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100話 絶対にぶっ潰すと決めたらしいです

 今回の話は、あまり好きな展開じゃないので、駆け足気味な気がしますがごめんなさい。


 ようするにあんまりよろしくない話が出てきますので、苦手な方がいたらごめんね?

 大柄なカンフー服を着こなす少年が色街を歩く。


 普段のこの少年の生活サイクルだと子供達を寝かし付け、明日の仕込みが終わり、体を動かしに出かける時間帯である。


 勿論、色街に出かける為ではない。というより、この辺りに近づいたのも今日が初めてである。


 この場所ではこれからが本番とばかりに酔客の騒ぐ声や、客を取ろうと必死な娼婦の姿が見える。


 少年にも窓の所から豊かな胸をギリギリまで、はだけさせて「お兄さん、一晩どう?」と手を振られるが、少年は、「また今度な?」と笑みを浮かべてそのまま通り過ぎる。


 少年の後ろに気付けば、一人の金髪の青年が現れる。


「アニキ、我慢せずにご休憩ぐらいなら良かったんじゃないですか?」

「確かに、心擽る提案だが、それはまたの機会だ。俺もいい加減、この件をなんとかしたくて爆発しそうなんでな」


 先程のように距離がある者なら少年に声をかけてくる者はいるが近くに寄ってくると酔客ですら酔いが醒めた顔をして逃げる始末である。


 そんな少年を苦笑する青年は、肩を竦めて「だから、ご休憩ぐらいして落ち着いたほうがいいと思うですがねぇ」言ってくる。


「あの天真爛漫なお嬢ちゃんの事を思うアニキの気持ちも分かりますが、殺しちゃ駄目ですよ? 俺とミラーさんで絞れるだけ情報を絞るんですから」

「……努力する」


 少年は、自分の肩に乗って楽しそうにするピンクの髪の幼女を思う。


 時折、自分の腕にしがみ付いて、親を思って寝ながら泣くあの子を思うとハラワタ煮えくり返る思いを歯を噛み締めて耐える。


 そんな少年の様子に溜息を吐く青年は、色々、諦めた顔をする。


「じゃ、俺は奴らを逃がさないように囲い込みする側に行きますが、本当にアニキ、信じていいですよね?」

「任せろ、俺は1人でも怪我を負わずに済ませる」


 青年は、「アニキに一撃入れれるのは双子の嬢ちゃん以外に想像付きませんよ」と言うと少し笑みを浮かべる少年を見て、少しだけ希望が出てきたと言いたげに笑みを浮かべる。


「本当に頼みましたからね? では、行ってきます」


 そういうと青年は路地裏の闇に溶け込むようにして姿を消す。


 再び、1人になった少年は、色街の道を闊歩する。


 すると、少年の視線の先に大きめの酒場が見える。


 入口にはガラの悪そうな男達がたむろっていた。


 少年は、口の端を上げ、そのたむろっている場所へと出向き、その者達を無視して通ろうとすると道を防がれる。


「ああん? ここがどこか分かって入ろうとしてるのかよ?」


 下から睨みつけるようにしてくる男の口臭が酒臭くて、少年は匂いを払うように手を振ると睨みつけてきた男の頬に当たり、吹っ飛ばしてしまう。


 男は地面の上を滑らされて土煙を上げる。そして、勢いが落ちて、一回転して倒れるが起き上がる気配はない。足がピクピクしてるからきっと生きているだろう。


 少年はそれを無関心に見つめた後、正面を見つめる。


「悪い、偶然、当たった」

「何が偶然だっ! どう見てもワザとだろうがっ!」


 酔って濁っていた目に生気を取り戻した男達は、一斉に武器を抜く。


 それを見ていた少年はゆっくりと肩に担いでいた青竜刀を男達に突き付ける。


 人数は10対1で圧倒的なのに怯む男達。


 先程のビンタを見ているから余計であろう。


 その青竜刀を見て、その男達の1人が眉を顰めながら呟く。


「長髪を後ろで縛り、カンフー服……でっかい得物を持つ大男……」


 その呟きを無視して違う男が少年を罵る。


「ここに乗り込んでくる馬鹿野郎のお前は何なんだっ!」

「俺か? 俺は可愛い子供達に囲まれたお父さんだぁ!!」


 呟いていた男が、ハッと俯かせてた顔を上げる。


 少年の言葉が引き金になり、飛びかかる仲間達に叫ぶ。


「引けっ! そいつは不味いっ!」


 この男達は流れ者、たまたま日銭の稼ぎのいい仕事とばかりに食い付いていた。


 だから、ダンガの事も触り程度しか知らない。


 色々、噂を聞いていても当の本人の顔などは知らなかったのである。


 これがダンガに住む、ならず者達ならば、少年を見た瞬間に逃げ出していただろう。


 叫んだ男の前には誰もいない。


 少年の得物で薙ぎ払われて路上にキスしてお休み中であった。


 剣を構えながら震える男は、声も震わせて言葉を発する。


「ちょ、チョンドラのユウイチぃ!!」

「チョンドラ言うな、ぼけぇ」


 手加減少なめの拳を男の頬に入れると木の壁と突き抜ける勢いで吹っ飛ばされる。


 それを眺めて首を鳴らす。


「さぁーて、「ミュウのパパママ助けて、ガゥガゥ、みんな幸せ大作戦」の第一フェーズスタートだ」


 雄一は完璧だぁ、と言いたげの顔をして酒場の扉に手をかける。


 この場にリホウが居れば、「もうちょっとだけ……頑張って考えませんか?」と言ってきたであろうが、悲しいかな、雄一1人であった。



 酒場に入ってきた雄一を見つめて、ギョッとする者と訝しく見つめる者が綺麗に2つに分かれる。


 雄一は、巴を突き付けて睥睨しながら伝える。


「俺が何しに来たか説明が欲しい奴は目の前に並べ」


 訝しく見た者は武器を構えて突っ込んでくるが、ギョッとした者は即身を翻して逃げ出す。


 それを見た雄一は慌てずに指を鳴らす。


「おいおい、せっかくきた客を置いていくなよ、ちょっと相手していけよ」


 雄一に武器を構える者達が見えてないかのように逃げる者達に話しかける。


 逃げる男達が扉に触れようとするが水の膜が邪魔をして触る事すらできない。


 逃げれない事を理解すると恐慌状態に陥ってがむしゃらに水の膜を攻撃するがビクともしない。


 飛びかかろうとしてた者もそれを見て、目の前の雄一がヤバい存在である事に気付き始める。


 雄一は、辺りを見渡すと溜息を吐くと巴を床に挿して立たせる。


「駄目だ、巴を使ったら確実に殺しそうだ……だが、拳なら死なないよな?」


 雄一は男達から離れた位置、どうやっても拳が届きそうにない距離で構える。


 カッ! と目を見開くと無数の拳の残像を生む連打を放つ。


 すると、届いているはずがないのに、壁に叩きつけられた男達が糸が切れた人形のように踊る。


 最後だ、とばかりに振りかぶった拳を叩きつけると男達は壁のアートになる。


 雄一は、近づいて1人の男の呼吸音を確認する。


「うし、ちゃんと息してる。俺、頑張った」


 明らかに一晩放置したら死んでる領域だが、そんな事お構いなしに雄一は奥へと続く扉を開く。



 奥の部屋に行くと聞こえてくる声を聞いて雄一は眉を寄せる。


「なんか、さっき表が騒がしくなかったか?」

「さぁ? どうせ、酔っ払いの喧嘩だろ」


 雄一が扉などを水の膜で覆ったせいで音が遮断されていたとはいえ、呑気なセリフが聞こえる。


 だが、雄一が眉を寄せた声はこれではない。


「いやぁぁぁ!! アタシは、娼婦になんかなりたくないぃ!!」

「心配するな。お前は貴族様のお人形さんになるんだ。何をされても黙って受け入れるように教育してやるぜぇ?」


 少女達の悲鳴と男達の狂った笑いが聞こえてきた為である。


 雄一は思う。


 ここにテツ達を本当に連れてこなくて良かったと。


「さぁ、大人の女になりましょうねぇ?」


 男が赤ちゃんに話しかけるように言うセリフに悲鳴を上げる少女の声と共に雄一は目の前の扉を蹴破る。


 一斉に男達の視線が雄一に集まる。


 雄一はそんな事知った事かと言わんばかりに中に入ると、さあ、イタそうとしていた男を巴の柄で目にもとまらない神速で薙ぎ払う。


 目の前の少女には突然、男が消えたように見えたであろう。


 目の前の少女がホーラと変わらないように見えて、歯を食い縛るが笑みを浮かべて近くにあった毛布をそっと被せてやる。


「すまん、他の子も連れてくるから、ここでおとなしくしててくれ」


 すまなそうな顔を雄一は少女に向けると男達に顔を向ける。


 男達は目を剥いて固まる。


 雄一の顔が鬼のようだった為である。


 もう既に殺気というレベルではなく、鬼気のレベルまで昇華されていた。


 別の少女の口に突っ込んでいる者に視線をやる。


「お前の臭い物を突っ込まれて、さぞ、苦しいんだろうな? お前も味わってみろ」


 雄一は、指を鳴らすとその男を覆うように水の膜が生まれる。


 勿論、呼吸ができずにもがいて脱出しようとするができずに、段々、動きが緩慢になるのを見て水を操作して店の外へと放り出す。


 少女達にスプラッターな絵を見せない為である。


 そんな状況でも虚ろな目で涙を流す少女に腰を振り続ける馬鹿がいた。


 雄一は、呆れた顔を見せながら男に近づき、蹴飛ばして離れさせる。


「よっぽど突っ込むのがお好きらしいな。たまには突っ込まれてみろ」


 再び、指を鳴らすと水で作られた棒状のモノが雄一の前に隙間なく生まれる。


 それを見た男は、未だに勃起したままで立ち上がると背を向けて逃げるのを黙って見送り、暗闇で姿が少女達に見えなくなるのを見計らう。


「いけっ、ウォータアロー」


 無数にあったモノは、ある点を狙うように集中して飛んでいく。


 そして、男の断末魔を確認して振り向いた雄一は悲しげに眉を寄せる。


 最後に助けた子の傍に行く。


「今から、お湯をかけるから、びっくりしないでくれな?」


 雄一は水魔法でお湯を作りだすと優しく少女にかけていく。


 洗い流すと水を操作して水切りをすると廻りを見渡しても少女の服が見当たらなかった。


「悪い、替わりの服が見つかるまで、俺の上着で凌いでくれ」


 上着を脱いで少女に羽織らせる。


 雄一がでかいせいか、少女が小さい為か分からないが、不格好ではあるが、人間ドックを受ける人みたいな格好に収まる。


 男に一物を口に入れられてた少女に雄一は水を出してやり、口を濯ぐように勧める。


 すると奥の部屋から騒がしい音をさせてガラスが割れる音と共に静かになる。おそらく、ここのボスが逃亡したのだろう。


 だが、雄一にとって、そんな小物より目の前の少女達を保護するほうが最優先になっていたのでリホウに任せる。


 雄一は廻りを見渡す。


「他にここに連れてこられてる子はいないか?」


 そう聞きながら誰も他にはいないと分かりつつ確認を取る。


 やはり、いないようで口を濯いでいた少女が首を振ってくる。


 頭を掻いて、どう切り出したら良いやらと悩む雄一であったが、思ってる事をそのまま言おうと踏ん切りをつける。


「色々、不安もあるとは思うが、一旦、俺の家にこないか? 俺の名前は……」

「ユウイチさんですよね?」


 最初に助けた子がそう言ってくるので頷くが「何で知ってる?」と聞き返すと必死に笑顔を作ろうと努力した笑みを見せて言ってくる。


「ホーラ、それ以外にも色んな事情の子を育ててる人ってストリートチルドレンのなかでは有名人ですから。勿論、ドラゴン退治でも有名ですけど」

「そうか、最初の質問に戻るな? どうだろう、一旦、家に来ないか? どうしても嫌だと言うなら、その希望を聞かせてくれたらできるだけ善処するが」


 雄一の服を着てる子は雄一を見つめてるだけで反応を示さず、残る2人は顔を見合わせると頷き合う。


「是非、連れて行って、と言いたいところなんですが、何が目的なんですか?」

「目的か、そうだな、お前さん達の身の振り方を考える時間とその後押しするのが目的って言えば、目的だな」

「貴方にメリットなんて何もない!」


 毛布を被った少女が真意を探るように言ってくる。


 雄一は毛布を被った少女に目線を合わせると苦笑する。


「そうだな、確かに何もないかもしれない。でも、俺はホーラに何かメリットを感じて引き取った訳じゃない」


 だから、お前達にも何かを期待して言ってる訳じゃない、と言外に伝える。


 少女達は雄一の真摯な瞳に見つめられる事に耐えれなくなったようで目を反らす。


「すいません。助けて貰ってるのに疑うような事を言って、でも……」

「ああ、分かってる。さっきまでの状況を考えれば、疑心暗鬼に陥って当然だ。俺は気にしてない。で、一旦、家に来る事でいいのか?」


 そう聞くと頷く2人の少女を見た後で、隣で相変わらず雄一を見つめる少女を見るが反応はない。


 その少女の目を見て思い出す。初めて会った時のアリアとよく似た目をしていると。


「みんな、立って歩けるか?」


 目の前の少女2人は頷いて立ち上がるが、隣の少女はピクリとも動かない。


「抱っこするけど、びっくりするなよ?」


 アリアと同じであれば、今のこの子は廻りから心を閉ざしていると判断した雄一は、そっと抱き抱える。


 想像通りだったのか、少女は何の反応も示さず、雄一を見つめ続けた。


「歩くのが辛いかもしれないが着いて来てくれ。歩くのが辛くなったら休憩取るなり、他の手を考えるから」


 雄一の言葉に頷く2人を連れて、雄一達が住む家へと歩き出した。


 目だけで3人を順々に見ていった後、星空を見つめて思う。


 今回の件をやる理由がまた1つ増えたと。


 例え、相手が宰相だろうが、神だろうが上等だと雄一は抱っこする子を壊れ物を扱うように優しく抱き締めて決意を新たにした。

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       雄一の孫の世代             こちら亜人ちゃん互助会~急募:男性ファミリー~  どちらも良かったら読んでみてね? 小説家になろう 勝手にランキング
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