第六話 011
夏「えいやああ!!」
――始めの合図とともに右中段蹴り(引き足あり)を決める。
お花見のみんな「やった!!」
――副審4人が赤い旗を真横90度にサッと上げる。
主審「止め!! 赤、中段蹴り、技有り!!」
――デジタルスコアボードの夏の点数が2になる。
盛り上がる観客たち。
加奈「夏先輩やりましたね!? いきなり2ポイントですよ!?」
音葉「うん!! 出だしから思いっきり行くって決めてたのかも」
春香「あの計画性の無いなっちゃんが……」
北川「いい判断だ。浅井は洞察力が鋭い、だからあいつが考える前に畳み込めば、そこまで怖い相手ではないはずだ」
記者A「負けたらもう後が無い大将戦で、いきなり飛び込みましたね?」
編集長「しかもあの浅井が反応できなかった」
「(手帳の夏のスケッチを見て)立花……夏か」
――開始位置で輪受けをしている夏と浅井。
浅井М「前よりもスピードが上がっている……。ちょーっと油断しちゃったー」
主審「続けて、始め!!」
浅井М「でも今度は――」
と、左構えでステップを踏んだ瞬間に、夏がふところへ入ってくる。
浅井М「ちょっ!?」
夏「えいあああ!!」
と、高速上段突きを決めて。
野宮「よっしゃああ!!」
――盛り上がる観客たち。
主審「止め!! 赤、上段突き、有効!!」
――スコアボードの夏の点数が3になる。
編集長「まただ……あの浅井を勢いで圧倒している。次に何を出してくるのか、見ているこちらにも全く予想ができない」
記者A「……編集長」
編集長「何だ?」
記者A「俺、撮りたいものが決まりました……」
編集長「俺もいま同じ気持ちだ」
大木「よっし、浅井から3点のリード!!」
真中「いけますよこの試合!!」
南妹「がんばれ立花先輩!!」
――開始位置で輪受けをしている夏と浅井。
夏М「いける!! 前に戦った時に気付いたけど、浅井はこっちが考えれば考えるほどその裏を狙ってくる」
主審「続けて、始め!!」
夏М「このまま押し切れば――」
と、左の刻み突きで突っ込んで。
浅井М「調子に……」
夏の刻み突きを左手で押さえる浅井。
浅井М「のるなああああ!!」
と、顔面に逆突き(引き手あり)。
浅井の拳がメンホーに当たり、一瞬よろける夏。
[驚いたみんなの表情]
北川「(副審を見て)今のは!?」
――胸の前で青の旗を前に×にしている副審たち。
主審「やめ!! 青、忠告!!」
――浅井のC1(ウォーニングのカテゴリー1)が1になる。
編集長「さすが浅井。ウォーニングになったものの、もう立花のスピードに慣れたか」
記者A「(写真を撮りながら)これで立花の動きが止まらなければいいんですが……」
編集長「(うなずいて)浅井の強さは鋭い洞察力に加えて、相手のペースを乱すズル賢さにある」
「ここからどう動く立花……」




