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14話 人差し指が唸る時です

 寒すぎる。雪が積もるらしいけど、月曜までに溶けてくれないかな……


 バイブルの財布の中身は既に溶けてますけどね?

 友達に誘われて、打ちに行かなければ良かったお(;一_一)


 タグをまた1つ回収しました(^O^)/

 2日前に5の冒険者になった雄一は、借金を抱えて帰ってきた、と説明した。


 するとシホーヌにはマヌケ扱いされた事に怒りを覚え、レイアのサイテェー、と言われた言葉に打ちのめされ、アリアの頭ナデナデに癒され、気合いを新たに立ち上がった。


 名誉挽回、とばかりに勇んで冒険者としての初仕事をする為に、冒険者ギルドにやってきた雄一は生温かい視線で出迎えられ、その理由を知った雄一が暴走する事件が発生するが割愛する。


 依頼書を眺める雄一は燃えていた。


 可愛い娘2人の尊敬と、パパと呼んで貰える未来を勝ち取る為に……


 前回行った森とは違う場所にゴブリンの巣があるというので、駆除して欲しいという依頼を見つけた雄一は、叩きつけるようにカウンターに置く。


 これは複数パーティでやる依頼だという説明するミラーの話を適当に聞き流して、ホーラと2人で雄一は鼻息を荒くして出発した。


 結果を言うと、武器を持たぬ雄一がゴブリンの武器を奪いながら戦う無双により、巣にいたゴブリン達は壊滅する事になる。


 しかも、その中にはゴブリンキング、ゴブリンクィーンも存在していたようだが、今のあの双子に「凄い!」と言われる事を夢想する雄一にとって、雑魚ゴブリンとなんら変わる事はなく、あっさりと狩られていた。


 現地で、近くの村の男の村人が隠れて付いてきてるのに気付いていた雄一は「もう壊滅させたから心配するな」と村人がいる方向に叫ぶ。


 すると物影から出てきた村人は、雄一に深く礼をすると踵を返して走って行くのを雄一とホーラは見送った。


 そして、壊滅させたゴブリンの討伐部位を剥ぎ取って、帰る時に何パーティかとすれ違う。


 だが、雄一は気にせず街に戻り、冒険者ギルドへと報告にやってきた。


 帰って来た雄一が討伐部位をミラーに提出して検分が済んだ後、ミラーの言葉に雄一は「何故だ!」と叫ぶ。


 その言葉に対する返事はこうである。


「張り切り過ぎです。後追いで行ったパーティが無駄足ではありませんか。明日は依頼を受けさせませんので」


 反省してください、と言って、報酬が入った袋をカウンターに置く。


「金貨2枚と銀貨50枚になります。天引きする予定だった金額は全て引いてありますので、もう借金はないのですから、少しは考えて行動してください」


 放心する雄一を眺めていたホーラが溜息を吐いて、代わりに報酬を受け取り、雄一を励ます。


「大丈夫さ、ゴブリンの巣を壊滅させたって言えば、レイアもきっと、凄い! って言ってくれるさ」


 本当にか? と言う雄一の腰を後ろから押して、ホーラが「大丈夫さ」と何度も言いながら冒険者ギルドを出ていく姿をミラーの溜息が見送った。





 そして……次の日


「で、今日は何をされに? 依頼なら受理しませんよ?」


 呆れた顔をしたミラーがいるカウンターに齧りつくようにして、雄一が睨んでくるがまったく効果はないようで口を開く前に断じてくる。


 だが、ミラーの予測は違え、雄一が言い放った言葉はこうだ。


「カッコイイ武器が売ってる店を紹介してくれ!」


 鬼気迫る表情をした雄一が放った言葉に、ミラーは、はぁ? と疑問の声を上げる。


「強い武器じゃなくて、カッコイイ武器ですか?」

「そう、女の子が溜息を零すような、カッコイイ武器を作る鍛冶師でも可!」


 何を言っているんだ? という顔をしたミラーが、雄一の隣で頭を抱えるホーラに説明を求める。


「昨日のゴブリンの巣を壊滅させた話を家の双子ちゃんに、ユウがいかに戦ったかを説明したら、ゴブリンの武器を奪って、戦った件で、『カッコ悪い』と言われた言葉がショックで、カッコイイ武器を求めてるって訳さ」

「馬鹿ですね」


 ばっさりと切り返してくるミラーに「何も言い返せないさ……」と溜息を吐くホーラ。


 雄一は「馬鹿とはなんだ!」と憤り、「これは切実な問題だ!」とカウンターを叩く。


 更に、にじり寄ってこようとする雄一に、頭を冷やせ、と言おうと口を開こうとしたミラーだったが、口を閉ざすと顎に手を当てて考え始める。


 焦れてきてる雄一をジッと見つめるミラーが口を開く。


「1つ……心当たりが、1つだけなくはありません」

「どこだっ! 紹介してくれ」


 焦る雄一に、焦るな、とばかりに掌を向けて、黙らせると手を降ろし話し始める。


「ダンガに有名な鍛冶師が、街の北東に住んでいます。その者に武器を打たせる事ができれば、素晴らしい武器を造ってくれるでしょう。勿論、見栄えも保障します」


 おお! と感嘆する雄一の隣で、眉間に皺を寄せるホーラがミラーに問う。


「あの客を選ぶ事で有名で、ある時をキッカケに趣味以外では打たなくなったアイツを紹介してるの?」

「ええ、あの者なら、ユウイチ様の要望に応える事もできるでしょう」


 雄一を見つめながら言うミラーに


「アタイも噂しか知らないけど、それってかなり無茶ぶりだと思うさ」

「そうでしょうか、私はユウイチ様ならばと思います」


 そう、貴方の問題を解決した時のように、なんでもない顔をしてやってくれるのでは、と……言葉にせず胸の内にしまう。


「ユウイチ様、そこには若い女性がおり、スタイルが良く、特にあの谷間が素晴らしい……ウチの受付嬢と並べても遜色がない美少女がいまして……」

「よし、細かい事は向こうで悩むから、場所を教えてくれ、すぐに向かうからぁ!!!」


 雄一の魂のシャウトであった。


 ミラーの分かり易いぐらいの誘導だったが、カッコイイ武器と美少女のコンボを食らっている雄一には、罠だろうがなんだろうが、前に進むのみである。というより、止まれない。


「ユウ……サイテェーさ……」


 レイアに続き、ホーラにもサイテェーを貰う事になったが、目先の欲に塗れている雄一の耳には届いてなかったのは、幸運だったのかどうかは不明である。



 ミラーに紹介された街の北東にある店に向かう為に、冒険者ギルドを出た雄一は、呆れて歩くのが遅くなっているホーラを急かし、スキップをしかねないほど浮かれていた。


「なぁ、ホーラ。どんな武器を頼もうか? 俺って基本的にどんな武器でも使えるから、やっぱり、その鍛冶師の得意分野を聞いて頼むのがいいかな?」

「好きにするがいいさ、自分の好みでいいんじゃないの?」


 投げやりな言い方をするホーラに気付かないほど浮かれている雄一は、やっぱり王道は片手剣かなと素振りをしながら歩く。


 それを見ているホーラが少し距離を空けた事も気付かずに、


「やっぱり二刀流か? こう、心を揺さぶるモノがあるよな」


 普通に持つほうか? 逆手持ちか? と嬉しそうにする雄一から更に離れるホーラ。


 未だに、ホーラとの色んな意味での距離に気付かない雄一を眺めていたホーラは思う。


 普段はこんな間抜けで、双子の事で一喜一憂する残念さを滲ませる男なのに、いざ、戦闘となるとスイッチが切り替わったのが分かるほど精悍な顔を見せる。


 普段の抜けた雄一も暖かくていいが、戦闘中のかっこいい雄一を知ると残念さとの格差を感じてしまい、とても勿体なく感じてしまう自分に気付いていた。


 戦う時に精悍な雄一ではあるが、決して戦闘狂という訳ではない事はホーラも、ちゃんと理解していた。


 雄一は、いつでも何かの為に戦い、誰かを守る為の戦いをする。


 確かに、今回は双子に誇られる男になりたいという欲望もあったが、ゴブリン退治は、少々、緊急性がある依頼であった。


 近くにある村が、そのゴブリン達のエサ場として、襲われていたのである。


 本当なら、双子にカッコ良いと言わせたいと、ドラゴンぐらいの依頼はないのかと来る途中ずっとブツブツ言う雄一にホーラがウンザリしていたぐらい見栄えのする依頼を受ける気満々であった。


 しかし、受けたのは依頼料も少なくパッとしない割に合わない仕事であるゴブリンの巣の駆除。


 依頼書には、達成者には冒険者ギルドの評価ポイントが多く付きますと書かれているが、正直、雄一はそんな優遇を受けなくても、あっという間に駆け上がるのはホーラじゃなくても、受付のミラー、2日前の雄一を見ている者なら誰でも分かった。


 それを分かっているミラーも、最初は止めた。


 これは、評価ポイントが危ない者達が受けるから、雄一が受ける必要はないと。


 そう言ってくるミラーに、依頼書の張り付けた日が書かれた所を指差した雄一は、


「昨日の日付だが、何パーティが動くと言ってきてるんだ?」

「……まだ、参加を表明したパーティはありません」


 苦々しく言うミラーに、依頼書を更に差し出した雄一は口の端を上げて言う。


「なら、俺達が1パーティ目だ」


 そう言って、ホーラの手を取る雄一が冒険者ギルドを出ようとするのを待つように言うミラー。


「冒険者が来てくれると信じ、願いながら震える夜を既に1晩過ごしている。もしかしたら、家族が隣人が食い殺されるところを見てるかもしれない奴らに、渋々、受けてくれる者が集まるのを待ってくれ……とでも言うつもりか?」


 そう言われたミラーが、言葉に詰まるのを見て、苦笑いをした雄一がミラーに軽く頭を下げる。


「悪い、嫌な言い方をした。依頼の受理、よろしくな」


 そう言うと、今度こそ、冒険者ギルドを出ていった。


 出た所でホーラは、何故、ミラーが言うように止めていい依頼を受けたんだ? と聞くと、照れた顔をした雄一は、


「もしかしたら、その村の子供達の中に、レイアとアリアの友達になる奴がいるかもしれないだろ?」


 鼻の頭を掻きながら言う雄一を見つめたホーラは思う。この男に家族と認められた幸運を。



 未だ、距離を空けられている事を気付かずに、あれこれと変な構えをしながら歩く男を見つめる。


 そういうカッコイイ所を双子達に話せば、褒め称えられるだろうに、雄一は一言も話そうとはしない。


 何度かホーラが言おうかと思ったが、途中で気付いた。


 雄一は本当にそれが特別でカッコイイ事とは思っていない事に。


 だから、ホーラは自分の胸に秘める事にした。いつか、双子が自分達で気付くその日まで。


 そう思うと、このボケた事を先程からやっている雄一が、とても愛しく見えてきたホーラは、仕方がないとばかりに、雄一に空けた距離の事を気付かれる前に隣に戻る。


「分かった、分かったから、さっさと紹介された店に向かうさ」


 ホーラは雄一の背中を押しながら、笑みを浮かべて、目的地へと急いだ。





 目的地に着いた雄一は、遠い目をしながら店の前で突っ立っていた。


「ここで間違いないのか?」

「ああ、入った事はないけど、結構有名だしアタイも知ってるところだから間違いないさ」


 アタイの事がそんなに信用できないの? と睨むホーラに、本来なら即答で、そんな訳ない! と切り返すところだと分かってはいるが、雄一は、ホーラから店へと視線を向けて、むむむ……と唸る。


「明らかに、店の名前が鍛冶臭がまったくしなくて、まったく嗅ぎたくない匂い、ワセリンの匂いがしそうなんだが?」

「ワセリン? まあ、確かに珍しい名前さ。だからこそ、ここで合ってると自信あるさ」


 そこの店の入り口の上に掲げられた看板には、


 『マッチョの社交場』


 と書かれており、鍛冶臭どころか、するのは汗と筋肉の予感がヒシヒシすると雄一は呟く。


「まあ、入ってみれば分かるさ」


 ホーラに背中を押されて、確かに入らない事には分からないと、渋々、中に入って行った。


 中に入ると、女性の声で「いらっしゃいませ」と言われ、そちらを2人が向くと雄一が飛び出す。


 飛び出した雄一は、カウンターにいる女性の手をそっと手に取ると、男前の顔をして噛まずに言い放つ。


「ずっと前から愛してましたっ!!」

「ええっと、今日、初めてお会いしたはずですが?」


 突然、雄一に愛の告白をされた女性は、泣きホクロのある頬に一滴の汗を流しながら、空いた手を頬に添えて困ったように、スリングに石を入れるホーラを見つめる。


 頷いたホーラがスリングを振って、鈍器代わりにして雄一の頭にぶつける。


「イタ、痛くないっ!!」


 邪魔されてたまるか! と気合いで乗り越えた雄一は、目の前の女性を見つめ続ける。


 作業着と兼用なのか、タンクトップにオーバーオールを重ねており、はちきれそうな程大きな胸を絶妙に隠している。ノーブラだと見極めた雄一の顔の男前度が更に上がる。


 雄一のように無造作に長い髪を後ろで縛っているが、雄一と違って、それが色香を漂わせている。


 それをブーストさせるように大きな目の垂れ目な感じが後押ししていた。


 痛みを凌駕する雄一に戦慄を感じずにはいられないホーラだったが、目を覚まさせる為にもっと景気のいいモノを探し始める。


「お嬢さん、お名前は?」

「はぁ、サリナと申します」


 良いお名前ですね! と笑顔で見つめながら、雄一は心の中で、チートぉぉ、仕事しろ!! と叫んでいると、見つめるサリナから雄一へとデータが流れ込むのを感じると、思わず、「キタァ!」と小声ではあるが洩らしてしまう。



○サリナ 17歳 スリーサイズ:必要ならタップしてください


 槌:B


 アビリティ:目利き LV3 鍛冶 LV2



 血走った目をした雄一は、震える人差し指をある場所へと進ませる。


「ポチっとなっ!」



○サリナ 17歳 スリーサイズ:えっちぃのは駄目なのですぅ!


 槌:B


 アビリティ:目利き LV3 鍛冶 LV2



「あのアホ毛がぁ―――――!!」


 雄一は、項垂れて膝を着き、地面に拳を叩きつける。


 悔し涙を流す雄一を眺める2人はお互い目を合わせて溜息を零す。


 雄一に声をかけても無駄と思ったらしいサリナはホーラに事情を聞く事にした。


「何をお求めになられに?」


 「ちなみに、私は売り物じゃありませんよ?」と苦笑するサリナに呆れるホーラが「分かってるさ」と返す。


「冒険者ギルドの受付のミラーに紹介されてきたさ」

「となると、用がおありになるのは、ミチルダさんのほうのようですね」


 ミチルダ、と聞いた雄一は涙を拭い、希望に目を輝かす。


「美少女は1人じゃなかったのかぁ!」


 さて、どうでしょ? と笑みを浮かべるサリナは、店の奥に向かって「ミチルダさん」と大きな声を上げて呼ぶ。


 店の奥から出てきたモノを見た雄一は、腹の底から叫ぶ。


「チェ―――ンジでお願いします!!!」

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       雄一の孫の世代             こちら亜人ちゃん互助会~急募:男性ファミリー~  どちらも良かったら読んでみてね? 小説家になろう 勝手にランキング
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