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魔者転生~三つ巴の戦い~  作者: タカマツ
1章 始まり
1/30

目が覚めたら

「はぁー」


 暗がりの中盛大な深い溜息が漏れる、今にも幸せが零れ落ちてしまうのではないかと言われそうな盛大な溜息を吐いているのは何を隠そう俺自身だ。時々誰もが思うことなのではないだろうか?普段は思わないまでも偶に起こる不幸、そして極たまにそれは重なることがある。


 例えばそれは朝目が覚めると遅刻ギリギリで急いで家を飛び出すと外は大雨、駅につけば財布を忘れてることに気づいてトボトボと帰宅、帰る途中で暴風で傘はダメになり全身びしょ濡れ、なんとか遅れながらも学校に着いたはいいが先生の都合でまさかの休講___なんて不運な出来事が重なることが俺の人生ではよくあった。まるで人生ハードモードのゲームをやらされているような感覚、俺は神様に不幸の星に生まれたと言われているかのように不幸に愛されている。


 別にただ自分の不幸自慢がしたいわけではない今回もそんないつものような不幸に苛まれてしまった結果が___この有様である。


「ニャンということだーーーー!!!」

 目が覚めると俺は___猫になっていた。


 先にこれだけは言っておこう。決して俺の頭が変になったとか俺の妄想の中の出来事だという訳ではない。もちろん気分がハイになる白い粉にも手を出してはいないし、精神的に病んでいたりもしない。とりあえず一通り叫ぶと少しは冷静なれた。先ずは落ち着いて過去の記憶を辿ることにする。




=====================



 その日もいつもどおり俺は、いつもの面子メンバーで車でドライブに出かけていた。


「あーー運転疲れてきたな、蒼紫ソウシ助手席にいるのも飽きたろ?そろそろ運転変わらないか?チラッチラッ」


 わざとらしく大声でそう呟いて助手席の俺をチラチラと見てくる運転手の男「おい前見ろ前!!」俺がそう叫ぶと仕方なさそうに視線を戻し、運転に集中しながらも諦めずに口で訴えかけてくる。運転席に座っている男は門津カドツ俺の中学の頃からの親友の一人だ。見た目は日に焼けてるせいで黒く、性格は男気溢れ、俺たちの中でも頼れるお兄さん的な存在だった。その見た目に反さない暑苦しい筋トレマニアということもありその肉体美は中々のものだ。週一でジムに通っているらしい。


「もーー門津君さっきからずっとそればっかだよねー(笑)じゃあそろそろ休憩入れる?お兄ちゃん達」


 門津の後ろの席に座っているこの可愛い系女子はこのグループの紅一点の美少女美弥ミヤだ。流れるような艶やかな黒髪を肩まで伸ばし、おっとりした瞳には少女の性格がわかりやすく宿っている。そして彼女の隣に座る男が俺のもう一人の親友 忠幸タダユキだ。見た目は美弥に似て整っているし、中学の時から俺たちと違って女子からも男子からも尊敬されるような人気者だ。


 美弥は忠幸の双子の妹で、中学時代からの俺らのマドンナ的存在だった。本人は男友達だと思っているが俺たちはちゃんとした女性だと認識している。

「確かに門津はずっと運転してるからそろそろ休憩挟んでもいい頃合ではあるな」と美弥の隣に座る忠幸がシスコンっぷりを発揮して即答する。こいつは基本的に美弥の意見に反対することはない。妹に激甘なんだよな。



 このシスコンめ。この二人は本当に仲良しでいつもセットでいる。離れているところをほとんど見ないくらいに。昔(中学生の頃)告白しようとした俺と門津に忠幸が『告白するなら俺を倒してからにしろ!』とガチ切れされてからは一度も告白していない、これは三人だけの秘密となっている。何故忠幸の言葉通りに告白しないのかは、何もこの約束だけが原因ではない___実際美弥を奪うには忠幸を倒すしかないと考えているからだ。それほどに美弥も兄である忠幸にベタベタなのだ。


ブラコンめ。


 そして最大の問題は忠幸に非の打ち所がなく成績優秀、運動神経抜群、人望人柄共に素晴らしく最強人間ということが最悪の壁となって二人を阻んでいるのだ。かみは奴に二物どころか四物くらい与えているんだよな。リアル天才野郎できすぎくんなんだよな。弱点をしいてあげるなら極度の妹溺愛主義シスターコンプレックスくらいだろうか?



 まあそんな話はどうでもよく。この三人に俺、蒼紫ソウシを入れた四人がいつもいる面子メンバーであり、今宵もその四人で毎月の恒例行事である休日を満喫するためにドライブに出かけているのだ。だいたいいつも、気分屋でアウトドア大好きマッチョの門津が思いつきで皆を誘い企画してくれる。


「そうだ・・・北海道に行こう!」

三人「「「そこは京都だろ!?」」」

といったような感じで決定するのだが、今回もそんなのりで大阪を目指してドライブ中であった。


「つまりは高速ではだいたい2時間毎に休憩を挟むのがちょうどいいんだよ・・門津はもうずっと運転してるからそろそろ休憩入れるのは安全面も考えたら当然だよ」さっきの話の続きをしていたら、忠幸がいつもの無駄知識うんちくを語っていた。こいつは無駄に知識が豊富だからどうでもいいことでも結構知ってるんだよな。そのせいで俺たちも多少ながらうんちくを知っているし、とりあえずわからないことは忠幸に聞くのが一番早い。


 そして忠幸が言いたいのはつまりは妹の意見に賛同だと言いたいのだろう。どこまでシスコン野郎なんだこいつは。


「やっぱり?忠幸もそう思う?」

 忠幸の救い船に素直に乗っかる門津、相当疲れているんだろう、まあ俺もそろそろ小腹が空いてきたしそうだなと軽く賛同することで近くのサービスエリアに向かうことで話は決まった。丁度見えてきたサービスエリアの看板にホッと一息入れて門津は車線を変更しようとハンドルを切る___



パン!



 突如奇妙な何かがはじけるような音が響き渡ると同時に車体は大きく揺れながら傾き、道路に片輪が擦れるような金属音が響き渡る。一瞬の事で俺には何が起こったのか判断ができない、更に揺れは激しくなり車体は大きく激しい音を発しながら何度も高速スピンする。前方に吹っ飛びそうになる俺の体をシートベルトが作動してフロントガラスに突っ込む直前で止めようとするが、遂に車は傾きに耐え切れずに回転するようにゴロゴロと転がり車内は更に混沌と化す。


「ちょおっ!!!」

「うわああああああああああ」

「きゃーーーーーーー!!」

「ぬああああああああああ」

 一瞬の出来事の筈が俺にはゆっくりと時間が流れていくように感じられて、暫くそんな状況が続いたと思う。皆の叫び声は収まらず、まるで天地がひっくり返った様に体は上下左右に吹き飛ばされる。そしてそれは唐突に終を告げる。一瞬目に浮かんだのはフロントガラスから見えた高速道路の壁面、そして次の瞬間俺は生涯味わうことのないほどの衝撃を一身に受けた。


ドォォーーーーーーン!!


 それは多分全て一瞬の出来事だったんだろう、ただ俺にはとても長く感じた。死の直前に見ると言われる走馬灯のような異様な瞬間を体験したのかもしれない。状況もわからぬまま俺の視界は真っ暗に変わり俺の意識は完全に途絶えてしまった。



 気づいたときには自分は真っ暗な視界の中に居た。冷静になって考えると多分タイヤがパンクしたのか、何かを踏んだのか?痛みも今のところ無い俺は死んでしまったのだろうか?あの事故で無傷ということは有り得ないのだからある程度予想はつくが、ここはどこだろう?死後の世界というやつなのだろうか?なんてことを考えていると真っ暗な視界にポツリとりと白い点が浮かび上がり始めた。


「ん、なんだ??」



 その点は次第に大きく広がるように大きくなりやがて全てを呑み込むように輝きだした。死後の世界なんて妄言だと考えていたが、もしやこれが天国なのか?なんて少し想像してしまっていたが、次の瞬間俺の重い瞼が開いた。突然晴れた視界に戸惑いながらも俺の思考は止まらない。


 え?俺生きてるのか?事故って死んだと思ってたけど・・・もしや奇跡的に助かった?そう思えたのは俺が呼吸をして、自身の体がそこに存在していると思えたからだ。しかし、視界に入る光景がおかしいことでそれは否定された。



 視界に映るのは暗くて見え難いが完全に森の中だった。そして空には万天の星空が広がり、時刻が完全い夜だと告げていた。あの事故から奇跡の生還を果たしたのならこんな森の中にいるのは有り得ないし、少なくとも病院生活でない時点で俺は死んでるんだろう。ああ、ここが天国か、なんとも自然溢れる風景だろう。そこは俺が住んでる片田舎の森の風景に似ているせいもありとても安心できるとは言えなかった。


 幾ら田舎でも外灯一つなく真っ暗で、しかも知らない場所の森ど真ん中に一人で遭難?なんて安心できる要素が一つもない。しかしここが天国だとしても、外か~俺はどちらかというとインドア派なので漫画とかゲームができるような施設があると本当に天国なのだが____そうネットカフェみたいな場所が理想だな。なんて現実逃避を俺は暫く頭の中で楽しんだ。



 うん、ここは天国ではなさそうだ。さっきから感じるいつもと変わらない体の音色、脈打つ鼓動から俺は自分が生きてるのだと確信できた。天国でも心臓が動くとかだったら、まだ天国の可能性もありえるんだけどね。



「ほいっと」


 俺は寝そべっていた体を起こす。問題なく体も起きるし、むしろ事故る前より体はすこぶる快適に動く気がした、まるで羽が生えたように軽く、視界も真っ暗な森にしてはやけに遠くまで見通せる気がする。ん?そこに何か違和感を覚える。



 まさかね__俺はその目に映る様を一旦否定した。別のことを考えよう。俺が生きてるということは他の奴らも生きてるのでは?そう思い辺りを見渡す。ここは森の中のようで俺以外に人は見当たらない。


 まあ俺なんかより生命力のある男二人は大丈夫だろう、心配ではあるが信頼もしている。一番心配なのはやはり女性でか弱い美弥だ。俺らの中で一番森で迷子になりそうな彼女だけは心配だった。


「生きているといいんだけど」


 冷静に考えればあの事故だ、死んでる可能性の方が高いが不幸体質の俺が生きてるくらいだしな、たぶん大丈夫だろう。さーーて色々と考えたけど。やはり夢とかではないらしい。色々と現実逃避もしたがある問題は変わらない。



「はぁ~」


 最初に感じた違和感___それは何かお尻の辺りに感じる異物からだった。その原因を確かめるべくお尻の辺りを触ってみる。なんとなく想像は出来ていた。やはりな。

 想像通りそこにはモフモフしたものが生えていた、尻尾だ。



「俺猫になってるうううううううう!!!!」


 なんなんだよこれは!?体中が毛むくじゃら!?猫は可愛いとは思うけどそれは飽く迄ペットとしてであって、自分がなりたいとは___そう思って思い出す。


 そりゃ一度はご飯だけ食べて寝るだけの生活に憧れたことはあるすこーーーーしだけね。でも思っただけでまさか第二の人生が猫になるなんて思うわけがない。



「ニャンということだーーーーーー!!!」

こうして俺は人類初であろう、猫人間になったのであった。


修正1/22

言葉おかしいところとか事故の細部を詳しくしました。

筋書きはいじってません。

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