うように聞いてくる。


「あれでいいんですか?」

「まあ、アタシ達も1度はチャンスを貰ったからいいんじゃないかな?」


 そういう意味で聞いた訳ではないヒースであったが、続きが言えなくなり、溜息を吐く。


「でも、私達にはユウ様がいたの」

「アイツにも自慢のお父さんがいるらしいから、条件は一緒だろ」

「レイア、ユウさんと比べるのはユウさんに失礼」


 そう言いつつも、奥へとレイア達は歩き始める。


 後ろで少年達がギャアギャアと叫んでいる中、肩を落とすヒースの肩にダンテが手を置く。


「ああ、なったらレイア達を止められないよ。それに僕も多かれ少なかれ同じ意見だしね。ヒースも巴さんに骨身に沁みるように教えられてるでしょ?」


 その言葉に身震いをするヒース。


 ヒースの様子を見て、やはり、体験したくないような教育を受けているようで苦笑するダンテ。


 動きださないヒースとダンテに声をかけるミュウの姿があった。


 再び、フォークとナイフを装備したミュウが眉を上げる。


「ニクが待ってる。蛇を倒して、幸せ一杯!」

「あはは……そんな話もあったね……」


 マイペースなミュウの言動にシリアスな空気が破壊され、肩から力が抜ける2人。


 ミュウにシリアスさを破壊されて、少年達を見るとどうでも良いモノに見えてきた2人は、ミュウに急かされるがまま、レイア達を追いかけて奥へと向かった。

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       雄一の孫の世代             こちら亜人ちゃん互助会~急募:男性ファミリー~  どちらも良かったら読んでみてね? 小説家になろう 勝手にランキング
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