第六話 006
知恵「あ、いたいたー」
と、顔を出す知恵と湖太郎。
音葉「知恵さん!?」
加奈「湖太郎さんも」
知恵「みんなのお弁当を頼まれたから車で届けに来たの」
恵介「(教頭先生を見て)え?」
――端の席でプルプルと親指を立てる教頭先生。
恵介「(知恵を見て)わざわざありがとうございます!!」
知恵「(笑顔で)いえいえー、応援もかねて来ましたから」
湖太郎「あれ? 夏ちゃんは?」
春香「練習しに行ったよー?」
湖太郎「んもー、せっかく夏ちゃんとラブラブ挨拶のハイタッチを交わそうと張り切ってたのにー」
恵介「夏の知り合いか? ずいぶんと馴れ馴れしいやつだな?」
と、腕組み。
湖太郎「(詰め寄って)んなーっ!? お前こそ夏ちゃんのことを呼び捨てにして――」
春香「(笑顔で)なっちゃんのお兄さんだよー?」
湖太郎「(スリスリ)お兄様でしたかー!! もしよろしければ、お靴をお磨き致しますよー!?」
恵介「(ガードして)おい離れろ!? そんな趣味はないから!!」
西川コーチ「――失礼します」
恵介「(振り向いて)今度は何だよ!?」
西川コーチ「一回戦で当たる、日川西高等学校空手道部のコーチをしています。西川です」
と、挨拶に来る西川コーチ(男・50代)。
恵介「あ、初めまして。お花見女子高等学校のコーチをしています、立花 恵介です」
西川コーチ「立花さんってもしかして、あの全日本を二連覇した!?」
恵介「(照れて)あはは、昔のことですよ」
西川コーチ「(笑顔で)まあでも、空手が上手い人と、空手の教え方が上手い人とでは、また分野が違いますからね?」
恵介「そ、そうですね」
「そちらはかなり厳しい指導方法をとられているようで……」
西川コーチ「あっはっはっはっは」
「そういう立花さんのところは随分とにぎやかでしたね?」
恵介「ははは……」
西川コーチ「今の若い子たちは撃たれ弱い。まあ少子化で大切に育てられたのは分かりますよ?」
「でもそのためか、根性の無い甘ったれた子が多くなった。だからうちは徹底的に厳しくしているんですよ」
恵介「そ、そうなんですか……」
西川コーチ「一回戦、和気あいあいなお花見女子の実力、私たちに見せてくださいね?」
「あっはっはっはっは」
と、日川西の観客席に戻っていく。
恵介「(作り笑顔で)ははは……」
× × ×




