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179話 常識を破壊される少女のようです

 200部を超えましたが双子の親は通常営業ですよ~(笑)

 北川家の朝食風景は賑やかである。


 ゆっくりと静かに食べる者も存在するが、さっさと食べ終わって全力で遊びたいという体力の有り余った子達の巣窟である。


 そんな体力の余った子達が雄一に纏わり付き、食事中である事もお構いなしに背中や肩によじ登ってくる。


「こらこら、まだこの子にご飯食べさせてるところだから、もうちょっと待て」


 そうやんわり言うが、当然のように効果はなかった。


 対面側に座るミュウがスプーンを咥えながら不機嫌そうに雄一の肩に昇るヤンチャな娘を睨みつける。


 それを見た雄一は溜息を吐く。


 ここ1年程で急成長したミュウなので、「大きいなりして、もう肩に登るのはやめろ」と言ったものだから、違う子が登ると不機嫌になる。

 今でも隙あらば登ろうとする困った子である。


 まあ、なりはデカイが頭は9歳でミュウだからな、と思うと納得いってしまう辺りが笑いを誘う。


 降りない子達の行動など日常茶飯事なので諦めて、隣にいる幼い女の子、こげ茶色の髪に黒い瞳の幼女にスプーンで掬ったスープを飲ませていく。

 差し出された物は基本的に拒絶しないが、余り、感情を表に出さない。


 この子を見ていると初めて会った頃のアリアを思い出す。


 年頃も同じぐらい、感情は希薄で、喋らず、時折、ジッと雄一を見上げている姿を見ているとどうしても被る。


 北川家に連れてこられて2日、確かにあの出来事の後ではしょうがないと雄一は思う。



 2日前、雄一がここを巣立った子達が初めての討伐依頼に行くと聞いて、こっそりと後を付けてた時の話である。


 ゴブリンに攫われてる最中、この子を発見した。


 すぐに幼い女の子を救うのには成功したが、ゴブリンが走ってきた方向に向かうとゴブリンに殺されたと思われる両親の死体を発見する。


 その両親の血まみれの体を水魔法で綺麗に洗い流し、埋葬しようとした時、母親と思われる女性の首にかかるペンダントに気付き、幼い女の子にとって形見になるだろうと思い、外させて貰う。


 家に連れ帰って目を覚ました幼い女の子は、既に感情を凍らせていた。真偽は未だに分からないが、おそらく、両親が死ぬ瞬間を見たのであろう。


 そこで預かってきたペンダントを幼い女の子に差し出すと、一番の反応を示す。


 つぶらな瞳を見開くと雄一の手にあるペンダントを奪うと胸に抱えるように抱き締める。


 やはり、あれが母親であったようであると雄一が確信した時であった。



 そして、今は明らかに大き過ぎるペンダントを着けている。


 雄一が差し出すスプーンに口を開かない幼い女の子に、


「メリー、お腹が一杯か?」


 それに頷く幼い女の子、メリーはコックリと頷く。


 昨日、レンが根気良く、思い付く限りの名前を口にした時、このメリーという言葉に反応した。

 だから、名前がメリーなのか、愛称がメリーなのか分からないが、名無しより良いと言う事、そう呼ぶ事にしている。


「じゃ、お部屋に戻りましょうね」


 白衣姿で煙草のようなものを咥えたレンが現れる。


 ちなみに煙草そのものに見えるが別モノらしい。言うなれば、酸素ボンベのようなもので、無くても陸上生活を普通にはできるらしいが、ちょっと不便らしい。


 だから無味無臭である。


 今、メリーは心と体の連結するモノ、感情に激しい損耗を受けている。そこで、レンが緩やかに癒しを与える事により、感情の正常化させる治療をしていた。


 そのおかげで初日の夜とかに飛び起きてたメリーであるが、徐々に落ち着いているようで昨日は飛び起きなかったらしい。


 レンに連れられて出ていくメリーを見送る。


 見送った雄一は自分の食事を済ませるかとスプーンを持つと食堂の入口から年長組の男の子が雄一を呼ぶ。


「ユウイチ父さん、お客さんが来てる」

「ん? そうか、有難う」


 そう言うとスプーンを置くと立ち上がる。


 雄一で遊んでた子供達をそのままに歩く姿は雄一に子供達が実ったような、ちょっとシュールな光景である。


 玄関に行くと雄一の姿を認めた少女は目を丸くする。


「あれ? 確か、シャーロットだったか、どうしたんだ?」


 ハミュのお付きの騎士、シャーロットが我を取り戻して、慌てて頭を下げる。


「この度、スゥ王女のお傍付きを拝命頂き、こちらに着任しました」


 顔を強張らせるシャーロットを見つめて、雄一は「ゼクスめっ!」と呟く。


 なんとなしにゼクスの思惑が透けて見えるが、追い返したら落ち込むシャーロットが容易に想像できる。


「まあ、それは俺が止める話じゃないからいいが、今、スゥは出てるから、朝食でも食いながら待ってろ」


 まだだろ? と聞く雄一に戸惑いながら頷くシャーロットを見た雄一は近くを通りかかった駄目っ子シスターズの3人を呼びながら、シャーロットに声をかける。


「家では、訓練と戦う時以外は武器防具を着けてうろうろするの禁止なんでな、やれ!」


 そう言うと真っ先にルーニュが飛び出すとシャーロットと交差する。


「うちは、ユウイチと出会うまで、人の服を脱がす仕事にするかと悩んでた」


 ガチャガチャと音をさせてシャーロットが纏っていた鎧や剣などが床に落ちる。


 放心状態のシャーロットを見つめたルーニュが無表情に口の端だけあげる。


「また、つまらないものを脱がせてしまった」

「はいはい、スゥの隣の部屋がまだ空いてただろ? そこに運び込んでおいてくれ」


 決め台詞をサラッと流す雄一は3人に運べと伝える。


「了解なのですぅ!」


 と敬礼するシホーヌに倣ってアクアとルーニュも敬礼すると放心するシャーロットを無視して防具などを運んでいく。


 我に返ったシャーロットは、手をワナワナさせて雄一を掴む。


「い、今のは何だったんですか?」

「あっ? ルーニュか……気にしたら負けだぞ?」


 雄一の言葉を真似するように子供達が楽しそうに「負けだぞ!」と言いながら笑う。


 左腕に抱き付いている子を抓み上げて、床に降ろす。


「このお姉ちゃんの食事を取ってくるから俺の席の近くに案内してやってくれ」

「分かりました、隊長!」


 シホーヌの真似までし始める男の子に嘆息する。


 近い内にシホーヌには説教が必要だと感じる。


 男の子に案内されるシャーロットを見送ると雄一は台所に向かった。



 子供達にシャーロットのスープやパンを運ばせながら雄一は食堂に戻ってくる。


 まだ放心状態のシャーロットの前に子供達が配膳していく。


「まあ、食えよ」


 そう言うと雄一も漸く朝食にありつける状況になり、食べ始める。


 言われるがまま、といった感じでスプーンを取ってスープを掬って口にする。


 口に入れた瞬間、目を見開く。


「こ、これは、ポタージュですよね? こんな美味しいのは飲んだ事がありません、ここには素晴らしいコックがいるのですか?」

「いる訳ないだろ? ここは学校だぞ?」

「そうだぞ、ここのご飯はほとんどがユウイチ父さんが作ってるんだ。いない時は、ちょ――っと美味しくないんだよな」


 雄一の膝の上にいる男の子のセリフを聞いたシャーロットは驚き過ぎて疲れた顔をしながら雄一を見つめる。


「へぇ――私のご飯は不味いと?」


 男の子が慌てて振り返るとコメカミの血管を浮き上がらせるティファーニアがそこにいた。


「うわぁ、ペチャパイが怒ったっ!」


 そう言うと雄一の膝から飛び降り、ティファーニアと追いかけっこを始める。


 追いかけっこする姿を茫然と見つめるシャーロットは呟く。


「何なの、ここ……」


 雄一はそれに答えずに肩を竦めるに留め、食事を再開させた。

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       雄一の孫の世代             こちら亜人ちゃん互助会~急募:男性ファミリー~  どちらも良かったら読んでみてね? 小説家になろう 勝手にランキング
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