絶望の襲来
レオン(主人公)のステータスがありますが、若干修正するかもです、参考程度にお願いします。
また新たなキャラ登場です!
ガキン!
俺の振り下ろした右腕が突然何か硬いものにでも弾かれたかのように不自然に跳ね上がる。渾身の力を込めた最高の一撃は突然現れた何者かの蹴り足によって跳ね返されたのだ。弾き返した本人は然も同然といった風に綺麗に伸びきった足を地に降ろす。
信じられないことにこいつは意図も簡単に俺の全力の攻撃を蹴り足のみで弾き返したのだ。
「呼ばれてきたはずなんだが・・・お前が?ローゼンか?これはどうなってる?」
突然現れた第三者の言葉にその場が凍りつく。一番驚いているのは勿論俺だったが…そんな中ただ一人ローゼンだけがどこか安堵の顔色を浮かべている。
まさか奴の仲間か!?
盗み見た奴の安堵の表情に疑惑は確信になる。ここに到着してからも奴が一人だったために見落とした思わぬ伏兵に皆の表情にも絶望の色が浮かんでいく。
入口から現れたのは一見すると全くこの場の空気が読めないでいる細身の青年だった。外見は艶のある肩口まで伸ばした黒い長髪で顔には不敵な笑み睨むように鋭くギラついた三白眼が印象的な青年だった。
服装は冒険者風で一式整えられていて背負っている黒い立派な長剣以外は普通に見ればただの駆け出し冒険者にしか見えないが異様なのはその装備が頭の頂辺から足の先まで全身黒尽くめで明らかに普通の冒険者像からはかけ離れた装いの服装ということだった。そしてなんといってもそんな黒一色の中でひときわ目立つ物が一つだけあった。それは首元に下げられたプレートが金色に眩く光る様だった。
どう見ても駆け出しの冒険者が下げてそうな物ではない。というかあれは冒険者の階級とか強さを表す物なんだと推測できる。そして金色のプレートの時点で彼がその辺にいる雑魚ではないことが手に取るように分かる。
男はただこちらをじっと見つめている。この部屋に入ってからずっと・・それはまるで値踏みするように上から下まで満遍なく見定められている。
「やっと来てくれたか、だが助かった、お前がゼノスだな?」
ゼノスと呼ばれた青年はチラリとローゼンの方を見て面倒くさそうに視線を俺に戻す。お世辞にも仲がいいようには見受けられなかった。もしかしたらただの知り合い程度なのかもしれない。どちらにせよ俺たちに味方してくれるとは思えないが…
「別に俺はお前の為に来たんじゃない。単に気になって来ただけだそれがお前が言う珍しい魔物か?」
ゼノスは獲物を定めたように視線を俺に集中させて睨みつける。その瞳には軽い殺気も込められてる気がしてゾッとした。
「ああそうだこいつが俺の大事な金の卵だ!ただの魔物じゃないぞ?莫大な価値があるんだ!しかもコイツは普通のよりも遥かに強い!」
まるで自分の物を自慢気に語るかの様に熱を込めたローゼンの語りを彼は全く気にも留めていなかったがある言葉に少しだけ反応を見せた。
「ほう…遥かに強い魔物ね____それは興味深いな」
ゼノスの不敵な笑みがより深くなり口角が釣り上がる。いつの間にか殺気は鳴りを潜めていた。
「そんなことよりも今逃げられてて困ってんだ、分け前を弾むから助けてくれないか?」
ローゼンが助けを求めるように縋るような声を絞りだす。俺から見ると見苦しいおっさんの願い事だが彼の腕からは未だ止まらない血が滴り落ちており、どう見てもこちらが悪に見える状況だ。
拙いな…
ここで彼に加勢されると最早勝機は無いに等しい。どう考えても彼はこの場にいる誰よりも強く今の俺では手も足もでないだろう。それでも俺は何か手立ては無いかと辺りを探る。
「俺は生憎金には興味はない。寧ろちょっとこいつに興味が湧いた。確かめるからそこで黙って見てろ」
ローゼンの要求を軽く突っぱねる形でゼノスは一方的に話を終わらせようとした。既に彼には興味がないのだろうその視線は俺に注がれており彼には見向きもしていない。(まあ最初からそうだったが…)
「なっ!話が違うじゃな___」
ローゼンが言い切る前にゼノスの体が一瞬その場から消えるように皆の視界から外れる。
横っ跳びに文字通り跳ねた彼の動きは非常に無駄がなく洗練されていたというべきか、足捌きから腕を振るう様迄が美しい一連の流れになっており素人の俺から見ても綺麗だった。
「ぎゃああ!!」
あまりに綺麗な動きに俺たちの思考は一瞬停止していた。人は本当に驚愕した時には何も考えられず思考を放棄してしまうのだとこの時俺は初めて知った。俺には彼が何をしたのか全くわからなかったのだ。
まるで剣舞を舞うかのような自然な動きで彼は剣を振るう。
「動くなって言ったろ?静かにしてろ」
どこから取り出されたのか短剣が空を裂きローゼンの腿の辺りに突き刺さる。じわりと赤い血は広がり苦痛のうめき声がローゼンはから挙がると更にもう片方の腿に短剣が突き刺さり彼は必死に口元を抑えて苦痛に耐えながら転げまわる。
有り得ない…といか信じられないな。
こいつら仲間じゃないのか?
どんな関係かもわからないし、役職とかが階級が上なのかとかは知らないけど頭のネジが飛んでいるのは今の行動で理解できた。そしてあんな行動を見なくても奴の瞳が俺を捉えた瞬間からゾッとする寒気が止まらないことから俺を狙っているのも理解できた。
最悪だ…
「ほう…この魔物は力量差がわかるみたいだな、まあ魔物ならそいった能力に長けてても不思議じゃないよな、だが俺が気になってるのはそんなモノじゃなくてお前のその瞳なんだよ」
なんなんだコイツ?何が言いたいのか良くわからない…
それにさっきから観察眼で探ってるのに___
【レベル差によって情報が制限されます】
頭に今までにないパターンの文字が浮かび上がる。
レベル差だと…そんなのあるのかよ!?
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名前:ゼノス
種族:人間
レベル:53
職業:冒険者
技能:????
スキル:????
称号:??????
========================
何とか少しだけ情報として読み取れた。
しかし…
おいおいレベル50越えとか有り得ないだろ。
いきなり強いやつすぎるこの差は何をしても到底ひっくり返すのは不可能だ。
「その目だ、普通の魔物には見えないな、もしかして突然変異種か? 試してみるか」
やばい何か来る!
咄嗟に何が来ても動けるように身構えると…
突然やつから発せられた殺意の波が迫り来る。今までのただ睨みつける時に感じる軽い殺意とは訳が違う本気の殺意…それは最早肌で感じるといったレベルではなく切り刻まれる様な感覚、死を体感するかのような危機感が俺の全身を襲い…
「グルガァッ!!!」
俺は最大声量で兎に角咆哮を上げていた。
突然の俺の咆哮に後ろに隠れていた二人は怯える用に体を膠着させる。しかしそのお陰で彼らには今の殺意による被害は無かったようだ。俺は未だ止まらない冷や汗と恐怖心からこの場を去りたいという気持ちが増幅されていきそれは身体に影響を及ぼすかのように嘔吐感となって体の内側で暴れまわっていた。
「っは!こいつはすげぇーな」
ゼノスは不敵な笑みから満面の笑みを浮かべていた。その笑顔はまるで探し求めていた獲物を見つけた狩人のようだった。
「まさか俺の威圧を咆哮ことで耐えるとはね___これは上玉だな」
反射的に叫んでいた。俺の意思というよりも体が勝手に動いたといった感覚だ。正に生存本能が成せる技反射みたいなものだろう。
考える前に体が危険を察知して最適な行動をしてくれただけという野生の本能に俺は内心で感謝する。
「おいローゼン!」
ゼノスに突然呼ばれたローゼンは未だに自分の足を抱えるようにして苦痛に耐えている真っ最中だった。それでも返事をしないと拙いとでも思ったのか声の方を見る。
「こいつは俺がもらうぞ」
ローゼンが何かを言う前に彼は俺の方を指差してそう告げる。まるで欲しい商品を見つけた子供のような物言いだが、この世界では最もシンプルな理である弱肉強食という縛りの中では別段おかしな話ではないのだろう。
「っな!ふ、ふざけんな!!お前にこの猫の価値がわかってたまるかあ!!」
しかし先程の態度からは想像もできないほどの怒りに満ちた顔でローゼンがブチギレる。さっきまでの痛がる様子が嘘のようにズカズカとゼノスに迫りながら怒鳴り散らす。だがその剣幕を前に当の本人はそんなのお構いなしで俺を眺めている。まるで彼にはローゼンが見えないかの様な振る舞いだった。
「よし、お前行っていいぞ」
「???」
彼が何を言っているのか言葉の真意がわからなかった。
当然だろう、この状況でその言葉が俺に投げかけられる訳がわからない。しかし彼は確かに俺を見てそう言ったのだ。
ん?本当にどういう意味だ?なんかの罠か?
そんなことを考えるがそんなことを彼がする意味が無い。実質彼には何をしても敵わないのだから…
「はぁ!? てっめえさっきから何言ってるんだそいつは俺のモノなんだよおおぉぉぉ!!」
ローゼンは怒り狂うかのように怒声を上げながら素早く腰の剣を抜き放ちゼノスの背後から斬りかかる。怒りで一時的に痛みを忘れたのかローゼンの剣は先程までの俺との戦闘と比べても遥かに速かった。背後からということもあり全く見えない死角からの攻撃にゼノスですら対処はできないのではないかと思ったが…
背後から迫る上段斬りをゼノスは体をくるりと反転させ横から擦りぬけるように避けると、逆にローゼンの背後に回り込みそのまま懐から取り出した短剣で喉笛を一閃して切裂く。
まるで初めから動きを決められた演舞のように一連の流れは無駄なく見事だった。
そこにいたローゼン以外の者はその姿に引き込まれてしまい、微動だにせずにその光景をただただ眺めていた。
紅い噴水が弧を描く用に空を切裂く様は俺には初めて見る光景で、何が起きているのか理解するのに暫く時間がかかってしまった。ローゼンは糸が切れた人形のように地面に倒れ伏し動かなくなった。
【1600経験値習得しました】
【レベルが14に上がりました】
【擬人化のレベルが3に上がりました】
【嗅覚強化のレベルが4に上がりました】
【視覚強化のレベルが4に上がりました】
【聴覚強化のレベルが3に上がりました】
【切り裂き攻撃のレベルが4に上がりました】
【穴掘りのレベルが3に上がりました】
【才能開花のレベルが3に上がりました】
【観察眼のレベルが3に上がりました】
【従えるモノのレベルが4に上がりました】
【称号 逆境を制する者を習得】
頭の中にいつもの文字が浮かび上がり、同時にその場の雰囲気にはそぐわないファンファーレの様な陽気な音が鳴り響く。どうやら今の戦闘によって俺のレベルは一気に上がったようだ。スキルのレベルと称号を習得できてかなり戦力アップしたのだがそれだけでは終わらない。
ファンファーレが鳴り止むと同時自分の身体に変化が現れる。体がひとまわり、いやふたまわりは大きくなっている。これがレベルによる成長なのだろうか?
見た目的にも猫から若干獅子に近い存在にグレードアップしている。
後ろにいた二人の驚愕の表情が目に入り少しだけショックだった。
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名前:レオン
種族:獣人属 猫人
レベル:14
HP(体力)200/320
MP(魔力)100/150
攻撃 90
防御 55
魔攻 50
魔防 37
素早さ 120
賢さ 70
運 80
スキル
擬人化Lv3
嗅覚強化Lv4
視覚強化Lv4
聴覚強化Lv3
切り裂き攻撃Lv4
穴掘りLv3
ユニークスキル
才能開花Lv3
従えるモノLv3
観察眼Lv4
称号
穴掘り中堅者
見栄っ張り
逆境を制する者
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そんな中もう一人の当事者であるはずのゼノスは血のついた短剣をなれた仕草で振るい綺麗に落とす。
「お?レベル上がったな? おぉー結構成長してるな、いいねいいね」
などと軽い声を上げて俺を見つめながら舌なめずりしている。短剣を懐に仕舞うと俺のふたまわりでかくなった体を見渡す。
コイツ何考えてるのか全くわからないが危険だ。
なんとかしてこの場を離れなければ皆も助からない。そんな気がする。
頭の中であらゆる方法に考えを巡らせてみたが決定的な有効策は思いつかなかった。
「おい、お前会話できるんだろ? なんか魔物に話しかけるのはすごい違和感だな…」
先ほどの殺気を放った人物と同一人物とは信じられないくらいにフレンドリーに話をかけてくる。
その不自然さがかえって不気味だった。ん…いや待てよ?そんなことより俺が会話できることを知ってるのか?
俺は完全に奴の掌の上で転がされる様な気味の悪い感覚を味わっていた。不気味な奴の瞳がそれに拍車をかけるように嫌悪感を増す。
「まあいい、さっきも言ったが逃げていいぞ。見ての通り飼い主はたった今死んだ。後ろの奴隷も自由の身だよかったな」
まるで人ごとのように適当な言葉を連ねる彼に一瞬時が止まったかのように凍りついた。何故そんなことを言うのかもわからないし全くその真意が読めなかったがつまり俺たちは…
「助かったの?」
後ろで怯えていたエクレアが掠れた声を上げる。
もしかしたら彼はこの世界で初めてのいい人だったのかもしれない。
勝手に見た目で悪役そうだなーとか絶対快楽殺人者だとか物騒な妄想をしていた自分が恥ずかしい。ほんと世の中見た目で考えちゃダメだ…いや彼の場合は行動も十分それだったのだが、それでも悪人が許さないだけなのかもしれないし。多少殺り過ぎな部分も…結構あった気がするが俺たちを救うためだったのかもしれない。
「別に助けたわけじゃないぞ?」
彼のその一言でまた希望の光が消えたように絶望感に襲われる。俺は緩みかけた気を引き締めなおす。
「うーんまあ場合によっちゃ助かったでいいのか?俺が興味があるのは猫お前だ」
「俺?売るのか?」
彼は初めて喋る俺の姿を見て驚いた顔をする。(いやさっき会話しろって言ったじゃん)
目をパチクリさせながら「たまげたな」なんて呟いている。
それにしてもリアクションは想像よりも弱かった。もっと驚いた顔が見たかったが…仕方ない。
「いや金に興味はない、お前は強くなりそうだ、会話ができるほどの魔物それだけでも強そうだが見たところまだ未成熟だろ?殺るならもう少し育ってから美味しく頂こうと思ってな」
前言撤回こいつはただの戦闘狂だ。
こんなやつからは即離れた方がいいだろう。
「そんな訳だ今のお前には興味はない 行っていいぞ」
これは絶対的な強者の余裕というやつなのだろうそれだけでもこいつが相当な強さを持っていることがわかる。俺は後ろの二人に振り返り頷く。そしてほんの少しの間だけ今はもう動くことのない二人を見つめる。
変わり果てた彼らの姿に痛む心を振り切ってエクレアとアービィンに目を向ける。彼らは何とか助かった安堵感と先程の辛い光景が脳裏を掠めたのか俯きながらも直ぐに頭を振り俺に頷き返す。
「本当に変わった魔物だなお前…先に言っておくがお前の居場所は俺のスキルによってわかるようになっている精々今よりも強くなって俺を楽しませてくれよ」
そんな恐ろしい話を暴露して彼は不敵な笑みを刻んだ。
な…なんつー嫌なスキルだ。まるでストーカーの様なスキルだ。俺は相当面倒な奴に目をつけられたようだ。
最悪だ…異世界で初めて助けてくれた人は戦闘狂の変態野郎とか…
「最後にいいことを教えてやろう、このままこんなところで野垂れ死には俺も困るからな、お前等この街から出るなら北門から出れれば魔樹の森にいける、まあそこで生き残れるかは知らんがな。」
丁寧なことにゼノスは北門への行き方も教えてくれた。本当にこの男は戦闘狂なのだろうか?
実は良い人なんじゃと思えてしまった。というかそうだと願いたい実際は恥ずかしくてこんな変な言葉で飾っているツン…いやヤンデレか?
嫌…バトデレか…
この隠れ家までは荷台の中だった。その為どの道を通ったかまではわからなかった。直ぐに俺は門を目指すべく行動に移る、というのもこの惨状を見つかればどう考えても犯人は俺たちだ。
奴隷商人の死体そしてその奴隷たちの二人は死んでおり魔物であるこの俺この状況を見て俺が犯人じゃないと推理できる人物がいたらそいつは名探偵コ●ン君くらいだろう。
まあ詳しく調べてくれるなら剣でできた傷とかから俺でないのがわかるだろうが、そんな面倒なことをこの世界の警察?みたいな組織がしてくれるとは思わない方がいいだろう。なにより魔物に人権なんてある訳がない。
それに奴隷の首輪を付けた者が一人で歩いていればどう考えてもこの国の現状捕まるのは目に見えている。なら必然的にこの町には居場所は無く行ける場所としては最初の森だけとなるわけだ。
俺を頭を低く姿勢取り二人に声を掛ける。
「二人共急ぐぞ、全速力でこの街から抜け出す」
その様子に直ぐに真意を悟る二人は俺に跨うように背に飛び乗ると振り落とされないようにしがみつく。
でっかくなったおかげて二人を乗せても特に重みを感じない。子供ってこともあるかもだが筋力がついたのだろうか。首元に仄かな柔らかいものの感触を感じてエクレアが前、後ろにアービィンが乗ったのを確認すると俺は外に出る。
「ゼノスといったな、感謝する」
俺は頭だけで軽く低頭する。その姿を見て表情を一瞬だけ崩しゼノスは恥ずかしそうにソッポを向く。一瞬のことで気のせいだったかもしれないが微かに照れていた気がする。まさか…デれたのか??
なんてどうでもいいことを考えていると彼がこちらを見ずに声を発する。
「だから感謝はいらない、俺はお前を殺す為に生かしてるんだからな」
何だこいつやはり単なるツンデレか?
殺されるのは勘弁願いたいが、今回は助かったのだそれでも感謝すべきだろう。そう思いながら俺は振り返る事なくその場を後にした。
5.31修正若干増量して細かい所を詳しくしてます。
ツンデレバトルジャンキー(男の子)の参戦です!ドャ( ゜д゜)
ストーカー気質持ちってツンデレというよりもヤンデレなのかな?( ゜д゜)ガクブル
会ったことないからわかんないですw